6.勇者と魔王、畑を作る
翌朝、リリアは目覚めると朝食の支度を村長としながらある考えをしていた。
サタナを起こし、ともに朝食をとりながらリリアはサタナに向かって考えていたことを言った。
「私たちって住むところはともかく、ご飯まで毎回ご馳走になってるのってどうなのかしら」
「どうなのかしらって、まぁ悪いとは思ってるけど...」
「そうよね、そこで私たちも自分たちの食べるものは自分たちで調達しようと思うの」
「お、おう」
サタナをリリアの気迫に若干押されつつも首肯した。
「それでね、村長からもう使われてない畑があるって聞いて、そこを譲ってもらうことにしたの」
「なるほどなー、でも使われてないってことは手入れが必要なんだろ?俺も詳しくは知らないぞ?」
「あら、少しは知っているみたいな言い方ね」
「ああ、俺の住んでた魔王城に人間に関する本がまぁまぁあってな、それで知った」
「そこに関しては今後言及するとして。今は畑のことね。大丈夫、手入れのことに関しては村長がやり方を教えてくれるって言ってくれてるし、私も少しは知ってるの」
「それじゃ、畑にさっそく行ってみるか」
サタナが腰を上げて立ち上がり、リリアもそれに続いた。
「「おおー」」
2人ははなれの裏の方にある畑に着くと、同時に声を上げた。
「使われてないって聞いてたからどんなもんかと思ったが...」
「これは...ちょっと予想外ね」
使われなくなって何年経過したのかはわからないが、おそらく20年くらいは経っているだろう。
「はぁ...これは骨が折れそうだ」
「弱音吐いても仕方がないし、頑張りましょ」
この日途中に昼食をはさみながら一日かけて畑の再生に尽力していた2人であったが、流石魔王と勇者といったところか。伸び放題であった雑草は綺麗に排除され畑の全貌が明らかになっていた。
畑の再生に尽力している魔王と勇者とはなかなかシュールな光景ではあるが、今はそれを知る人はいない。
「あぁー疲れたー、それと昨日のせいで筋肉痛が...いてて...」
「元魔王が聞いて呆れるわね。でもそうね、流石に私も疲れたわ」
はなれに戻ってくるなり、二人して床に寝転がる。そのまま睡魔に負けそうになるが、眠たい体に鞭を打って風呂を沸かしに行く。リリアが先に入ることをサタナはまどろみの中で承諾し、その後なんとかサタナも風呂に入ったが、戻ってくるなりすぐに寝てしまった。
リリアはその寝顔を見ながら、畑のことについて考えようとしたが、すぐに襲いかかってきた睡魔には抗えず、そのまま翌日を迎えた。
翌日も、畑に取り組んでいた2人であったが、今日は昨日と違うことが起こった。
「おう、やってんな」
「水くせぇなサタナのあんちゃんよ、声かけてくれりゃ手伝うのに」
2人は驚いて声のした方を振り返る
そこにはラートを筆頭としたこの前一緒に柵の仕事をした村の人たちが駆けつけてくれていた。
2人はみんなにお礼を言いながら、思うことがあった。でもそれは決して言わずに感謝の意だけを表していた。きっとみんな暇なのだろうという想いは伏せて。
それは、中らずと雖も遠からずともいったところか。村には娯楽などないし、毎日村の人は畑の手入れや田んぼの手入れ、井戸水のくみ上げなど、日常の生活の中でやることはすぐに終わってしまうし、刺激がないのだ。
そんなことはともあれ、戦力が増えたことによる効率アップに2人は喜び、昨日よりハイペースで物事は進んだ。
そして、ラートが今日はこんなもんだろと言ったところで今日の作業は終了した。
「この調子ならあと数日で使えそうな畑になるな」
夕食を食べながらサタナは言った。
「でも、野菜の種を植えてから収穫までは早いものでも1か月はかかるから、それまでは、村の人たちから分けてもらうしかないわね」
「まぁ、どうせこんなにあっても食べきれないからって、皆分けてくれるからな」
「ええ、でもそれに甘え続けるわけにはいかないしね」
「ああ、それといつまでここにいられるかもわからねぇしな」
「...」
サタナはそう言って少し暗い顔をし、リリアも暗い顔になるが
「まぁ、こんな辺鄙なところにそうそう来ないだろうし」
と言って明るくサタナは言うが
「サタナは人間の姿だと、きっと魔王ってことはばれない...でも私は違う」
「そうかもな」
「だからね、もしもの時が来たら...その時が来たら私のことは置い」
「何度もいわせんなっての」
リリアはおでこに軽い衝撃を覚えた。リリアが俯いていたため気が付かなかったが、サタナはリリアの目の前まできていた。
「俺はリリアと生きるって言ってんだろ。今度そんなこと言ったらデコピンじゃ済まさないからな」
そういうとサタナは元の場所に戻った。
「うん...ごめんね、ありがと」
今のリリアにはそれが精一杯であったが、それを聞いたサタナは軽く笑うと
「それに、俺とリリアがいればどんなやつが来たって大丈夫だろ」
そういってまた笑うのでった。
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