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パパに側室なんて許さない!  作者: 灰羽アリス
16/22

16 いくらなんでもやりすぎでしょ!?


「こんの、クソガキどもめ!!!!」


 赤い髪をちりちりにした龍姫が、鬼の形相であたしたちの部屋におしかけてきた。あら、"燃えるシャンプー"のイタズラは成功したみたい。あたしとトニーは顔を見合わせて、久しぶりのイタズラの成功を喜んだ。そしたら、龍姫に何かを吹きかけられて………口から吐いたのよ? なにあれ、毒霧? とにかく、最後の記憶は、これ。 


 まったく、やられたわ。龍姫は手段を選ばないって、わかっていたのに。


 目がさめたとき、あたしとトニーはオンボロの小屋の中にいた。


「トニー。起きて、トニー」


「うぅ……あれ、トリー?」


 トニーはまんまるな赤い瞳で、あたりを見回した。


「どこ、ここ」


「わからない」


 隙間風に、壁の板がガタガタ鳴って怖かった。板の目から見た外は真っ暗だ。さっきまでお昼だったのに。めまいがする。


 ガタン、とひときわ大きな音がして、熊みたいなひげもじゃの男が小屋に入ってきた。


 あたしとトニーはとっさに抱き合った。


「ガキども、起きてやがるじゃねーか」


「薬が切れたんだろ」


 もう一人、ひょろっとした不健康そうな男も入ってくる。ごほごほと咳をしていた。


「話が違ぇぞ。アストルに着くまでは起きねぇはずだろ」


「アストルはもうすぐそこだ。問題ない」


「アストルですって!?」


 それって、あたしたちがいた城から30キロも離れた街じゃない!


「トリー、しーっ!」

 

 つい上げてしまった声に、熊が反応した。


「ほお、目の色は紫だったのか。こりゃべっぴんさんだ」


 熊が近づいてくる。予想外だったのは、トニーの反応だった。


「トリーに近づくな!」


 前に飛び出して、あたしをかばった。


「トニーやめて!逆らったら危ないわ!」


「ぼくは男の子だから、女の子より力があるから、トリーより魔法も得意だから!ぼくが、トリーをまもるんだ!パパと約束したんだ!」


「トニー……」


 おくびょうなトニーが、足を震わせながらもあたしをまもるために頑張っている。鼻がツンとして目の奥が熱くなった。


 だけど様子がおかしい。トニーは呪文をとなえたのに、魔法が発動しない。そのときになって、初めてきづいた。あたしたちの手首につけられたブレスレットに。これ、何だか知ってる。魔法使いの拘束具だ。パパが取り締まって、ほとんど壊したはずなのに、まだ残っていたなんて。


 トニーはつきとばされ、壁で頭を打った。


「トニーっ!!!」


 かけより、頭を抱きかかえる。頭のうしろのほう、銀の髪がどろりとした赤で染まりつつあった。ぞっと、全身に震えが走った。


「おい、商品を傷つけるなよ。値段が下がるだろ」


「いや、まさかあんなに吹っ飛ぶとは」


 怒りのせいで震えが抑えられず、歯がカチカチ鳴った。


「許さない……許さない……っ!」


 そばに落ちていた木板を、男たちに向かってかまえる。

 昔、拘束具をはめられて魔法を封じられたパパは、ママをまもるために魔力を爆発させて、拘束具を自力で解いたと聞いた。あたしだって、できる。トニーをまもるために、あたしだって。


 だけど、いくら力をこめてもブレスレットはうんともすんともいわなくて。あたしの顔はとっくに涙に濡れていた。男たちはそんなあたしを薄ら笑う。ハッ、ハッとトニーの荒い息づかいに胸がしめつけられる。


 そのとき、小屋に火の手が上がった。いっきに視界が炎の赤でいっぱいになる。

 小さな影が、小屋の中に飛び込んできた。それから数秒もしないうちに、男たちが床に転がっていた。


 何が起きたの……?


「こっちだ!」


 小さな影の主が、あたしの手をひっぱった。


「だめ、まだトニーが!」


「俺がおぶってく!」


 あたしたちは崩れる小屋から急いで逃げ出した。

 


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― 新着の感想 ―
[一言] 龍姫これはやばくね… この状態からどのように話が展開されるのか楽しみです
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