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なかよし姉妹

[死亡しました]

「30秒後にセーブポイントで復活します」

[最初の5回まではデスペナルティがありません]

[ただし、それ以降は死亡する度に所持金を5%と所持品からランダムで1つ(装備品含む)が失われます]

[残り初心者ボーナス:4]

くまにやられた後、私は霊体みたいな感じで死んだ場所の上に留まっていた。

さらに目の前にはいくつかのウィンドウが表示されていて、そこにはさっき書いたのが載っていた。

 ふーん、デスペナは結構キツめなんだね、気を付けよう。

 てか装備品も含むって服が選ばれた場合どうするんだろ。

下着姿で外に放り出されるのかな……流石にそれはないよね? ないと信じたい。

 しっかし強かったなーくま。レベルいくつぐらいになればあれを普通に倒せるようになるんだろ。

 公式サイトで現在解放されてるマップの適正レベルが載ってるみたいだからちょっと調べてみよっか。

 えっと、たしかフィールド名は『駆け出しの森』だったかな?

 ふむふむ……昼が4レベルで夜が……ナニコレ。


「あー、死んだ死んだ」

「はぁ……ホント疲れた」

 ほぼ同時に私たちはログイン地点と同じ場所に戻ってきた。

「てか聞いてよフウ」

「あ? なになに」

「さっきのフィールドの適正レベル調べてみたんだけどさ」

「お、どれぐらい上だった?」

「15だってさ。しかも4人パーティー推奨」

「は? なんだそれ、バケモンじゃん」

 うん、これは変な声出てもしかたないと思う。

 だってあの時の私の3倍だよ? えぐない?

「でもよ、そう考えると俺たち超すごくね?」

「わかる、ちょっとした英雄気分だよね」

 だって単純計算で強さ3倍だよ? しかもそれ4人パーティーの場合だし、極めつけは私町娘で純粋なパワーである『肉体』全部2だよ2。

 え、すごくない? 改めて書くと私たち超すごくない?

 でも今回の戦いではっきりとわかったことがある。

 ……町娘、マジで戦闘向かないわ。

 肉体2の圧倒的貧弱さ。足は動かんし攻撃は全部弾かれるしすぐ体力尽きるし。

 たぶん私が戦闘職選んでたらもっと楽だったと思う。

 やっぱりフィジカルな肉体の力こそパワーってハッキリわかるんだね。

「とりあえずフウ」

「ん?」

「……疲れたから今日はもう落ちよう、そして明日またやろう」

「だな、俺も賛成」

 明日は全力で料理を育てようかな、もう爆発はしたくないし。

「それじゃおやすみ、フウ」

「あぁ、おやすみ」

 2人同時にログアウトして、宿題をした後眠りについた。

 今日の感想、改めて私の彼氏最強だわ。


 翌朝、昨日は珍しく11時半っていう超早い時間に寝たからか6時に目が覚めた。

 いつも朝早起きしてランニングをしてるらしい凪にLINEを一本入れてから下に降りる。

 すると美少女がキッチンで卵を焼いていた。

「あれ、お姉ちゃんが早起きしてる……今日は雨かな~」

「なにさ、私が健康的だといけないの?」

「そんなわけないじゃん、やっとお姉ちゃんが普通になったのかと感激してるところだよ」

「おいこらそれどういう意味だ」

「あはは、なんでもありませーん」

 このクソ生意気でちょっとかわいいのは私の妹である(しおり)。中学2年生だ。

「あ、今日オムレツ?」

「うん、今日こそはお姉ちゃんの味を超えて見せる!」

「ふふっ、まぁ頑張りたまえ栞くん」

 私料理は普通くらいだけど卵料理だけは自信があるんだ。

 あの凪をしても「卵料理だけは勝てる気がしねえ」といわしめた私の腕。

 私みたいなゲームオタクと違って超絶リア充である我が妹はパーフェクト女子力を求めて去年からご飯を作るようになった。

 『姉より優れた妹はいない理論』を打ち破るべく、こうして頑張ってる次第でございます。

 だけどまあ私もそう簡単に負けてやるわけにはいかないので日々いろいろな勝負で栞を打ち負かしている。

 カードゲームやボードゲーム、あとはスマ〇ラにポ〇モンなどなど様々な点で白星を……え、なに? 全部ゲームじゃんって? ……いいじゃん別に、ゲームなら絶対勝てるんだもん。

「そういえばそのオムレツってプレーン?」

「いや、チーズオムレツ」

 チーズ、それは主に牛の乳などを醗酵させて作った食べ物で、その歴史をさかのぼると古代ローマにまで行きつく。そう、それはまさに人類の発展と進化の代名詞である存在。人類の繁栄には必ずチーズの影があったりなかったり……

 まぁとにかく何が言いたいかというと……

「愛してる」

「うわぁ妹に愛の告白してるシスコンがいるー」

「違うアンタじゃない、オムレツだよオムレツ」

「あはは、わかってるって。お姉ちゃんチーズ大好きだもんね~」

 私は、チーズが、大好きだ―――!!

 ん? どうしてこの作者の主人公はみんなチーズが好きなのかって? それは作者が一番好きな食べ物だからだよ!!

 ハッ!? 私は一体何を言って……何かに操られていたような……

「折角早起きしたんだし私もなんか作ろっかなー」

「へー、何作んの?」

「それは冷蔵庫と要相談っと」

 冷蔵庫をパカッと開けると、なんと卵が1つもなかった。

「ふっふっふ、残念だったねお姉ちゃん、卵はこれが最後の1個なのだ!」

「あ、そう」

 そう言ってごまだれーと卵を掲げる栞。

「そしてこれを……こう!」

最後の卵はパキッと小気味のいい音を立てて割れ、ボウルに吸い込まれていった。

「これでもうお姉ちゃんの得意料理は存在しない! さぁどうする?」

 なんか妹のテンションがおかしい、さっきからどうした。

「……じゃあ栞のオムレツ手伝おっかな」

「ちょ、そんなことしたらお姉ちゃんの料理になっちゃうじゃん!」

「んー、だったら栞の指示に従うだけにするよ」

「え、それ楽しいの?」

「何言ってんのさ、久しぶりに妹と料理するんだよ? 楽しいに決まってるじゃん」

「な、あ、その……」

 なんか栞があたふたしてる。かわいい。

「ささ、はやくやろうよ!」

 満面の笑みで言ってやる。いやーでも栞と一緒に料理するのホントに久しぶりだなー。いつぶりだろ……下手したら3年ぶりとかじゃない?

 そんなことを考えていると、ちょっと赤くなりながら栞が声を掛けてきた。

「お姉ちゃん……それ素で言ってる?」

「ん? そりゃあもちろん」

 なに、良いお姉ちゃんを作ってるとでも思ってるの? 私がそんな器用に見える?

「はぁ……お姉ちゃんやっぱり女の子にモテモテでしょ」

「いやいやそんなことないと思いたいけど……」

「でもよくお姉ちゃんがまだ中学生だったときとかよく同級生に言われてたよ?」

「え、どんなことを?」

 そう聞くと、やけに演技がかった口調で再現してくれた。

「『栞ちゃんって一ノ瀬先輩の妹さんなんでしょ?』『うん、そうだけど』『こ、これ渡しといてくれない!?』みたいな。後は『こ、これ』の後が『一ノ瀬先輩って超カッコいいよね! まさにお姉様って感じで! あの人の本物の妹なんて栞ちゃんいいなー』とか」

「え、マジ?」

「マジマジ」

 たまに栞が渡してくるあのラブレターの正体は女子だったのか……

でも、確かにたまーにだけど告白されるんだよね、主に後輩の女子から。え、私ってそんな感じなの? 周りの評価。

 でもごめんなさい。私にはそっちの趣味はないどころか絶賛交際中だから、最強の彼氏と。

「と、とにかくはやく作るよ! はやくしないとお母さんたち起きちゃうし!」

「あ、赤くなってる。かわうぃー」

「ちょ、ちょっとやめてよ」

 むう、妹にやりこめられた感ある。悔しい。

 その後は何事もなく作り終えて食べて家を出た。ちなみにオムレツは超おいしかった。


「おはよー凪」

「おう、今日はやけにスッキリした顔してるな」

「昨日は早く寝たからね。それに久しぶりに栞と料理したから」

「へー、何作ったん」

「チーズオムレツ」

「うわーいいなー。お前の卵料理マジで美味いんだよ、俺も食いたかったー」

 うわ、女子力お化けの凪にここまで言わせるとか私の卵料理、強すぎ……?

「それなら今日お弁当に入ってるし食べる?」

「マジ? いいの?」

「うん。代わりに凪もなんかちょうだいよ」

「うっし、なら俺はチーズハンバーグをやろう」

「神様」

 流石凪私の好みを完全に把握してる。

「てか男子にとっての肉料理とか超大事なんじゃないの?」

「いやいやお前の卵料理とは比べ物になんねえよ」

「あ、そういえば今更だけどこれ作ったの栞だけどいいの?」

 この言い方だと栞のはマズいみたいに聞こえるかもだけど全然そんなことないからね!

「いやいや栞ちゃんのも超美味いから。お前ら姉妹の卵スキルが高すぎるだけだから」

「あ、でもでも今日のオムレツは本当に美味しくってさ! そろそろオムレツは抜かれるかなーって」

「そこまで!? やべー、今日の昼が楽しみすぎる」


「ん? ん」

 あれから数十秒後、凪が私にも聞こえないくらい小さな声で呟くと、なぜか私の横から前に移動した。

「どったの?」

 今私たちは向かい合ってる状態になる。それで凪が後ろ歩きしてる。

「いやーでもさ、昨日のバトルマジ楽しかったよな」

「あ、わかる。あれはスリルあったよねー」

「でもあれだよな、これだけは言える」

「うん、だね」

「「もうやりたくない」」

あれは疲れるからね。すっごく。

「なあ幽良」

「ん?」

「後ろ」

「へ? どうい」

「わっ!!」

「うひゃああ!!!」

 後ろから大きな声で脅かされ、肩がビクッと跳ねる。

 しかも無様なことに悲鳴まで上げてしまった。

「「ぷっ、あはははははは!!!」」

「ふぇ、なになに!?」

 後ろを振り向くと、腹を抱えて大爆笑する慎吾と目が合った。

「ぷっ、くくく、うひゃあだってうひゃあ……ヤバイ、笑い死ぬ……」

「……」

「まさかあそこまでナイスリアクションをくれるとは……ふふっ、やべ、笑い止まらん」

「…………」

 前を見ると凪まで笑ってる。

 なるほど、このために前に移動したんだね。ばれないように。

「………………おい慎吾」

「あっはっはっは! はぁ、はぁ……な、なに」

「ぶっ〇す」

「うわ、怒った! おい凪! 逃げるぞ! ぷっ」

「あぁ、了解! くくっ」

「コロス! マジコロス!!」

 その鬼ごっこは学校に着くまで続いた。

 それで今日の授業中はずっと慎吾の足を全力で蹴り続けた。

 まさか慎吾が隣でよかったと思う日が来るとは夢にも思わなかったなー。ゲシゲシ。

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