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パパに側室なんて許さない!  作者: 灰羽アリス
20/22

20 迷惑な訪問者と、嬉しい訪問者


 今日も、ロキが城にやってきた。こうも毎日来られると、さすがにうんざりしてくる。

 

 当たり前のようにソファに座り、ママの侍女であるティナからジュースをついでもらうロキを睨む。


「ティナ、ロキに良くしてあげなくていいから!」


「しかし、お客様ですし……」


「ロキも、ここはアンタの家じゃないのよ!こう毎日来ないでよ!」


「だって、ここの(めし)うめぇし」


「安い言い訳だな」


 別のソファに座るパパが、頬杖をつきながら不機嫌そうに言った。びく、とロキの肩がはねた。


「もう、ヴィ」とママがとなりのパパをたしなめる。だって、とパパは唇をすぼめた。なぜかそこから甘い雰囲気に包まれつつあるママとパパのひざに、トニーが飛び込んでいく。


「ぼく、知ってる!ロキはね、トリーに会いたくてここに来てるんだよ」


 ロキの顔はみるみるうちに真っ赤になった。犬耳としっぽをピンと立て、ぷるぷる震わせる。 


 あたしはため息をついた。


 あたしだって、馬鹿じゃない。ロキがあたしを好きだってことくらい、知ってるわ。でも、いちいちそういう"意識した"態度を取られると面倒なのよ。


「パパは許しませんからね!!!」


 ………ねぇ、パパ、話の脈絡って知ってる? どこをどうしたら、そんな話になるのよ。


「安心して、パパ。ロキはあたしの下僕(げぼく)。下僕に恋する(あるじ)なんていないでしょ?」


 トリー、とすかさずママのおしかりが飛んだ。


「げぼ、げぼ……」とロキは壊れた機械みたいに繰り返してる。


「何驚いてるのよ、ロキ。当たり前のことでしょ。あなたがあたしと対等だとでも思ってた?」


「た、確かに身分はちげぇけど!」


「違うどころじゃない。あたしは神で、あなたは道端のありんこ。それくらいひらきがあるの」


「そこまで言わなくたっていいだろ!!」


「お行儀が悪いわよ、わんちゃん。ちゃんと座りなさい。床にね」


「トリー!!!もう、なんてこと言うの!」

  

 ママはカンカンだ。

 ………ここではこれ以上言い合いを続けるべきじゃないわね。罰として、"淑女教育"の時間を増やされたらたまらない。

 あたしは淑女らしく、紅茶を優雅に口に運んでみせた。


「あたしと付き合いたいなら、まずはその下品なしゃべり方からなおしなさい。それと、浮浪者みたいなその汚い服もやめて。話はそれからよ」


 ロキは床をじっとにらんで何か考え込むと、やがて頷いた。


「…………わかった」


 ええっ、わかっちゃったの? 遠回しなお断りの文句なのに。あなたみたいな理解力のない犬っころ、あたしの好みじゃないのよ。あたしが好きなのは────


「やぁ、子どもたち」


「「フェルナンデスおじさま!!!」」


 あたしとトニーは、思わぬ、そして嬉しい訪問者に駆け寄り、抱きついた。


 ママやトニーとそっくりの銀の髪は、いつもながらサラサラだ。茶色の双眼を優しく細めておじさまは笑った。





 

 


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