侯爵令息と王太子
「おい、ディオル。」
珍しくスチュアートが話しかけてきた。学院に入学してから初めてではないだろうか?
スチュアートはディオルを毛嫌いしていて、ティナーヴと会わせろと言うとき以外はまともに話した記憶が無い。
どうやら優秀なディオルと話していると凡人な自分がみじめになるからと側近たちが話しているのを聞いたことがある。全く理解できないが。
まあ、用件はわかっているのだがとぼけた感じで話した。
「何でしょうか?スチュアート殿下?」
「なぜ私が話しかけたかなんて当然わかっているのだろう?相変わらず嫌味な奴だ。」
苦虫を嚙みつぶしたような顔で続けて
「ティナーヴ嬢のエスコートに名乗り出たらしいな。余計なことを・・・」
と責めてきた。
「殿下はご自分がティナからよく思われていrないことをご存知ないのでしょうか?ティナは強引な手を使われれば逃げられないと踏んで私に相談してきたのですよ。」
とティナーヴからの手紙をひらひらさせながら答えた。手紙をもらったのが嬉しくて毎日持ち歩いている。アンディからは白い目で見られているけど構わない。
「そんなことはない。ティナーヴ嬢はいつも笑顔で話してくれる。話が途中で終わってしまうのはお前のところの侍女が邪魔をするからだ。」
話しの途中で切られている自覚はあるらしい。
「侍女はティナの意を汲んで話しを遮っていいるのですよ。嫌がっていなければ見守るはずです。それに最近2人で話しをすることは出来ましたか?」
たとえティナーヴが嫌がっていなくてもアンディは邪魔するだろうな。と心の中で付け足しておいた。
それにしても感情を表に出さないティナーヴは改めて素晴らしい女性に成長した。だが、今回は裏目に出たようだ。
2人で話しているように見えないよう立ち回れと指示しておいたがどうだろうか?
スチュアートは顎に手を当ててじっと考え
「・・・ない。」
とがっくりと肩を落とした。
「お解かりになりましたらティナへは近づかないようお願いいたしますね。」
言いおいてその場を後にした。
後には昏い目をしたスチュアートが残されていた。
やはりアンディを侍女にして正解だった。
ティナーヴには仲の良い忠誠を誓っている侍女がいない。たとえいたとしても太刀打ちできるかどうか・・・。アンディだからこそ身分も関係なく体を張ってティナーヴを守ってもらえると思った。
最初はティナーヴにもアンディがアンリであることを伝えようかと思ったが、敵を欺くにはまず味方からと思い伝えるのをやめた。
ただ、長く離れていたせいで学院入学頃からアンディが少々暴走気味なのが気になるがな。
まあ、結果ティナーヴを守れているのだから問題ないだろう。
親友の自制心を信じて執務へ戻って行った。
ディオル目線は書いてて楽しいです。




