2.お部屋
「一応一通り説明は終わったわね。
そよか、乙葉ちゃんを部屋に案内してあげて?」
「はい、私はそよかと言います!
よろしくね、乙葉ちゃん!」
そう言って、そよかさんは私の荷物をさらっと持ってくれました。
私のお部屋は、玄関前の階段を上がって二階にある真ん中の部屋。
鍵がかかっていたので、開けてもらい入ろうとしました。ですが、扉には名前の書かれた看板が無かったので、
「少し待ってください」
とだけ言って、持ってきていた道具で作りました。驚かせてしまったかも………
楕円形の木にotohaと書いて、アンティークな装飾をして扉に飾らせて貰いました。
「出来ました!」
はにかみながら言ってしまったのですが、そよかさんはやはりとても驚かれたみたい。
ついに中を見られるのかと思うとドキドキしてきました。
「じゃあ開けるね」
「はい」
扉を開けると、真ん中には小さいテーブルに可愛いベッド、デスクと白いアンティークのチェストの中はまだ空っぽ。
トランクケースと置いてあった荷物をクローゼットの中に置いて、足りない物を作ることにしました。
「あの、足りない物を…」
「買いに行くの?」
なんでも言って、という風なそよかさんが、私にはとても嬉しいです。
「い、いえ…ちょっとだけミシンお借りしても良いですか?」
「あっ、分かった!持ってくるね!」
その間にレースのカーテンと無地のリボンをトランクケースから出しておきました。
そよかさんのミシンを小さなテーブルに置いてもらって、カタカタ…カタカタ…
そして、公園や街並みが見える白い枠の窓にカーテンを取り付けて、リボンのレースできゅっと結んで留めて出来上がりました。
「出来ました!」
「えっ、あ、ああ。」
黄昏ていたのか、戸惑ったように見えるそよかさんが私の目に映りました。
すると突然、私の両手を掴んで、
「乙葉ちゃん!ちょっと来て!」
何があるのでしょう?
♡♡♡
私がそよかさんに連れて行かれたのは、街を真っ直ぐいって街路樹や街路灯が立ち並び、コーヒーや紅茶の香りがあっちこっちからくる場所。
きょろきょろしながらついていく私に、そよかさんは「ここは◯◯屋さんだよ!」と説明しながらゆっくり歩いてくれました。
「乙葉ちゃん、ここだよ!」
急に止まって指を指されたのは、「Raffine」と書かれた看板と共に洋服がたくさん飾られているお店。
マネキンの洋服がまとまりがあって、かつ愛らしい女性の雰囲気を出していて素敵。
「ら…ふぃね…?」
「ラフィネって読むの!
さぁ、入って入って!」
ぐいぐい押されて中に入ると、お洒落で可愛らしいお洋服がたくさん並んでいました。
それから木で出来ている落ち着いた雰囲気の内観にジャズの音色があって大人の空間みたいです。
そこには、ついさっき見たような顔がありました。
名前は、確か……
「美樹さん?どうしてここに?」
「ああ、乙葉ちゃんにはまだ言っていなかったわね。
私はcloverの管理人の他に、このRaffineの店長をしているの。」
へえ、と感心していた私に疑問が浮かびました。
「えっ、どうしてそよかさんは私をここに?」
「ふふふっ、まあこっちに来て!」
押されるがままにカーテンの中のスタッフルームへ。
カーテンの中には、お店には飾られていないとっても可愛いお洋服がたくさんありました。
全部買ってしまいたいくらいだけれど、そこまでのお金も無いし………
「えっ…お洋服が、たくさん…?」
びっくりして、ちょっとしてから、そよかさんも入って来ました。
「乙葉ちゃん、この服から自分好みのコーディネートをしてみてもらっていいかな?」
「えっと……それは、どういう?」
「とにかくやってみて!
出来たら私か美樹さんに言ってね!」
そう言ってそよかさんはまたカーテンの向こうへ行ってしまいました。
言われたものはやるしか無いですし、そよかさんもなんだか忙しそう。
それから、やると決めて、2~30分くらいかかって、お洋服を選びそよかさんを呼びました。
「そよかさん、出来ました!」
シャっとカーテンを開けて、勇気をだして見てもらう。
コーディネートはこんな感じ。
───────────
花柄入りレジンバレッタ
レモン色オフショルダーのブラウス
白と桜色のフレアスカート
白レース入りニーハイソックス
薄底ブラウンショートブーツ
───────────
ブランド名や詳しい名前はよく分かりません。あとでそよかさんに聴こうと思っています。
それから、本当は白のブラウスにレモン色のトレンチコートにしようと思ったんです。
でも、春らしくふんわりとした色合いで柔らかくしました。
───可愛くはないかもしれませんが……
そう一人物思いにふけっている間にそよかさんと美樹さんは私のコーディネートをまじまじと無言で眺めて、二人で顔を見合わせて頷きました。
美樹さんが口を開いて
「ねえ、乙葉ちゃん?」
その口調は厳しいような優しいような、あまりよく分からない感じ。確かに、ほんの数分しか話をしたことがないので、分からなくて当然ですが。
えっ?もしかして、私、怒られる?
見て下さってありがとうございます(*^^*)
乙葉はそよかに手を引かれてどこかへ行く様子です。
どんなことに巻き込まれちゃうのでしょうか?