15 おじさま、ヘルプ!
もう我慢ならないわ……!!!
あたしとトニーは真っ赤に腫れ上がった肌をかきむしった。世話係のミアがおろおろと、あたしたちの肌に薬をぬってくれる。しゅんとたおれた猫耳は、反省を示していた。龍姫にもらったものは捨てろって言ったのに!なんて、だからあたしはミアをしからない。
ミアが湯ぶねに入れた赤い粉を見たとき、ああ、新しい入浴剤なんだなって特に気にしなかった。バラの香りがしたし、オトナな感じがして気に入った。トニーとふたりでお湯につかって、最初はよかった。楽しく遊んでた。そしたら突然、お湯がぼこぼこしだして、ゆであがるほどに熱くなった。龍姫がくれたという入浴剤に、何か仕掛けがしてあったんだと思う。あたしとトニーはすぐに湯ぶねから出て助かったけど、かゆくなるほど、全身をやけどしたってわけ。
最近、あたしたちがしかけるイタズラはことごとく失敗するのに、龍姫があたしたちにしかけてくるイタズラ(そんな生易しいものじゃないけど)は絶対に成功する。あたしたち、そろそろ本気で殺されるかもしれない。
龍姫にとってみれば、あたしたちってすごく邪魔な存在だもんね。パパへのアプローチを邪魔してくるからって意味だけじゃなくて。仮に、龍姫が本当に側室になったら。ほら、龍姫が言ってたじゃない? 自分の子どもを魔王にしたいって。そのためには、現時点で世継ぎと決まっている"クソガキども"が邪魔だって。
「ママ、おはなしがあります」
「なにかしら」
「あたしたちはもうオトナなので、おやすみの儀式をしにこないでください」
ママからふっと表情が消え、そして、
「えぇっ!!」
大げさに悲鳴を上げた。
「だって、絵本を読むのは? 子守唄は?」
「必要ありません」
「急に、どうして。トニーは?寂しいわよね?」
「トニー?」
泣きそうなトニーを、じっとりと睨む。
「うっ……ぼ、ぼくはもう、おとななので」
説得のかいあって、ママはあれからおやすみの儀式をしに来ない。
酔ったふりして寝室に突撃~っていう龍姫の計画。あれを阻止するには、ママにはずっとパパのそばにいてもらわないといけないんだ。
最初の何日か、トリーは泣いちゃって大変だったけど、もう平気。弱音を吐かない男、ドラゴンライダーの"アントニオ"のはなしを出したら、トニーはおとなしくなった。ありがとう、ドラゴンライダー"アントニオ"。
それから、フェルナンデスおじさまに手紙を出した。龍姫から受けたしうちを書き連ねて、証拠や詳しいレポートも同封した。どうか、かの女を退治するため、おじさまの力をお貸しください。