学院生活 2
リーンゴーン。
ここで予鈴のベルが鳴り響き、それぞれが席に戻り授業の準備を始めた。
ベルに助けられたティナーヴはそっとため息をついた。
座学の2授業が終わり、次は男女に分かれてマナーレッスンの実技の為移動になる。
それぞれ移動を開始しようと廊下へ出たところでまた声がかかった。
「ティナーヴ嬢、次の教室まで一緒に行こうか。」
言いながらスチュアートは手を腰にあてエスコートの型をとった。
ティナーヴが対応に困っていると、間にすっと人影が入ってきた。
「王太子殿下、準備がそれぞれございます。特に女性はレッスンの為の準備も男性よりかかります。お察しください。失礼いたします。」
アンリはエスコートが見えていないかのように振る舞い、早口でまくしたてティナーヴを連れその場を離れた。あとをマーガレットとリエラが慌ててついて行った。
これまでも移動の時は声をかけて隣を歩いたりしてきたのだが、アンリがさりげなく助けてくれていた。
ただ、この1カ月でどんどん距離が近くなってきていて、今日はエスコートの動きまで・・・。
どうしたらいいのだろうと俯いて考えながら引っ張られていると急に動きが止まり、パッと腕を放された。
顔を上げるとアンリが気まずそうにしていた。
マーガレットとリエラが「先に行くね」とティナーヴ達に声をかけて次の教室へと行ってしまったので、2人だけになってしまった。
時間的には一瞬だったのだが、ティナーヴにはすごく長く感じた。教室へ向かわないといけないのにアンリをこのままにしておけないし、どうして良いかわからなくてオロオロしていると
「今日のは流石に慌ててしまいました。ティナ様が応えてしまったらどうしようと思うと、つい・・・。申し訳ございませんでした。」
久々にやってしまったとばかりにしゅんとしてしまったアンリが可愛くて
「応えるわけなんてないわ。わたくし、びっくりして固まってしまっていたのよ。助けてもらえてよかったわ。」
と宥めるように言った。続けて
「それにしても、今日のは流石に行き過ぎね。どう対応すれば良いのかしら。」
今日のような対応はそう何度も通用するとは思えない。アンリは生徒と違ってあくまで使用人だから不敬罪と言われてしまうかもしれない。そうなったら引き離されてしまうかもしれない。
とりあえず、今後の対応もかねて昼休みに改めて話をすることにし、時間も迫ってきているので教室に移動した。