セシリーの話 前編
紅茶を飲みながらアンディと談笑していると、少し急いだような足音が近づいてきた。
「プレイシャス侯爵令嬢、お待たせしてしまい申し訳ございません。」
恐縮し、お辞儀をしたまま顔を上げないセシリーに
「顔を上げてくださいな。私たちは友人と昼食をいただいてそのままお茶をしていただけだから、大して待っていないのよ。気にしないで。それよりもわたくしの事はこれからティナと呼んで欲しいわ。わたくしもセシリーと呼ばせていただきたいの。よろしいかしら?」
頬に人差し指をつけて少し首をかしげながら提案してみた。
「よろしいのですか?・・・えっと、ティナ・・・様」
頬を染めながらティナーヴの名前を呼んだセシリーはとても可愛らしかった。
「様はつけなくて大丈夫よ。これからよろしくね。セシリー」
打ち解けることが出来たようでティナーヴはこのまま気楽にお茶を楽しみたい気分になったが、アンディの咳払いで我に返り、
「ご相談があるのでしたね。ほぼ初対面ですのに何故わたくしなのですか?」
「ティナ様でなければ殿下を救うことが出来ないのです。」
そう言うと、セシリーの顔が曇りだした。今にも泣きそう打。
「スチュアート殿下・・・ですか?あの方がどうかなさったのですか?」
このところ特に接することもなかったので、何のことかさっぱりわからない。ティナーヴが首をかしげていると
「長期休暇前に殿下とお話しをなさってから殿下の心が深く落ち込んでしまっているのです。他の方は気づいておられないようですが、殿下は子供の頃から時々心を暗くされることがあって・・・」
ティナーヴは目を見開いた。常に太陽のように輝いているスチュアートからは想像もつかない。
同時にアンディは舌打ちした。セシリー自体は悪い人間ではないがやはり、スチュアートの周りにいる人間とはかかわらせるべきではなっかたと後悔した。しかもスチュアートの暗い部分を知っているとは、ディオルに報告せねばと考えていると、ティナーヴが申し訳なさそうに
「わたくしは全く気づきませんでした。お恥ずかしい限りです。」
「いえ、私が気づきやすい人間だからだと思います。常に周りの目を気にしている性格で少しの変化にもすぐ気づいてしまいます。ですので、朝声をかけた時のティナ様はかなり不審そうだったにも関わらず優しく対応いただけてとても嬉しいです。」
セシリーはそう言ってほほ笑んだ。
いつもお読みいただきありがとうございます。
この回でセシリーとの話は終わるはずだったのですか、続いてしまいました。




