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第4話 冒険! 学園ダンジョン

 一瞬の視界のホワイトアウト。

 それが終わると僕達は暗いダンジョンの中に転送されていた。足元の魔法陣から出る。すると二人の職員に行く手を阻まれた。


「探索許可証の提示をしてください」


 言われるがままに僕とフィオナは手に持っていた探索許可証を職員に渡す。


「……、結構。通っていいですよ」


 探索許可証を職員から返してもらうと僕とフィオナはダンジョンの内部へ足を進めた。


 そこは石造りの要塞のような内装だった。周囲にはまばらだが武装をしている学生達の集団が確認できる。おそらくこれからの攻略のブリーフィングをしているのだろう。

 そんな冒険者らしい他グループの姿を見て僕の中に冒険への熱い思いが溢れ出てきた。


「さあ、ここからが冒険の始まりですよ! フィオナさん、頑張っていきましょう!」


 えいえいおー、と手をあげる。するとフィオナも弱々しいながらも手を上げてくれた。


「ところでティモシー、私は学園ダンジョンについて全然知らないんだけど教えてもらえないかな?」


「いいですよ。学園ダンジョンはですね……」


 僕はフィオナに説明をした。


 学園ダンジョンとはガルドワース王国北部地方ギルスリン市内に存在する地下型ダンジョンである。全10階層あり二階層降りるごとに危険度が上がっていく構造となっている。また内部には奥へ進む挑戦者を待ち受ける守護者が徘徊しており、探索者は罠と守護者の二つの障害を突破しなくてはいけない。このダンジョンの内部は何らかの要因で死亡した場合でも地上階の専用魔法陣の上で蘇生できるようになっており、その為学園は死力の限りを尽くすことを推奨している。


「なるほどそっちのタイプのダンジョンなんだね」


「そっちのタイプ?」


「ううん、なんでもない。それじゃあ行こうかティモシー」


 言うなりフィオナはさっさと歩き出してしまった。


「あっ、待ってください!」


 僕は慌てて前を行くフィオナを追いかけた。




「一階層の守護者は攻撃してこないのでまだ戦いに慣れない学生が攻撃の練習をするのに最適なんです」


 そういって僕は人型のクリスタルのような見た目をしたダンジョンの守護者にダガーを突き入れた。

 僕の攻撃を受けた守護者の体にヒビが入る。そこにフィオナが前に出て手に持つ直剣を守護者の頂点から真っ直ぐに切り落とした。

 体を左右に分断された守護者の体が砕け散った。


「やりましたね!」


 粉々になりカケラを空中で煌めかせる守護者の亡骸を見て僕は喝采をあげる。


「うーん。まったく戦いがいがない……」


 しかしフィオナは不満そうに言って直剣を鞘に納めた。


「この階層では得られるものがないと思う。次の階層に行こう」


「そうですか?」


 戦闘能力がダガー1本の僕にとっては一階層が丁度良いぐらいなのだけど勇者候補とも言われるフィオナにとってはここは退屈な場所にすぎないのだろう。


 僕とフィオナは二階層に降りる階段を見つけ下に降りた。


 二階層も石造りの暗い通路が続いていた。

 二階層からは守護者も反撃をしてくる。僕は二階層には降りたことがないので少しだけ緊張した。


「行こうか」


 僕は緊張で思わず固まってしまったが、フィオナはさっさと通路の奥へと足を進めた。僕は気を取り直し小走りでフィオナを追いかけた。




「次、次、次」


 駆け抜けるフィオナが通路を彷徨う守護者達を次々と切り捨てていく。僕はそんなフィオナを追いかけるのに必死で何も出来ていない状態だった。


「ちょっと待ってくださいー!」


「遅いよティモシー。もっと体を鍛えないといけないね」


 軽く笑いながらもフィオナは守護者を倒す動きを止めない。


「はぁはぁ、ちょっ、待って……、おえっ」


 休みなく走り続けた弊害か気持ち悪さと頭のくらつきが僕を襲った。地面に膝をつき口もとを押さえる。


 うっ、吐きそう。


「ティモシー、大丈夫?」


 顔を上げるとフィオナが中腰になり僕を心配そうに見下ろしていることに気づいた。


「だ、大丈夫です! まだまだ行けま……うぇっ」


「大丈夫じゃなさそうだね。ちょっと休もうか」


「そ、そうしてもらえるとありがたいです……」


 うう、情けない。

 僕とフィオナは通路の端に体育座りで座り込んだ。


「……」


「……」


 僕とフィオナの間に気まずい空気が漂う。僕は何を喋ればいいのか分からなかった。

 それでも意を決して口を開く。


「あ、あの。フィオナって勇者候補なんですよね?」


「そう言われてるね。私のお師匠が勇者をやってるからそう見られてるだけなんだけどね」


 へぇ、勇者の弟子だったんだ。


「……って、それは本当ですか!? 滅茶苦茶凄いじゃないですかそれ!」


「そう、かな。あまり意識したことはないよ。お師匠には感謝しているけどね」


 フィオナが少し恥ずかしそうにして左の横髪をくるくると弄った。


「ほぇー、勇者かぁ。凄いなぁ、僕だったら周りに自慢して回っちゃうかもしれません」


「私には……、自慢するような人はいない」


「え?」


 フィオナが暗い声色でボソッと呟く。僕は驚いてフィオナを見た。フィオナは顔をうつむかせていた。


「……」


 再び気まずい空気が僕らを包んだ。


「……そろそろ行こうか」


 フィオナが立ち上がる。僕は歩き始めたフィオナを見て慌てて立ち上がった。


「あっ、待ってください!」


 そして僕らは再びダンジョンを強行軍で進み始めたのだった。




 気づけば最下層である10階層まで来ていた。


「あ、あわわわ!」


 校則で一年生は二階層までしか降りてはいけないとされている。明確に校則違反を犯していた。

 僕は当然こんな深い階層まで潜るつもりはなかったのでパニック状態だ。


「フィオナ!」


 前を行くフィオナに向けて叫ぶ。


「これは流石にマズイです! 早く帰りましょう!」


 しかしフィオナは僕の言葉も意に介さず守護者達を倒しながらどんどん奥へと進んでいってしまう。


「大丈夫。死ぬ気で頑張ろう!」


 あ、ああああ! 死んでも蘇生出来るっていうダンジョンのルール! だからこんな無茶をしているのか!


「僕は死にたくないです!」


「大丈夫。もう終わりみたいだしね」


「え?」


 フィオナに続いて奥へと進むとそこは大広間になっていた。


「もしかして最終地点ですか?」


「そうみたいだね」


 ダンジョンにも終わりはある。それが最終地点と呼ばれるエリアだ。そこは未攻略のダンジョンならば一際強いダンジョンの主が存在している。別名ボス部屋。学園ダンジョンは過去に攻略済みのダンジョンなのでボス部屋はただ広い部屋があるだけになっているようだった。


「じゃあ帰ろうかティモシー」


「はい……。まさか一日でダンジョンクリアしちゃうなんて……」


 フィオナがさっさと踵を返して部屋を出た。僕もそれに続こうとした。

 その時。


<……こっちだよ>


 声がした。

 男か女か、老年か否かも分からないような不思議な声が僕の耳に届いた。


「え?」


 驚き、声がした方を向く。


「どうしたのティモシー?」


 フィオナが立ち止まった僕を訝しんで声をかけてきた。それを無視して僕はふらふらと歩き出す。


<……ここ>


 声は広間の側壁から聞こえてきた。僕は壁にそっと手を触れた。

 すると僕が手を触れた瞬間まるで初めからなかったかのように壁が消え、そこには通路が出現していた。


「えっ!?」


 フィオナが僕の方を見て驚いている。だけどそれは僕の意識に入らない。


<……こっちにおいで>


 ただ声に導かれるまま僕は通路に足を踏み入れた。


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