万色無能
「このスキル構成は・・・。」
「魔術と武術の両方が使えるのは良いが・・・これは使えすぎです。」
「せめてどちらか片方だったらよかったんだが・・・。」
「これだと成長が・・・」
「冒険者用のスキル以外は期待できないのが・・・。」
「ヴィンに何と言ったらいいか・・・。」
お通夜のような様相である。
(ワシがヴィンに魔法を色々教えたからか・・・。)
爺さんは色々な呪文を使えた。
初級呪文を教える端から全て使える様になるヴィンに調子に乗って知る限りの呪文を教えたのだ。
そうやって教えたのは爺さんだけではなく、他の四人も同じ様に教えていた。
だいぶ後になって判ることなのだがスキル鑑定時の数と幼少期の訓練は全く関係がない。
スキルは生まれた時に既に存在して、幼少期ではその効果が小さいだけなのだ。
だがこの頃は一般的に幼少期の訓練がスキルに影響すると考えられていた。
その結果
((((色々教えなければこんな結果には・・・。))))
「それはそうと、ヴィンにはどうやって伝えますか?」
母親のカティアが暗い顔でそう言ってくる。
冒険者のスキルを上げるには制限が厳しく、他の職業を有利にするスキルもない。
どちらを茨の道にしか思えない
「・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・」
しばらくすると祖父のボリスが
「ワシが伝えよう。」
「ヴィン。ちょっといいかい?」
「あ、じいちゃん。」
「・・・ヴィン。お前は冒険者になりたいか?」
「うん。」
「じゃが、これから話す事はその考えを改めることになるやもしれん。」
「なんだよ、じいちゃん??
・・・・・ぼくは冒険者になれない?」
「ふむ。そうではない。」
爺さんは少し息を吸い込むと話を続けた。
「お前の持っている“万色魔法”、“武術全般”それぞれ素晴らしいスキルだ。
それは判るね。」
「うん」
「じゃが、素晴らしいスキルと言う物は得てして何らかのペナルティがある。」
爺さんは話を続ける。
「そしてそのペナルティと言う物は厄介で、加算ではなく乗算される場合がある。」
「ヴィン。お前のスキルはペナルティで習得経験値が百分の一になるのじゃ。」
思えば冒険者としては成功しないと言われたに等しい。
だが俺は
「大丈夫だ、じいちゃん。人の百倍努力すれば何とかなるって!」
その言葉通り、百倍と行かなくても人よりも努力した。
だが、何年たってもスキルのレベルは上がることはなかった。
そしていつしか俺は“万色無能”と呼ばれるようになっていた。