出会い
この物語はあくまでもフィクションです。
途中に不適切な表現、社会的に不適切な表現が出てきますが、あくまでも物語の表現に当たりますので、ご了承くださいませ。
日曜の午後と言うのに、その日は珍しく誰からも電話がかかってこなかった。
こんな日もたまにはあっても良いと、ジーンズに小銭とソフトケースのタバコを無理矢理詰め込め、ケツのポケットにはハーモニカを入れた。
ハイカットのスニーカーに足を通し、玄関の扉を開ける昼の2時。
何をする訳でもなく、街をぶらつく。
途中、近くの自動販売機で少しビターな缶コーヒーを買い、また少しぶらつく。
行きついたところは、大きな敷地に小さめのビルが建っている場所。
その大きな敷地を囲うようにブロックの塀が続いていた。
彼はその壁によじ登り、腰を下ろした。
壁の上からでも街の中のビルからは見下ろされている感じがするが、なんとなくここが好きだった。
自分の身長より、さらに高い壁。
敷地の中に何が在るかは知らないし、知ってもどうって事は無いだろう。
彼はハーモニカを引っ張り出し、吹いてみる。
特別に良いハーモニカでもない、大量生産のブランドも解らないハーモニカ。
ハーモニカが好きなわけでもなかった。
ただ、音楽が他人より少し好きで、それを真似るのが好きなだけ。
曲は新しい風に吹かれて。
6月という中途半端な陽射しが暮れていき、人々は家路に急ぐ。
そんな彼らは何を想い、何のために暮らしているのだろう。
「はっ、ははは………」
彼は曲が終わると、声に出して笑う。
最近、浸りすぎてナイーブになっているのかも知れない。
アイツでもないのに。
そう思い、缶コーヒーを啜り、ポケットのタバコを引っ張り出す。
「ねぇ、さっきの曲って、新しい風に吹かれてだよね?」
見下ろした、其処に彼女が居た。
「………あぁ」
彼は軽く頷くと、よれよれのタバコに火をつける。
「ねっ」
「ん?」
「それ貸して」
彼女はハーモニカを指さした。
彼は戸惑って彼女を見る。
Tシャツの上にデニムのジャンバー。スリムなジーンズにローテクのスニーカー。
髪は肩までのセミロングで、何の飾りっ気も無いのに、右手の人差し指の指環がやけに印象に残った。
「良いけど、俺が吹いたやつだぞ?」
「別に気にしない」
そう彼女は笑う。
彼はハーモニカを彼女に向かって投げた。彼女はぎこちなくキャッチすると、照れたように笑い、そのまま口に当てた。
他人の吹いたハーモニカは誰もが躊躇するものだが、彼女は気にする様子はない。
曲はティーンエイジブルー。
女の子なのに珍しい曲だと思いながら、彼は煙草を吹かした。そして、曲が終わると彼女は解って居たようにはにかむ。
「珍しいかな? 女なのにこんな曲って」
「あぁ」
彼は曖昧に頷き、彼女をはっきりと見た。
「結構好きなんだ。こう言う曲」
「俺も好きだよ、その曲。ところで、アンタはこの辺りに住んでんの?」
「最近、引っ越してきたの」
「どおりで見たことが無かった」
「あなたは、いつもそこに座ってる?」
「じょうだん」
彼女はハーモニカを投げ返す。彼は余裕に受け止めた。
「私は茜。あなたは?」
「………佐々木」
「佐々木君ね」
「そう」
「また会えると良いね」
そい言って、彼女はバイバイをして去っていく。
それが、彼と彼女の出会いだった。
名前しか知らない彼女の。
――――I'm?(私は?)――――
暗く長いトンネルを走っているとき、早く光が欲しくて無我夢中だった。
それでも、普通の光は嫌で、目も開けられないほどの光を求めていた。
そう、
いつでも、最高のさらなる上を求めていた。
そうしないと、俺たちは崩れていきそうで怖かったんだ。
y,
高校時代って、なんでそんなに真剣だったのだろう。
結構、むかしに書いた、物語です。
昔に書いた物語を、そのまま載せるには拙すぎるので、ちょっと手を加えていますが、そのままの感情で行きたいので、ほぼ原文を使っています。
だから、感情や文章が幼稚でも、そんなものって思ってください。
若気の至りも入ってます。
えっ、今と同じ?
そう思っても、暖かく見守ってください。