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第3話 フィオナ少しだけ怒る

「おいお前、ティモシーだよな!? その角と髪は一体どうしたんだよ!」


 友人達3人に僕は問い詰められた。


「魔族に先祖帰りしたんです」


 仕方なく白状する。


「魔族だって?」


 すると三人が露骨に顔をしかめた。


「知ってるぞ。魔族って神の敵だろ。最悪だなティモシー」


「お前は先祖まで落ちこぼれだったんだな!」


 いつものように馬鹿にされる。なんで魔族のことを知っているんだろう。僕は心臓が冷たくなっていくような感覚を覚えた。


「そんなことよりよ! あの美少女転校生と登校してきたのはなんなんだよ!」


 二人が魔族になったことを笑っていると一人が息巻いて僕に掴みかかってきた。


「美少女転校生じゃなくてフィオナです」


「そんなのどっちでもいい! なんで一緒に居たのか言え!」


 ギリギリと肩を力一杯掴んでくる。僕は痛みでもがいた。


「フィオナとパーティーを組んだんです!」


「なんだと!?」


「嘘つけ!」


「嘘じゃない! 期末テストはソロが禁止されているからフィオナと組むことになったんです!」


 僕の言葉に三人の顔が嫉妬に歪んだ。


「お前、フィオナとのパーティーを解消しろよ」


「そうだ、そうしろよ。じゃなけりゃ絶交するぞ。クソ魔族が」


「えぇ!?」


 絶交だって!?


「放課後、フィオナのとこに行ってパーティーの解消を言いに行くぞ。覚悟しとけよ」


 そういって三人は僕から離れていった。


「どうしよう……」


 僕の友達はあの三人しかいない。彼らに絶交されたら僕に友達がいなくなってしまう。だけどせっかくフィオナとパーティーを組めたのにそれを解消なんてしたくない。僕は決断を迫られていた。




 そして放課後。

 僕と三人の友達はフィオナの前にいた。


「ほら、言えよ」


 友達が僕の背中を強く押す。僕は前のめりに倒れそうになり、フィオナが受け止めてくれた。


「どうしたの? 大人数で来て」


「ええと、その……」


 フィオナが不思議そうな顔をして僕を見下ろす。

 僕は口ごもった。パーティーの解消なんて言いたくなかったからだ。


「ほら、早く言えよ! 僕はフィオナさんとは一緒にダンジョンに潜れませーん、てな!」


「早くしろ! 早くしろ!」


 友達が僕を急かす。


「う、ううう」


 でも僕は言いたくない。フィオナとの関係をなくしたくなかった。なら僕が決める選択は……。


「あなた達……!」


 フィオナが三人に苦言を言おうとしている。


「待って! 僕が言うから」


 それを遮って言った。


「ティモシー……」


 フィオナが心配そうな目で僕を見る。


「おっ、ついにフィオナに言う覚悟が出来たのかティモシー!」


 三人が嫌らしくニヤニヤと笑った。


「うん、覚悟が出来た……」


「なら早く言えよ」


 僕は決別する覚悟を決めた。それはフィオナにではない。友達だった三人にだ。


 僕は三人に向き合った。


「僕はフィオナとパーティーを組む! 絶交されてもいい! それでも僕はフィオナとパーティーを組みたいんだ!」


 言ってやった。三人に決別の言葉を言ってやった。


「なんだと……!」


 三人の顔が怒りで赤く染まる。


「この野郎!」


 一人が僕に殴りかかってきた。

 僕は喧嘩が出来ない。向かってくる拳からなすすべもなく顔を背けた。


 ……。


 痛みがない。

 目を開けるとフィオナが僕へと向けられた拳を受け止めてくれていた。


「よく分からないけど、ティモシーも大変だったね。もう大丈夫だよ。私が守ってあげるから」


 フィオナが僕の前に出て言った。僕は安堵でぺたりと床に腰を落としてしまった。


「離してくださいよ。これは俺たちとティモシーの問題なんで」


「そうはいかないよ。ティモシーは私の仲間だからね」


 フィオナが三人を睨む。


「「「ヒッ」」」


 三人が小さく悲鳴をあげた。

 美人が怒った顔をすると怖い。そのことを僕は初めて知った。


 拳を掴まれていた子が無理矢理手を振り払った。


「クソッ! 覚えてろよティモシー!」


 そして捨て台詞を残して三人は僕とフィオナから逃げていった。


「……、ティモシー」


「はい! なんですか!」


「敬語、やめない?」


「え、でも……」


「私たち仲間だよね?」


 フィオナが僕の目を真っ直ぐに見つめる。


「う、わかりま……わかったよ」


 その圧に負けて僕は敬語をやめた。


「ティモシー、これからよろしくね」


「うん、よろしく。フィオナ」


 こうして僕とフィオナはただのパーティーメンバーから仲間になったのだった。




「これから一緒に学園ダンジョンに潜りませんか?」


 三人が去った後、僕とフィオナは一緒に寮への道を歩いていた。


「ティモシー、敬語になってるよ」


「あっ、すみません。でももう癖になってるから無理です。名前は呼び捨てにするので許してください!」


「許すも許さないもないよ。分かった。癖なら仕方ないね」


 敬語は幼い頃からの癖で直しようがなかったから僕は安堵した。


「で、学園ダンジョンだけど今日は行けないかな」


「えっ、なんでですか?」


「前にも言ったように私は学園の外のダンジョンに潜ってるから。今日も行くつもりだし」


「でも一度ぐらい一緒に行きませんか?」


 僕はどうしてもフィオナと学園ダンジョンに潜りたかったのでねばった。


「うーん……」


 するとフィオナは困ったような顔をして横髪を左手で弄った。


「じゃあ明日は一緒に学園ダンジョンに潜るよ。それじゃダメかな?」


「それでいいです! いえ、お願いします!」


「ち、近いよ……」


 僕は尻尾を振る犬のように目を期待に輝かせたのだった。



 *



 そして次の日の放課後。

 僕とフィオナは学園ダンジョンのあるダンジョン棟の前にいた。


「ここが学園ダンジョンです」


「ふーん、小さいんだね」


 フィオナがダンジョン棟を見上げて言う。


 今日は僕もフィオナも学園ダンジョンの攻略に向けて見た目を一新させていた。僕は体にレザーの防具を身につけており、武器として腰にはダガーを装備している。フィオナは黄金に輝くプレートメイルを身につけ、腰には直剣を装備していた。なんだかとても強そう。


「学園ダンジョンは地下型ダンジョンなので地上部分のダンジョン棟自体は小さいんですよ。でも学園ダンジョンの内部はとても広いです」


「そうなんだ。じゃあとりあえず入ってみようか」


「はい!」


 僕とフィオナはダンジョン棟の中に足を踏み入れた。

 中に入ると学生達の列ができていた。その列に並び少し待つ。すると列が終わり受付のおばさんの前に出た。


「学園ダンジョンに挑戦するの? あなた達何年生?」


「一年生です」


「そう、なら入れるのは二階層までよ。頑張ってきなさい」


 おばさんから一年生用の探索許可証を二つ渡される。その内一つをフィオナに渡した。


「ティモシー、これなに?」


「これは探索許可証です。これが無いと学園ダンジョンの中に入れないんです」


「なるほど。学生を守るための仕組みなんだね」


 そしてまた列に並ぶ。今度の列は学園ダンジョンの中に入るための列だ。順番が来ると僕とフィオナは二メートル四方の青く輝く魔法陣の上に立った。


「一階層へと転送します。フィオナ、僕の手を握っててください」


「分かった」


 そして僕とフィオナは学園ダンジョンの中へと転送された。それが僕達の運命を一変させてしまうことも知らずに。


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