怨霊系女子、町娘を目指す。
メインで書いてるヤツの筆休めで書き始めました。
これからよろしくお願いします。
ダダダダダッと私の持つサブマシンガンが軽快に火を吹き、敵を蜂の巣にしていく。
即座にサブマシンガンを捨ててダガーに持ち替え、事前に置いていた手榴弾に投げつけて爆発させる。
近くで漁夫の利を狙っていた相手の注意がそちらに向かった瞬間に視界から外れて裏を取り、背後から首チョンパ。
「後は3人……」
残りの人数を数え、潜んでいる可能性が高い所をマップでマーキングしていく。
武器は……そうだな、まぁレイピアでいっか。突進力あるし。
気配を消しながらマーキングした場所に向かっていると、左側から大きな銃声が1発聞こえてきた。
それと同時に残り人数が2人に減る。
よし、位置は覚えた。移動される前に突撃しよう。
そう考え速度を上げる。十秒ほど走るとプレイヤーの姿が見えた。
先に発見できたなら好都合。相手に狙いを定めてレイピアを投げ、即座に右に離脱し木影に身を潜めながら手榴弾を左側に投げる。
投げたレイピアが上手く相手の右足を地面に縫い付けた瞬間に爆発が起こり、相手は爆発した方を確認する。
そんな相手に冷静に狙いを定め、スナイパーライフルの引き金を引く。
吐き出された弾は相手の右目を貫通し、確実に即死させた。
「っしゃあビクトリー!」
今日も上手く1位になれた! なれたんだけど、最近はちょっと複雑なキモチ……
まず私の説明から入ろう。
私の名前は1ノ瀬幽来。花の女子高生だ。しかも入学したて、ピチピチの1年生。
私の趣味は、まぁ、その……FPSとかのサーチ&デストロイなゲームをすること。
特に中2の時にVR機器が発売されてからはそりゃあもうひたすらやり続けていた。
部活が終わって帰ってきたら即ログイン、ご飯の時だけ1旦止めて、それが終わったらまたゲーム、深夜1時ぐらいにやめてちょっと勉強して寝るみたいな生活を丸1年続けていた。
その結果、私はそりゃあもう強くなった。
名前を幽来の幽から取ってゴーストにしてるせいでネットでは「バーサークゴースト」だの「怨霊」だの「落武者」だのと言われるようになった。
でもそれも過去の話。
いや、まだFPSとかは大好きだし1日4,5時間はするけど、それでも減った。
なぜかというと、私には彼氏が出来たのだ。それはもうカッコよくて私みたいな女子じゃ釣り合わないぐらいのが。
普段はキリッとしててカッコいいんだけどふと見せる柔らかい笑顔がそれはもう可愛いのなんのって、これがギャップ萌えってやつ? それに彼ったら女子力も高いっていうね。料理はいつもそこらのレストランより全然おいしいし、たまに作ってくれるスイーツも可愛い装飾がついてたり……はっ、ヤバい、彼の魅力を語ったらそれだけで1万文字近くいっちゃうし、これぐらいにしとかなきゃ……
そんな彼の名前は風間凪。こんな私の趣味にも付き合ってくれる最高の彼氏だ。
でも最近、こんなことをふと思う。
いつも凪から誉められる時は「カッコいい」とか「すげー」だとか、なんというか、こう、男の子みたい? な感じなんだよね。
これでも私は女子の1人、彼氏には「カッコいい」より「可愛い」と言われたいお年頃。
私がこんな誉められ方をされる理由は何か? それは単純明快ただ1つ。
圧倒的に、女子力が足りない。
そりゃあ私の趣味はサーチ&デストロイなFPS系、プレイしてるときは「殺す」だとか「死ね」だとか「うにゃああああああ! 死んだーーーー!!!!!!」みたいな明らかに女子として終わってる声が平然と出る。
彼氏に「可愛い」と言われたい私は悩みに悩んだ。
……いやゲーム止めろよといわれたらそれもそうなんだけどさ、彼氏と1緒にゲームするのって、最高に楽しいんだよ。
そこで私は、あるファンタジー系のVRゲームを見つけた。
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モンスターとの戦闘を楽しむもよし、美しいファンタジー風の世界を回るもよし。
街で気ままに暮らしたり、人間の敵に回ったり、全てはあなたの選択次第!
『If you free』
好評発売中!
もうひとつの【現実】、もしあなたに時間があるのなら……1度覗いて見ませんか?
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なにこれ! 面白そう!
ホームページを覗いて見ると、そこにはもふもふしたモンスター? に囲まれながら幸せそうにしている人、黒いローブを纏ってニヒルな笑みを浮かべている人、多種多様なプレイスタイルが画像として乗っていた。
どうやらこのゲームはVRMMORPGの1種らしく、ステータスやスキル、職業など様々な所が数値化されてるようだった。
『職業1覧』という所を眺めていると、私のレーダーにビビッと来るものがあった。
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「町娘」
戦闘力をほとんど持たない、守るべき市民。
料理や裁縫など、生産系のスキルがとても上がりやすい代わりに『精神』と『機能』以外のステータスが5分の1になる。ただし魔法は1定以上に育つことはない。
初期の服が可愛い。
女性専用。
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「こ、こ、こ……これだーーーー!!」
私の失われた女子力は、これで取り戻していくしかない。
これでいつもの私の戦闘狂みたいなイメージを改善すると共に女子力をみせて彼氏から「可愛い」と言われてみせる!
そうと決まれば早速凪に電話しよう!
プルプルと電話を掛けると、2コール目で繋がった。
『もしもし、凪?』
『おー幽来、電話なんて珍しいじゃん。なんかあった?』
『いや、ちょっと声聴きたくて』
『なにその理由……俺の彼女かわいすぎかよ』
後半はボソッと、聞こえるか聞こえないかギリギリぐらいの声で凪が呟いた。
『っ!?』
可愛いって言われた! 目的は達成したし、この物語はおしまいかな! 完!!
いやいやなにいってんだ私、これで満足してはいけない。
もっと可愛くて自慢できる、凪に釣り合える彼女にならないと……!
『あ、その! 他に用事あるんだけど、いい?』
『もちろん』
『ありがと、実はさ、今度1緒にやってみたいゲームがあるんだけど……』
……どうでもいいけど、電話ってなんか緊張するよね、実際に会うよりも。
『へぇ! いいじゃん、幽来がオススメしてくれるの全部すっげー面白かったし、今回も超楽しみ!』
『!? あ、ありがと……』
ほんとこの人は、この人はぁ!! 私の彼氏最強すぎでしょ……
『で、どんなの? FPS? それとも接近戦系?』
あ、やっぱ私ってそういうイメージなんだね……まぁそういうのばっかやってるし当然なんだけどさ。
『ふっふーん、聞いて驚け、今回はなんと……』
『なんと?』
『ゆるふわ系ファンタジーです!!』
『は!? お前が!? マジで!?!?』
え、そこまで驚く? そんなに私ってバトルジャンキーなイメージ?
『なに……悪い?』
『いや、意外だっただけ。でもたまにはそういうゲームも確かにいいかもな』
『でしょ! それじゃホームページのURL送っとくね』
『おう、確認しとくわ。それじゃまた明日学校でな』
『うん、また……てもう0時過ぎてるし!』
『え、マジで?』
『マジマジ』
現在の時刻午前2時37分。こんな時間に話してくれるとかマジ凪大好き。
『うへぇ、お互い授業で寝ないようにしなきゃな』
『ふふっ、だね。それじゃ改めておやすみ、凪』
『あぁ、おやすみ』
見とけよ凪、明日から私のかわうぃい所を見せ付けて、見事「今日のお前超かわいいな」を引き出して見せる!
もうバーサークだとか怨霊だとか呼ばせない。絶対にね!!
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