行動開始
その日のうちに両親へ相談し、行動を開始した。
物心ついた頃から身分を気にせず分け隔てなく接し、その人の中身で判断しているティナーヴは
自分に必要な能力のある人は貴族であろうと平民であろうと教育をお願いした。
本当の淑女は貴族だけでなく平民からも教育を受けることが必要と考えていた為である。
この考えは貴族社会では珍しいがアル王国の重鎮であるプレイシャス侯爵も柔軟な考えを持っており、息子・娘の行動もあまりに非人道的ではない限り口出しをすることなく見守るタイプの人間であった。
「お父様、アル王国の歴史や一般教養はマーク先生にお願いしようと思うのです。よろしいかしら?」
「平民の中学校で働いている方だな?学校で教えているのだから忙しいのではないか?」
「はい、ですが是非にと相談いたしましたところ中学校で教えている担当はそれほど多くなく
1日2時間ほどでしたら問題なく取れるとおっしゃっていただけました」
「であれば、問題ないな。お願いするとしよう」
「お父様!ありがとうございます。わたくし、一生懸命頑張りますわ」
ティナーヴが抱きついてお礼を言えば、デレっとし娘にメロメロな父親。普段の有能な侯爵は影も形もない。
「ティナ、マナーレッスンはマチルダ子爵婦人にお願いする予定なんだ。厳しい中にも優しさのある夫人はティナの教育にぴったりだと思う。」
「お兄様!なんてすばらしい。わたくしも大賛成です。ありがとうございます。」
今度はディオルに抱き着く。彼もまた次期侯爵として有能であるが、デレデレである。
「ダンスはギルバート男爵にお願いするよう指示しております。王国で1・2を争うほどにレッスンの評判が良くて、以前からティナがもう少し大きくなったらお願いしようと目をつけていたのです。きっとティナも気に入ると思いますわ。」
「お母さま!以前から探していてくださったのですね。わたくしとてもうれしいです。」
最後に母に抱き着けば優しく髪をなでながら
「皆、ティナが可愛くて応援をしたくてたまらないのですよ。ティナの希望に出来る限りのことをしたいのです。もちろんディオルのこともですよ。」
母はそう言って意味深な目線をディオルに向けた。
この時ティナーヴには何のことかわからなかったが、兄はそっと目をそらした。