1日の終わり
その後は書斎へ行き、簡単な片付けを終わらせて部屋着のワンピースに着替え2人で食堂へ行った。
食堂は24時間いつでも利用できるようになっており、時間により朝食、昼食、夕食のセットメニューの他、軽食、デザートセット、単品メニューと飽きが来ないようになっており、使用人も利用できる。
ティナーヴがうれしくてあちらこちら見回りながらどれにしようか決めかねていると
「ティナ様。」
と華やかな声に呼び止められた。
振り向くと、ふんわりとしたワンピースに着替えたマーガレットが侍女を連れてこちらへ向かってきた。
「ご一緒してもよろしくて?」
「ええ。どうぞ。わたくしからお願いしたいくらいです。」
2人で連れ立ってメニューを決めるとそれぞれの侍女に伝えて席に座った。
食事が席に運ばれてくると給仕をされながら優雅に食事を進める。
「ティナ様。侍女の紹介をさせてくださいな。マリーです。」
「お初にお目にかかります。マリーと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
と言って、丁寧なお辞儀をした。
「産まれた時から一緒で乳兄弟でもありますのよ。」
マーガレットが続けて教えてくれた。
「まあ、そうなのですね。とてもうらやましいです。そのような関係の方わたくしにはいませんの。マリーさんよろしくお願いしますね。こちらはアンリです。ここの学院に入学するときからなのですがとても信頼しているのですよ。」
「アンリと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
そう言ってアンリがお辞儀をすれば、周りで食事をしている人たちからも、ほうっと息が漏れるのが聞こえた。
「とても美しい所作ですのね。それにしてもティナ様との付き合いがそれほど浅いとは驚きです。私とマリーの関係と同じぐらいの信頼が見えましたものですから。」
マーガレットの言葉にティナーヴはうれしくなった。
自分でもそう思っていたのだが、同じように見てくれている人がいた。
思わず顔がにやけてしまいそうになるのを我慢しながらちらりと後ろを窺うと、アンリも口の端が少し上がっていた。
食事を終え、部屋へ戻り就寝の準備をした。
学院に入学するにあたって身の回り、特に入浴や着替えを自分で出来るようになるようにと言われ、
はじめは戸惑ったがなんでも自分で出来るようになりたいと思っていたティナーヴは特に疑問もなく取り組み、問題なくできるようになっていた。
アンリもそこは手伝うことなく自室にて待機している。
準備が終わりベルを鳴らすと就寝前のお茶を持って現れた。
アンリの淹れてくれるカモミールティーは絶品で、アンリが淹れてくれるようになってからは他の人に頼むのをやめてしまったぐらいだ。
「今日は本当に色々あってとても疲れたけど、アンリの淹れてくれたお茶を飲んだらとてもゆっくり眠れる気がするわ。」
「お褒めいただきましてありがとうございます。毎回ティナ様を想って淹れておりますので。・・・では、お休みなさいませ。」
ティナーヴが真っ赤になって手を止めているうちにアンリはすっと部屋を出て行った。
「何なの?急に何なの??」
カモミールティーでぐっすり眠れるはずだったのに急にあんなこと言われて、赤くなった頬に手を当てて必死に心を落ち着かせようとしていたティナーヴであった。
一方、部屋を出て足早に自室に戻ったアンリもディオルやティナーヴの両親の目があったため、学院に入るまでは一切しなかった、耳元で囁き、お姫様抱っこをし、更に想いを伝えるようなことをしてしまったことを改めて思い出し、恥ずかしくなり見悶えていた。