疎遠になって関わりの無くなった幼馴染がタイムリープして過去を変えているらしい
タイムリープ系の小説読んでたら思いついたので書いて見ました。
m(_ _)m
俺――潮田朔空には幼馴染がいた。
そう、過去の話だ。
その幼馴染の名前は――早乙女琴美。
鎖骨あたりまで伸びるミルクティー色の髪と、同じ色の眼を持った可愛らしい美少女だった。
そんな彼女は、高校に進学した途端に付き合いが悪くなった。
あいつに惚れていた俺はよくちょっかいを出していた。
だがある日こう言われた。
――近づかないで。
その瞬間、俺は絶望した。
その言葉が忘れられずにいたが、ある日突然プツリと何かが切れるように、あいつに興味が失せた。
冷え切ったんだ。
その後は色恋沙汰は何もなく大学に進学。そしてその大学も卒業して今は会社で働いている。
そんなある日、高校の友達と久々に会って話をした時、あの時の言葉は「照れに照れまくり、ツンデレみたくなってしまったらしい」と聞かされた。
俺はただただ、後悔に打ちひしがれた。
なぜあの時、もっと攻めなかったのか。
なぜあの時、あいつの気持ちを理解できなかったのか。
俺は後悔を背負いながら日常を過ごしている。
同僚からよく合コンに誘われるが、どうしても琴美のことが忘れられず、新しい恋もできないままだ。
だがそんなある日、俺は異変に気がついた。
それは朝起きて、スマホのフォルダに入っている俺の可愛い可愛い天丼ちゃん(猫の名前)を見ようとした時のことだ。
「――な、な、なんだこれは……!?」
それは、高校の制服を着る俺と一緒に写る、あの琴美の姿だった。
頰をぴったりと合わせて撮っている写真だった。俺とあいつ、どちらも頰を赤らめていて、まるで付き合いたてと言わんばかりの表情だ。
もちろん、高校に進学してから付き合いは一切なかった。
なかったはずなのに……ある。
紛れも無い事実がそのフォルダにあったのだ。
「どういうことだッ!? 日付も……ちょうど高校の時だ!」
おおお、落ち着け俺……。こういう時はこれだッ!
「天丼〜〜!」
ソファで寝そべっている三毛猫に向かってダイブした。
そう、俺は天丼成分を摂取(顔面を猫に埋めてスーハーすること)で落ち着けるのだ!
『ウミャウッ!』
「へぶしっ!」
殴られた。見事な右ストレート。
だがしかし、落ち着いたぜ。
「ってやばいやばい! 会社遅刻する!」
俺は一旦このことを置いておき、会社に行くことにした。
まあ何かの間違いだろう。
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「ダァ〜〜、仕事疲れた……」
俺の務めている会社はブラックでは無い。
が、まだ入社したばかりなので仕事も慣れていなくて疲れるんだ。
(あの朝の件は……ちょっと疲れたから一旦仮眠をとるか)
『なーう……』
「ああ、先に天丼にご飯あげなきゃだな」
天丼にご飯をあげたあと、俺は一眠りついた。
明日も会社なのでちゃんとアラームをセットし、アラームが鳴ると同時に起きたのだが、再び違和感を覚えた。
「家具が……変わってる……?」
俺はアパートの一室で暮らしていて、必要最低限の家具しかなかったはずだが、以前までなかった家具や、謎の写真立てなどがあった。
「どうなってる……まさか……ッ!」
俺はスマホのフォルダを確認する。
するとそこにはあいつの写真が増えていた。
そこに映る俺やあいつの表情は全て楽しそうだった。
「どうなってるんだ!?」
俺は思考を巡らす。
だがどんどんと、存在するはずのない、琴美との記憶が俺に流れ込んでくる。
「頭が……割れそうだ……ッ!」
記憶が流れ込んでくる中、琴美がこう喋るのを聞いた。
――私、タイムリープしてきたの。
「〝タイムリープ〟……?」
俺の趣味であるネット小説サーフィン。
ジャンルはたくさん読み、異世界系もラブコメ系もたくさん読んでいる。
その中で最近、ラブコメ系でタイムリープものをよく見かけるのだ。
よく見るのは過去に後悔を残す主人公が過去に戻り、幸せになるという感じだが、俺の場合は少し……いや、だいぶ違う感じになるだろう。
あいつが過去に戻り、過去を改変している。
そして俺は――未来に取り残されている。
そして、眠ることが未来という名の今が変わるトリガー。
「あるわけないが……実際に起きていることだから信じざるを得ない、か……」
俺は部屋に増えていた写真たてに目をやった。
その写真は、海辺でのツーショットだった。
「ゔっ……なんだ……? また頭が……!」
頭痛がする。
そして再び、記憶が流れ込んでくる。
あるはずがない、過去の記憶が。
その記憶とは――。
「お、お、俺はこの海辺で……あいつとキスしたのか……!?」
写真の中の俺たちは妙によそよそしい。
そして今流れ込んできた記憶は、琴美とキスをする記憶……。
「っアァ〜〜! なんっか恥ずかしいッ!!」
カーッと顔が、頰が熱くなるのを感じる。
だが、そんな恥ずかしさも吹き飛ぶような驚くべき事実が歩いてきたを
『ナーゴ』
「て……天丼……!? ふ、太ったなぁ……」
天丼はぽってりとした体型に変化していた。
だがおかしい。俺はペットを飼うに当たって、餌の分量はきっちりとするタイプだ。
ということは、だ。
「琴美が家に来ている……?」
コ○ン並みの推理力を発揮しているんじゃないかと思っている、この俺。
「は、はは……」
正直言って、琴美に会いたい。
――だけどいいのか?
琴美が好きなのは何も知らない無垢な俺なのではないか?
過去に戻る前の、絶望をもらい、ただ平凡に暮らす俺みたいなやつなんてあいつは……。
「ああ……なんだかなぁ……。まあとりあえず、一旦寝るか……」
なるようになるだろう、〝ケ・セラ・セラ〟ってやつさ。
寝たらまた日常に変化が起きるはず。
あとは任せた、未来の俺。
俺はネクタイをほどき、スーツのままベッドに潜り込み、そのまま眠りについてしまった。
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「ん……ゔ〜ん」
ピピピピッとなるアラームを唸りながら止め、むくりと起き上がる。
「あー……。……んっ!?!?」
体に雷が落ちたんじゃないかと思うぐらい驚いた。
そして数秒間体が動かず、言葉も出なかった。
俺の枕の横に、もう一つピンク色の枕があるのだ。
「な……ま、まさか……!」
俺は慌てて辺りを見渡す。
すると見慣れない化粧商品や女物の服がある。
「こ、これは……!?」
俺は他の部屋も見て回る。
洗面台には歯ブラシが二本。
色違いのマグカップ。
などなど……。
そして極め付けは、リビングの机にあった置き手紙だった。
そこにはこんなことを書かれていた。
『私先に仕事行くね! あと今日は記念日だから、さっ君も早めに帰ってくること! ケーキ楽しみにしててね(*´∀`*)。琴美より』
「どどどっ……同棲してんのかァ――ッ!?」
衝撃の事実……。
っていうことはもうあんなことやこんなことをしたのか!?
……いや、記憶を見る限りそういうのはしていないようだ。
俺もあいつも、そういうのには奥手だからな……。
「おいまじかよ! どうすんの、俺! なぁ、天丼。お前はどこからどこまで知ってるんだ!?」
『…………』
「くそう……爆睡してやがる……」
俺は放心状態のまま仕事に向かったが、上司から心配されてそのまま家に返された。
家のソファで項垂れる俺。だが心臓はハイスピードだ。
(うわ〜〜もうすぐ琴美帰ってくるんじゃないか? どんな顔して会えばいいんな……っていうか何話す? どうすればいいんだ!?)
散々唸った挙句、俺はとりあえずコンビニでコーヒーを買いに行くことにした。
こんな時こそ冷静に。
玄関に向かい、靴を履こうとしたその瞬間、ガチャリと扉の鍵が開く音がした。
扉が開き、その先には――。
「あれ? さっ君お出迎えしてくれたの? ありがと〜〜ッ!!」
「ぁ……」
あの琴美が、目の前にいる。
中学の時の可愛さは未だ健在だが、少々大人びていた。
もう二度と会えないと思っていた。
そんな彼女が目の前にいる。
俺は、咄嗟に琴美に抱きつき、そのまま泣き始めてしまった。
「甘えたい気分なのかな? それとも会社で何かあったの? よしよし……」
琴美はただ、俺の頭を撫でてくれた。
このまま俺が何も言わなかったら、琴美との幸せな生活が手に入るのだろうか?
――いいや、違う。
多分、それは本当の幸せじゃあない。
ずっと秘密になんてできないんだ。いつか綻びが生じる。
それならば――全て話してしまおう。
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「さっ君、もう大丈夫?」
「ああ……もう大丈夫だ。いきなりなんだが、大事な話がある」
「ぇ……ま、まさか別れるなんて言わないよね!? そんなのだったら私……私……!」
さっきまでは俺が泣いていたけれど、今度は琴美が泣き出しそうになってしまった。
「ち、違う! 俺はできればずっと……琴美と、いたい……」
あ、焦ってものすごく恥ずかしいことを言ってしまったぁ……!
でも琴美がすごく嬉しそうな表情してるからよしとしよう。
「わかった、それじゃあ、話聞かせてくれる?」
「うん……。実は――」
それから、俺は全てを話した。
徐々に変わる日常。改変されて行く過去。琴美がタイムリープする前の記憶を持っていること。
洗いざらい全てを話した。
「そう、なんだね……」
「ああ……。その、すまん。本当にごめん。それしか出てこないよ……」
「なんで……」
琴美は俯きながら拳を握り、プルプルと震えていた。
……怒っても俺は何も言えない。
琴美と二度目の俺と中を育んでいたんだ。
そこで過去の俺がいきなりしゃしゃり出てきて「はいそうですか」なんて納得できないだろう。
俺は殴られる覚悟でギュッと目を閉じた。
「なんでさっ君が謝るの!!」
「――……ぇ」
琴美は俺の予想通り、怒っていた。
だが、怒りの矛先は全く違う方向を向いていた。
「な、なんでって……。そりゃ、いきなり過去の俺が出てきて、迷惑とか……」
「迷惑なんかじゃない! 私は……あの時のことをずっとずーっと後悔してたの! なんであの時のあんな言葉を言っちゃったのかとか!」
琴美からポロポロと涙が出ている。
俺もつられて泣きそうになるが、次に話す琴美の最後の言葉で俺は絶句することになる。
「この二回目の人生でも、ずっとそのことを後悔してたの……。もしかしたらあの時、あんな言葉を言ってなかったら――さっ君は死んでなかったんだって」
「し……死んだ……? お、俺が……?」
「うん……。私がタイムリープしたのはちょうど今日。そして、さっ君は昨日……――死ぬはずだったの。事故だったって……。会社に向かう途中、暴走したトラックに衝突して即死って……」
背筋がゾッとした。
もしあの時、フォルダを見て、変わった日常について考え込んで時間割いていなかったら。
俺はその頃トラックに――。
「そう、なんだな……」
「私には後悔しかなかった。さっ君の天丼ちゃんを引き取った後、私はずっと泣いてたの。『あの時あんなこと言わなければ』って。そしたら過去に戻ってたの」
言葉が出ない。
恐怖や緊張、様々な感情が入り混じってもうわけがわからない。
「でもッ!!」
机をドンっと叩き、琴美は真剣な眼差しで俺を見つめてくる。
「今ここに、さっ君はいる……生きてる! 二度目のさっ君でも、過去のさっ君でも! 私はあなたを愛してるから……だからッ!」
ああ……また涙が溢れそうだ。
「もう私を置いていかないで……ずっと、一緒にいて……。お願い…………」
琴美は俺の胸に顔を埋めながら、嗚咽を上げて泣いている。
「っ……。琴美……」
「ぐすっ……なぁに……?」
「こんな俺でも、さ……お前を愛していいのか……?」
互いに涙をボロボロと流して向かい合っている。
そして、琴美は笑顔でこう答えてくれた。
「――もちろんっ!」
俺たちは抱き合って、泣きつかれるまで泣きじゃくった。
そしてその後のことは、ただただ、幸せな日々が続いた。
過去に戻してくれた神がいるのならば、感謝しかない。
もしかしたら……すぐ近くにいたり……なんて、あるわけないか――。
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『…………』
二人が泣きじゃくっているのを、三毛猫の天丼はただ見つめていた。
そして――。
『……ふんっ、世話が焼けたニャ……』
ゆらりと尻尾が揺れたが、二又に分かれているように見えた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
彼女sideは気が向いたら書こうかなぁと思ったり……。
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