11 ふたりの仕事
「トリー、だいじょうぶ?」
ひざを抱えて顔をうずめるあたしに、トニーはひかえめに声をかけてくる。
「大丈夫」
「お菓子、たべる?」
「……たべる」
トニーがすすめてくれたお菓子を、ふたりでもぐもぐたべた。
「トリー、あのね」
「うん、なに?」
「ぼく、今朝、龍姫の部屋に忍びこんだんだ」
「───え?ひとりで?」
「うん、それでね、龍姫の靴の中にカエルを入れてきたの。だからいま頃ね、龍姫の靴の中は───」
「待って」
嬉しそうに語るトニーを、手をかかげて止めた。
「イタズラを、ひとりでしかけたの?なんで?」
「トリーが喜ぶかなって……思ったんだけど……」
雲行きがあやしいことに、トニーは気づいた。気づかないほうがおかしい。たぶん、あたしの顔は真っ赤になっているだろうから。
「どうして、あたしといっしょにしなかったの? イタズラは、ふたりの仕事なのに」
さっきパパに怒って、涙腺が弱くなっていた。かんたんに、涙があふれてくる。
「トリー、ごめん!ごめんね!泣かないで」
「トニーなんて、もう知らない!」
「トリー……」
「あっち行って!!」
わかってる。これは八つ当たりだって。パパへの報告が失敗したあたしのかげで、トニーは人知れずイタズラを成功させていた。あたしの力も必要とせず。役立たずのトリーなんていらない、そんなふうに言われてるみたいで、それが、すごく嫌だった。
むしゃくしゃして、あたしは城の廊下をずんずん歩いた。あたしとトニーは同じ部屋だし、どちらかが出ていかないと、ひとりになれないんだ。
ふと、窓の外を見た。ほんとに、なにげなく。そして、驚愕した。
───パパが、龍姫と腕を組んで歩いていた。ふふふ、と楽しそうな声が窓ガラスごしにくぐもって聞こえてくる。パパも笑顔だ。
信じらんない!パパも、龍姫にお熱なの?
それとももう、幻覚効果のあるお酒や惚れ薬でも飲まされた? ママは────
そうよ、ママ。あたしたちは、ママのために、龍姫をやっつけようって決めたんだった。
龍姫を絶対に、側室なんかにしてやらない。ママは一人だけで、十分で、それがベスト。あたしたち幸せな家族に、他人の入る余地はないのだ。
あたしは当初の目的と意気込みを思い出した。
あたし、何してるんだろう。ちょっとしたことで、こんなふうにいじけて。そうよ、パパがあたしの言うことを信じてくれないなんて、ささいなこと。オトナなんてあてにせず、あたしとトニーでどうにかすればいいだけなんだから。
こうして何もしていない時間は、そのまんま龍姫に有利に働く。つまらない意地を張ってる場合じゃない。
「トニー、ごめんなさい。ちょっと、カリカリしてて。トニーに当たっちゃったの」
「ぼくもごめんね、トリー。イタズラはいっしょにするから楽しいんだもんね。これからも、いっしょにがんばろうね」
「ええ、トニー」
あたしたちは、決意を新たにひしと抱き合った。