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絶対死なない吸血鬼  作者: 五月雨
序章 死なない者達
2/2

眷属

死桜の頼みを聞くため、城に上がらせてもらった。何人かのお手伝いの人がいた。長い通路を歩き続け、奥の広い部屋にやって来た。


「妹の頼みを聞いてくれて、ありがとうございます。私の名前はマリー・シーサイド。妹はネモフィル・シーサイド。」

「シーサイド?変わった名字だな。」

「シーサイドは、私の国の名前です。王族は国名を名乗らないといけないので。聞いたことはないですか。全ての海を渡り歩いた一族、私はその子孫です。」

「全然わかんない。俺はずっと孤島にいたから。」

「そうですか。では、一体頼みとはなんですか。私たちに出来ることなら言ってください。」

「この国の首都、ガーディンに行きたい。」


マリーは硬直した。


「あなたも、運命結晶を狙っているのですか。」

「いや、なにそれ。全然違うけど、俺はある人の封印を解いてもらうために、お願いしに行くんだ。」


マリーは、ほっと一息ついて死桜の頼みを承諾した。マリーもガーディンに用があり、ちょうど明日出発する予定だった。死桜を城に泊めて、明日の早朝に出発することにした。


死桜は客間を借りて一人になった。三階ということもあり、見晴らしが良かったため窓を開けて外を眺めていた。吸血鬼のため、死桜は夜目が効いていた。屋敷内に侵入しようとする不審者が見えた。


「五人か、屋敷の人だけで対処できるかな。一応行ってみるか。」


ガシャン。


窓が割られ、侵入してくる。屋敷の人達が一斉に集まる。マリーが侵入者たちに話しかける。


「何の目的でこんなことをしている。この城がシーサイド家のものだと知って侵入しているのなら、容赦はしないわ。」

「それはこっちの台詞だ。あんたらが明日、ガーディンに行かないと言うならば殺しはしない。」


互いににらみ合いながら、緊迫した状態が続く。周りの執事がマリーを守るように囲む。


「殺れ。」


侵入者のリーダーらしき人が言うと、執事の一人がマリーに剣を向けた。それに気付いた横の執事が、マリーを後ろに引き身代わりとなるように刺される。陣形が崩され、敵が一気に攻めてくる。執事たちが必死になってマリーを守る。


「マリーに死なれると、明日連れてってもらえなくなるよな。仕方ない、参加するか。」


死桜がのんびりと争いの真ん中に入る。


「ほらほら、喧嘩両成敗。終わりにしようぜ。」

「邪魔だ。どけよ、殺すぞ。」

「ぷ、ははははは、あはは。殺れるもんならやれ。」


侵入者が死桜をターゲットにして、全員で死桜の心臓や、脳、即死する箇所を剣で刺す。特に抵抗することもなく、おとなしく死桜が刺される。血を吐き、膝から崩れ落ちる。


「シザクラーーーーー!」


マリーの悲鳴が屋敷中に響き渡る。


・・・・・・・・・・・・


「バカかこいつ。自分から死にに来るとか、自殺志望かよ。」


「あははははははははははは、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」


死桜の笑い声が響き渡る。

吐いた血が死桜の体に戻る。その現象に怯える侵入者と、屋敷の人達とは逆に、当たり前のように死桜が話し出す。


「どうしたよ、殺すんだろ。やってみろって。」

「お前はなんなんだよ!化け物が!」


侵入者の一人が死桜に叫んだ。死桜は自分のネクタイを取り、首のボタンをはずした。今まで見えていなかった首が見える。首には黒く文字が書かれていた。どこの言葉ともわからない、まるで首輪のように首の周りに書かれている。


「黒い血文字?吸血鬼の、それも黒血の吸血鬼の眷族!」


マリーが文字を見て死桜に言った。あはは、と笑いながら死桜がマリーを指差す。


「残念だね。半分正解、半分不正解。」


棒立ちしている侵入者の剣を奪い取り、相手を無力化させる。ある程度の距離を取り、マリーの近くによった。相手の目立った武器はなく、こっちには数もいて全員でかかれば相手を倒せる。再びマリーが目的を聞く。


「王族の権利で運命神に会って、俺らの運命を変える。」


この国、フラワイズ王国には運命神という神を信仰している。運命神の見せる未来は、絶対に訪れるという話がある。


「俺らの死の運命を変えてもらう。そのためには、お前らの王族の権利が必要なんだよ。」


マリーは一歩前に出て言った。その顔は険しく、まるで子供を叱りつけるように言った。


「たとえどんな理由があろうとも、人の命を奪って良い理由はないのです。」

「てめえに何がわかんるんだ!」


懐にあった短刀を持ち、マリーに狙いをさだめ駆け出す。執事がマリーを守るよりも早く、敵の攻撃がマリーに届く。敵の服についている死桜の血のシミから、死桜の体が構成されていく。そして、敵を取り押さえてマリーに差し出す。


「どうやって移動したんですか。」

「ブラッディヴァンパイアは、一滴の血からでも体を再生出来るんだよ。」


こうして侵入者の一件は片付いた。


翌日になり、ガーディンに向けて出発する。


「そういえば、死桜の願いを叶えてくれるのは一体誰なんですか。」

「言ってなかったっけ?現フラワイズ王国の第二王子、ロズ・フラワイズだよ。」

「ですが、王宮に入るには王族の権利がないと謁見さえ、許してもらえませんよ。」

「ああ、大丈夫。王族の推薦状は貰っているから。俺の姫様から。」


死桜は一体何者なのか、死桜の姫はどこの者なのか、マリーの死桜に対する疑問が増える。

半日かけてガーディンについた。マリーが買い物に行くというので、死桜もそれについて行った。町の至る所に、運命神の教えが紙に書いて貼ってある。


「マリーは何を買いに行くんだ。」

「洋服です。一国の姫とは言え、ドレスしか着るものがないというのは、あまりにも女性としていけないと思います。」


死桜が知る、この世界の女性はマリーと、死桜の姫しかいない。死桜の姫の方は、孤島から出られないため服装に気を使うなど、考えもしないだろう。


買いに来たお店は、猫耳をした物静かな感じの女の子が接客をしていた。その子に勧められるまま、マリーが色々な服を見ながら試着室に入り、その都度死桜に似合うかどうか聞いた。


マリーが買い物を終えて、お店を出ると路地裏に一人の少女が連れていかれたのを見た。死桜は無視して王宮へ行こうとしたが、マリーがその路地裏に駆けて行った。仕方なく死桜も付いていった。少女に、神父のような服装をしている男が暴力をふるった。


「なにをしてるのですか!」

「この娘が運命神を侮辱することを言ったから、神罰を与えたまでのこと。」


少女の頬が赤く腫れ上がり、大粒の涙をこぼしながら言った。


「お母さんを殺した神様なんか大嫌いだ。」


神父がまた少女を打とうとした。死桜が神父の手を払い、少女に聞いた。


「お前の母親は殺されたのか。」


泣きながらうなずいた。


「何があったのか、詳しく教えてくれないか。」

「お母さんは、運命神の運命に背いて、必死に生きようとしたのに、騎士達がお母さんを殺したんだ。」

「当たり前だ。運命神の見せる未来は絶対なのだからな。」

「おい、クズ神父。少し黙ってろ。」


死桜は拳を握りしめ、神父の顔面を殴り付けた。神父の鼻が折れ、血を流しながら失神した。死桜は少女に笑顔で話しかけた。


「お前の母親はすごいな。神様に抗ったんだ。普通は出来ないことだ。お前は運命神なんか信じるな。お前のお母さんのした、神に抗う心を信じろ。」

「でも、もう私は独りだよ。お母さんも、お父さんもいない。」

「よし、じゃあ俺についてこい。こんな腐った国にいるぐらいなら、あいつのところの方がまだマシだ。」


そう言って少女の手を引きながら、マリーと王宮に向かった。


「そういえば名前聞いてないな。」

「わたし、ポポ・リエルア。お母さんが考えたの。」

「そうか。良い名前だな。」


ガーディンの中心に位置する大きい建物が、この国の第二王子の住まう王宮。


「マリーの用件は買い物だったのか。」

「いえ、私も王宮に行く用があったんです。運命結晶と呼ばれる、強力な魔法石があるんです。その結晶を多く持っている国が、運命神に一番良い未来を授けられるのです。ただ、私の国では結晶はあまりなく、奪い合いの争いを避けるために、同盟を結びに行くのです。」


この世界では、様々な国がより良い未来を手に入れるため、結晶を狙って争っている。一般の人も結晶を狙っているため、色々な所で争いが起こっている。


「そういえば、あいつって誰なの?」


ポポが死桜に聞いた。


「マリーも敵じゃないし、ポポの面倒も見てくれる人だから教えてもいっか。俺の姫様、チェルシー・ブロッサム。900年以上孤島に封印されてるから、あまりわからないか。三人の魔女の話はわかるか?」

「おとぎ話の?」

「そう。一人目の魔女は神様に嫁いで、二人目の魔女は長い眠りについて、三人目は人々に魔法を教えた。この話の二人目の魔女が、俺の姫様。自分の魔力を使ったことがないから、未経験の魔女ヴァージン・ウィッチって呼ばれてる。」

「死桜の姫って魔女だったの。」


マリーの驚いた顔に、死桜とポポはおかしくて笑った。

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