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パパに側室なんて許さない!  作者: 灰羽アリス
5/22

5 嫌がらせはどんどん畳み掛けるべし


「ぷはーッ。ひと仕事終えたあとの一杯って五臓六腑にしみわたるわ~」


 牛頭のロナンのログハウスで、あたしとトニーはオレンジジュースをごちそうになっている。

 ロナンは城の庭師。ロナンが寝泊まりしているログハウスは庭の端にある。


「親父クセェな」


 ロナンは牛頭を揺らしてごうかいに笑った。


「失礼ね、レディに向かって」


「ロナン~、もういっぱいちょうだい」


「飲みすぎると腹壊すぞ」


 そう言いながらも、ロナンは新しいジュースを注いでくれる。


「ところで、お前たちはなんでそんなに泥だらけなんだ?」


「穴を掘ったから」


「うん、がんばった」


「穴? また、何のために」


「今にわかるわ」


 あたしたちは体についた泥を落とすため、ここにシャワーを借りにきたのだ。城の使用人たちに見つからないうちに証拠(・・)を消す必要があったから………


『きゃーーーーーーーーー!!!!』


 悲鳴と共に、どすん、という音が聞こえた。


「おいおい、まさか……」


「ごちそうさま、ロナン。これ、口止め料ね」


「おおさめください」


 かごに入ったいくつかの球根を、トニーがロナンに渡す。


「こ、これは……っ!こんな貴重なもん、どこで」


「ちょっとしたツテよ。大したことじゃないわ」


 ロナンがちっちゃな目をぱちぱちする。それから感心したように言った。


「───オメェ、将来大物になるわ……」


「それで、ロナン? 龍姫を穴に落とした犯人を知ってる?」


「いや、俺は何も知らねぇ」


「よろしくてよ。──じゃ、失礼するわ、ロナン。あたしたちはまだやることがあるから」


 あたしとトニーはさっさと退散した。


「………恐ろしい。さすが、魔王様のお子だわな……」




「急ぐわよ、トニー。龍姫が次に行くところはわかってる。先回りしないと」


「大丈夫だよ、トリー。龍姫はいま西の廊下にいる。部屋に戻るまであと7分はかかるよ」


「気配察知の魔法? もう使えるようになったのね!つい最近、ラニに教わったばかりでしょ?」


「えへへ。すごい?」


「すごいわ!!さすがトニー!」


「うふふ、じゃあぼく、もっと頑張っちゃう」



 

「もうっ、最悪!泥だらけだわ!!こんな屈辱的な気分、生まれて初めてよ!ちくしょう、あのクソガキども、覚えてなさい!ああ、もう、どうやってとっちめてやろうかしら!」


 龍姫は侍女たちに当たり散らしながら部屋に帰ってきた。まっすぐ向かう先は、バスルーム。


「あら、お湯を張ってくれてるのね。気が利くじゃない」


 龍姫は迷わず湯船に浸かった。あたしとトニーはそれを見てにんまり笑う。 


「あら、なんだか……」


 龍姫はすぐに異変に気がついた。


「お湯がぬるぬるする? それに、カサカサ当たるものが……あ、石?なに?」


 お湯をすくい上げた龍姫は、手の中にうごめくものを見て絶叫した。そこにあるのは、無数の昆虫たち。……うぅ、これは見てるあたしでもキツイ。


 追い打ちをかけるように、ぽいぽい、とトニーがさらに虫を落とした(・・・・)。そう、あたしたちは龍姫の湯船の真上、その天井裏に潜んでいる。


「ぎ、やーーーーー!!」


「穴掘りで見つけた虫、たくさん役にたったね!」


「ええ、一石二鳥だったわ。今回の計画はとっても経済的ね」

 

「み、み、みみず、みみず、みず、」


「あら、どうしたのかしら。龍姫、シャワーに向かって何か言ってるけど」


「み、みず、ミミズ~~~~~!!!」


「ミミズ? あ、もしかして」


 トニーは満面の笑みだ。


「ぼく、頑張っちゃった」


「幻覚魔法ね!すごいわ、トニー!そんな高度な魔法まで使えるなんて!素敵よ!」


「えへへ~、ありがとう~」


 あたしには見えないけど、たぶん、龍姫にはシャワーがつくる水の線の一本一本が、ほそながーいミミズに見えているんだろうなと思う。ぞっと、背筋がふるえた。自分の想像力の豊かさが恨めしいわ。






クリスマスに贈る短編として、全14話・完結済み純文学。

【猫の目で見る世界】

を投稿しております。ほっこり泣きたい方におすすめです。どうぞ、こちらもよろしくお願いします。


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ぜひ遊びにいらしてください(*^^*)

@Alice_haibane

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