入学式
私は、春が大好きだ。
なんだか可愛らしいイメージがあるし、暖かくて過ごしやすい。
出会いの季節ともいうし、なんだかワクワクする。
「あ、桜が咲いている」
数える程しか来たことの無い、けれどこれから毎日通う高校の前で私は立ち止まった。
パステルブルーのスマホを取り出しカメラを起動して写真を撮る。
桜と私のツーショット写真だ。
(うんうん、可愛く撮れてる)
そう思いながら私は慣れた手つきで自分の顔を加工していく。
肌を少しなめらかにして、目にはもうちょっと煌めきを。
最後にふんわりとしたフィルターをかければ完成だ。
上手く写真を取れた私はうきうきしながら校門をくぐった。
周りには私と同じような背丈の子が沢山いる。
(きっと新入生なんだろうな)
そう思いながら学校の中に足を踏み入れていくと新入生集合場所である講堂についた。
(うわ、広い…)
足を踏み入れた講堂はまるで学校ではないかのような煌めきを放っていた。
天井には小さなシャンデリア、壁には天使の絵が飾ってある。
椅子もふかふかだ。
さすが私立、と思いながら席に座ると周りの新入生が自分のことをチラチラ見ていることに気づいた。
(あぁ、またか)
皆が私を気にしている理由は分かっていた。
それは私が「かわいい」からだ。
柔らかく腰までウェーブした茶髪、小さくて丸い顔、赤い絵の具をほんの少し垂らしたかのような頬に、透明感のある瞳。
(気分は悪くないけど、ね)
小さい頃から周りにもてはやされて生きてきた私にとって「注目される」ことは苦ではない。なんなら心地いい。
「ブーーーーー」
そんなことを考えていると開会を知らせるブザーが講堂に鳴り響いた。