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8話 合宿で迷宮へ



 銃の講義が終わり、食事をして夜になった。俺は公衆電話で静久に連絡を入れる。


「静久、俺だ」

『先輩、無事ですか?』

「もちろんだ。そっちはどうだ?」

『大丈夫です。何の問題もありません』


 言外に俺の言っている事を察してくれたのか、教えてくれる。どうやら、迷宮は問題はないようだ。


『そちらは問題ありませんか?』

「あ~」

『何かあるんですね。夫婦間で隠し事は無しですよ……答えてください』

「わかった。実は結衣が居たんだ……」

『そう、ですか……』


 静久の声のトーンが下がった感じがする。何か背中に冷や汗が流れる。


『それだけですか?』

「実は部屋も同じに……」

『なるほど。わかりました。ところで、結衣ちゃんは近くにいますか?』

「それは……居るな」


 後ろを振り返ると、身体を隠して顔だけ出してこちらを伺っている結衣が居た。


『では、呼んでください』

「わかった」


 手で来るように合図をすると、直ぐにこちらへとやって来た。


「静久が話したいって」

「ん、代わる」


 電話を渡すと互いに話出す。しかし、電話の内容を聞くのは不味いので外に出ておく。それからしばらくすると、話しが終わったようで代わるように言ってきた。その時の結衣は何処か機嫌が良さそうだった。


「静久、代わったぞ」

『先輩、話しはつきました。ある程度は彼女の好きにさせていいです。ただし、本番は駄目ですからね』

「どういう事なんだ?」

『いえ、色々と危なそうなので互いに妥協する事にしました。どうせ来年にはリナとレナも一緒になるのでしょうし』


 確かにそんな話だったな。本当にそうなるかはわからないが……結衣がそれに入るのか?


『まあ、彼女にも一年は黙っていてもらいますが』

「そうなのか?」

『はい。その間、私が先輩を独占です。ですので、無事に帰って来てくださいね』

「もちろんだ。っと、時間だな。また連絡する」


 自衛官の人が時間が来たと、いう事を教えてくれた。取り敢えず、言う事だけは言っておこう。


「元気で無茶だけはしないようにな。俺にとってはなによりも静久が大事だからな」

『もちろんです。でも、それは先輩もですよ』

「わかっている」


 最後には互いの無事を祈りつつ、電話を切る。


「ん、終わった?」

「ああ。それよりも明日は早いから寝るぞ」

「ん、了解」


 明日の予定は色々と忙しいらしいからな。しかし、一人で寝るのは寂しい。いつも、静久と抱き合って眠っているのでなんとも言えないものがある。





 ※※※





 朝、温かいぬくもり……静久を抱きながら目覚める。ん? 静久を? いや、居ないはずだ。それなのにこの感覚は……嫌な予感がして布団をあげてみると、そこには結衣が俺に抱き着いて眠っていた。


「ゆっ、結衣……」


 焦りながら、声をかける。これは色々と不味い。本来は通路を挟んだ隣のベッドで眠っているはずなのだが、もしも静久に……いや、これは大丈夫なのか? 一年間は手を出したら駄目だから、アウトか? いや、取り敢えず、起こそう。


「おい、起きろ」

「ん~~」


 身体を起こした結衣は眠そうに目を擦る。直ぐに俺にしなだれかかって、身体を擦りつけてくる。


「こんな事をして、大丈夫なのか?」

「ん、問題ない。居ない間、結衣のターン」

「そ、そうか……」


 取り敢えず、大丈夫そうなので起きて着替えるとしよう。着替えの準備をしだすと、何を思ったのか、結衣は堂々と服を脱いで下着姿となっていた。ただ、飾り気のないスポーツブラとスパッツだけだったが。


「ゆっ、結衣?」

「ん、どうしたの?」

「いや、着替えるならベッドのカーテンを閉めてだな……」

「兄さんなら、平気」

「いや」

「襲われてもいい。襲う?」

「待て待て、襲わないから脱ごうとするなっ!」

「ちっ」


 舌打ちをした後、さっさと着替えていく。呆然と見ていると、結衣はこちらを向いて無表情で話しかけてきた。


「迷宮に潜るなら異性の目なんて気にしてられない。違う?」

「そっ、それもそうだな……」

「そういう事。でも、兄さん以外に見せる気はない。安心した?」

「あっ、ああ」


 一応、納得して着替えていく。着替えを終えれば時間がやばかった。急いで集合場所に移動する。



 広いグラウンドみたいな場所に集まった俺達の前に近藤さんが現れた。彼女は部下に大量のリュックを持たせていた。


「では、これから訓練を始めます。まず、各自この荷物を持ってください。これは食料と水、医療キット、着替えなど必要な装備が入っています。これから、これを持ってトラックで迷宮へと向かいますが、それが最低限の装備だと思ってください。では、乗り込んでください」


 自衛隊の人からリュックを受け取る。それと銃を渡される。弾薬は入っていないようだが、変わりに錘が入っているようだ。俺はなんともないが、結衣にはきついかも知れない。


「大丈夫、多分」

「無理はするなよ。代わりに持ってやるから」

「ん、ありがと」


 そんな話をしていると、参加者の一人が錘を見つけて自衛隊の人に質問していた。


「この錘についてですが、これは弾薬の代わりです。迷宮に入れば配布するので、その重さだと考えてください」


 との事なので、それならば納得できる。取り敢えず、結衣を手伝いながらトラックに乗りこんでいく。





 トラックで移動する事数時間。途中で食事休憩と買い物の時間を取って山奥へと移動した。到着した場所は均されており、テントが複数立っていた。回りは有刺鉄線で囲まれており、戦車も配備されている。戦車の砲は山の方を向いている。さながら前線基地のようだ。いや、前線基地か。そんな事を考えながらトラックから降りて指示に従って並んでいく。


「では、ここでまずは班決めをします。好きな人と組んでください。命を預けるメンバーなのでしっかりと考えてくださいね」


 そんな事を言われると、参加者同士で互いを見ていく。俺は結衣と一緒になる。何人かの指定はないが、やりたい事もあるので二人だけでいいだろう。


「結衣、二人だけでいいか? 欲しい能力があるからな」


 俺の背中に隠れて他人の視線を避ける為に、しがみ付いている結衣に声をかける。


「むしろ、歓迎。人、嫌い。能力の選別は有効」

「そうか」


 取り敢えず、二人でやる事を近藤さんに言ってみるとしよう。


「近藤さん、俺達は二人でやりたいが、いいか?」

「出来たら最低、三人。最大六人がいいですが、理由は?」

「実は欲しい能力があるから、何度もやり直したい。そうなると他の人に迷惑を駆ける事になる。その点、彼女なら知り合いだから問題ない。そうだよな?」

「ん、問題ない」

「との事だ」

「いいでしょう。まあ、貴方なら身体測定の結果を見る限り問題ないでしょうし」

「ありがとう」

「いえいえ、頑張ってください。二人だと大変ですけど」

「ありがとう」

「では、そちらでテントを立ててください。そこがこれからの寝床になるので、しっかりと立て方を覚えてくださいね。これが説明書と二人用のテントです」


 テントを渡される。先程の言葉から、最初っから迷宮に潜るつもりのようだ。


「大丈夫?」

「ああ、問題ない。こっちだ」


 少し離れた所で受け取ったテントを立てていく。簡単に立てられるもののようなので問題ない。ドーム型のテントだ。しかし、テント以外にも排泄用の穴と排水用の溝などを掘ったりしないといけない。しかし、迷宮の効果か、体力がかなり増えているので簡単に掘れた。

 俺がそんな事をやっている間に、結衣が本を見ながら竈や料理の準備をしてくれる。

 そんな感じで俺達は順調に進んでいった。他の人達も取り敢えず、組めたようで順調にテントが立てられていく。その後は食事を行って仮眠を取るように言われた。






 仮眠からめざめ、テントを畳んで持つように言われて、連れて行かれたのは山肌に出来た洞窟だった。その中に近藤さんを先頭に入っていく。電気がつけられた洞窟の通路を進んでいくと、次第に開けた場所についた。そこは洞窟を潜った先だというのに広大な密林だった。ただ、夜なのでうっすらと月明かりのような光がふりそそぎ、周りを照らし出している。

 地面の方を見ると、コンクリートで作られた通路が見える。そこから戦車が道を通って戻って来たり、出て行ったりしている。少し離れた所には家の迷宮にもあった水晶が浮かんでいる。こちらも青色だ。


「さて、これが迷宮で一番大事な水晶です。皆さん、順番に触って貰います。触ると光が出るので、それを身体の中に入れてください。これで器が広げられます。では……」


 次々と人が並んでいく。俺は真ん中になるように結衣と共に並んでいく。順番がもう直ぐくるという所で結衣に話しかける。


「結衣、同時に触ろうか」

「ん、わかった」


 これで偽装が出来る。結衣と一緒に触る事で光が俺達を包み込んでくれるだろう。実際に触ると、光が結衣の身体へと入っていく。俺も胸を押さえて誤魔化しておく。これで問題ないと思う。近藤さんもニコニコしている。いや、これはばれているのか?


「さて、全員終わったので、これからここにもう一度野営地を作って貰います。その間に私は皆さんの為に狩りをしてきます。それによって皆さんの運動能力や得られる能力の質が上がるので、その後に本格的な訓練を開始したいと思います。では、護衛をお願いしますね」

「了解です」


 取り敢えず、テントを張る事にしよう。ちなみに近藤さんは一瞬で掻き消えてしまった。

 テントは直ぐに出来たので、話を色々と聞きに行くことにする。


「あの、ちょっといいですか?」

「なんだい?」

「あのコンクリートの地面はなんですか?」

「ああ、あれかい。ああする事によって地面の再生を防いでいるんだよ。そうしないと直ぐに復活してくるからな」

「なるほど、ありがとうございます」


 コンクリートを敷き詰める事で植物の再生を防げるなら、家でも使えそうだ。道があると遠くまで楽だからな。それから色々と話をきいていると、森の方から光が飛んできて俺達の身体に入っていく。どうやら、パワーレベリングが始まったようだ。







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