3.Raffine
怒られちゃう?私、何かしたのかな?
と内心すごくどきどきしながらそよかさんについて行きました。
「あっ、ここ美味しいんだよ!」
「そうなんですね」
「お昼、ここで食べよっか」
そう言って、途中で紅茶屋さんとカフェに寄りました。
紅茶屋さんではバニラの香りがする紅茶を買っていて、カフェではそれを淹れてもらってパンを頼んでいました。
紅茶はバニラの甘い香りとすっきりした味でしつこすぎずさっぱりしすぎずのバランスがあいまって、とても美味しかったです。
お昼の時間だったみたいで、頼んでいただいたパンはどきどきしていたこともあってあまり食べる気になれずにいました。
「フルーツサンドイッチです。どうぞごゆっくり」
ぺこりと会釈をして、私はそよかさんに向き直ります。
すると、そよかさんがなんだか重そうに見える口を開きました。
「ねえ、乙葉ちゃん?」
「は、はい…」
なんだろう…?
心臓がばくばく言いながら次の言葉を待って。
「私たちと一緒に、Raffineで働いてみない?」
───働く?それって。
「ええと、私がRaffineでお洋服を売るってことですか?
私なんかが、良いんですか?」
怒られることでは無いことにほっとして、笑顔でそう言ってしまったかもしれません。
変な人だと思われていたら嫌だな…
「うん!さっき美樹さんと話しててね、乙葉ちゃんは、きっと服飾とかの才能があるんじゃないかなって。
どうどう?私たちと働かない?」
気づかれていないようでした。良かった~!
「でも、私なんかが………」
でも、私がそんな夢みたいなことをしても良いのでしょうか?
今まで物語の脇役だったような私が、こんな主役みたいなこと…
「私なんか、は駄目だよ乙葉ちゃん」
「え………?」
そよかさんが私の思いを見透かしたように、手を差しのべてくれました。
「やりたいって思うなら、そう言ってくれたら嬉しい。それだけのこと。ね?」
にこと爽やかな笑みを浮かべてそよかさんは言いました。
───でも私がそんなだいそれたこと……
そう考える私の脳裏にある記憶がふっと浮かびました。
それは、母が私に言ってくれた言葉。
『乙葉、自分の好きなことをやりなさい。
後悔しても、それは自分の糧になるから。』
いつも誰かの影に隠れていた私に、この街に出る勇気をくれた言葉。
だったら、私は………
「やります!Raffineで、働かせて下さい!」
そう言って勢い良く立ち上がると、そよかさんが私の服がコーディネートした服のままだったことに気がついてくれました。
そして、その着ていた服と小物、何品かの可愛い服をプレゼントしていただきました。
こんなに可愛い服を着られる日が、来るだなんて。
これからどうなるのか、とっても楽しみ。
こうして私の今はまだ知る由もない、
あたたかく優しい夢物語が始まったのでした。
焦り出した乙葉に、次回そよかと美樹が提案をします。