16話 新たな門出
本日二話目です
朝起きると左右に怜奈と里奈がいて、腹の上に静久が寝ているという超幸せな状況になっていた。
「おはよう」
「おはよう、ございます……」
「っ!?」
先に起きていたようで、二人は俺をみるなり真っ赤になって布団の中に隠れた。
「体調は大丈夫か?」
「平気、です。むしろ、身体が凄く軽いです」
「スッキリ爽快した気分だよ。今まで身体がだるかったのが嘘みたい」
「そうか。なら出て来て欲しいな」
「恥ずかしくて無理」
「ですね」
こんな話をしていると静久が起きてきて、俺に口付けをしてくる。
「うわ~」
「お姉ちゃん、大胆」
「昨日の姿もあれだったし……」
「え? なんで二人がここに……」
「思い出さないか?」
「あっ、そうでした……まあ、いいです。二人共、恥ずかしがってないで後で薬を飲んでもらいますよ。後、おはようのキスもちゃんとするように」
「えっと、お姉ちゃん?」
「そういうふうに教わりましたから」
「……お兄ちゃん、お姉ちゃんに何を教えたの……?」
「間違っていたんですか?」
「いや、そんなことはないぞ」
断言すると諦めたのか、二人共恥ずかしそうに俺の頬っぺたにキスしてきた。
「身体は渡したけど、心までは渡さないんだからね!」
「でも、怜奈は約束していたんじゃないの?」
「ただでいいって言ってたから大丈夫!」
「はぁ……じゃあ、代わりに私が支払いますね」
「里奈っ!?」
「どうせ目が見えない私は迷惑しかかけませんから、身体でお返しをします」
言い争っている二人を他所に静久はベッドから出て着替えを用意していく。
「二人共、私はこれから先輩とお風呂にいきます。どうしますか?」
「流石に恥ずかしのでパス」
「はい。後で入ります」
「わかりました」
二人がずれて俺を解放してくれる。もちろん布団に入って身体は見せてはくれない。
さて、風呂に入ったら静久に軽く殴られた。ぽかぽかという感じの駄々っ子アタックだ。
「静久?」
「先輩、嫉妬していないわけではないのは覚えておいてくださいね。終わったら私と必ずしてください。匂いを上書きしますから」
ぎゅっと抱き着いてくる静久を抱きしめてしばらくゆっくりとしてから、互いの身体を洗いあって湯船に入る。膝の上に乗せた静久を堪能しつつゆっくりとする。
「予想外です。こんな早くなるなんて……もう一年はほとんど二人っきりだと思ったんですが……」
「仕方ないだろう。今回のことは災害みたいなもんだしな」
「わかっていますが、それで納得できても感情としては……」
「俺が一番愛しているのは静久だ。それは変わらないからな」
「そっ、それなら許してあげます。あ、デートもいっぱいしますよ」
「落ち着いてからだな。やることがありすぎる」
「まあ、そうですよね。まずはなずなちゃんとお母さんをどうにかしないと」
「今はゆっくりと二人っきりを堪能しよう」
「そうですね。だったら、これを使いましょう。錬金術で作ったアロマキャンドルがありますし」
「それはいいな」
二人でゆっくりと楽しむ。しかし、静久からは良い匂いがするし、髪の毛を指で掬って匂いを嗅いでいく。
「んんっ!」
柔らかい静久の身体も堪能する。二人っきりでイチャイチャするのもいいもんだ。他愛ない会話をしたり、錬金術の話をしていく。
なずなちゃんとアンナさんが家に来てからしばらくすぎた。俺は姉妹達と肉体を重ねた日からもゆっくりと過ごしている。まあ、あれからはやっていないがな。一週間から二週間に一回くらいだ。なずなちゃんはある程度市販の義足で動けるようになったのでオリジナルの戦闘用の義足を準備しているところだ。
戦闘用の義足といってもぶっちゃけ錬金術で作り出す兵器だ。鉄製なので作った工房を使う。一応、炉も作ったし鎚も用意した。後は鉄を斬り落とす道具だったりも用意した。こうみると女が道具を錬金術で作って男が鍛冶の錬金術を使うとは本当にゲームのようだ。
まあ、あっちと違って機械系だけだどな。それに工作機械もちゃんと用意している。さて、金属は買って来た物を大量に手に入れたオークなどの魔石を砕いて粉にして溶かした物を静久の錬金術で金属を強化してもらった物だ。
これを特別な工作機械なども使って加工する。この工作機械は日本が魔石などを使って作り上げたものだ。これで加工するとダンジョンで効果を発揮しやすい。量産品だと効果はなくなるらしいのでスキル持ちの職人が手作りするしかない。もっともスキル持ちの職人が手をだしたなら大量生産はいけるので矢や弾丸は可能だ。
さて、設計図を作る。作るのは戦闘用のなので片方の腕は鉤爪のようにして掌の中心部には太陽花の魔石を埋め込んで砲撃が可能なようにする。これは浮遊砲台と同じシステムを採用する。つまり太陽の光をチャージして利用する砲撃だ。腕の部分は盾にもできるようにするのと、チャージ残量がわかるようにしておく。もう片方は普通の腕にして装備を持てるようにする。ちゃんと普段の作業もできるようにしておかなければならない。
次は足だ。膝から下がないのでしっかりとその辺を作る。どうせだから色々と仕掛けをしたい。足の裏とふくらはぎにブースターを取り付けよう。これでアクロバティックな動きができるといい。
改めて作った設計図から今まで試作した物を使って作る。オークの魔石を使って剛力(小)も付与して軽くなるようにする。両手両足が重くなるが、剛力(小)のお蔭で扱える程度にはなるだろう。もっとも、オークの魔石はもうなくなった。他にも色々な魔石を混ぜたのでどうなるかはわからない。
工作機械を使いつつ、失敗作を何度か重ねながら頑張っていく。失敗作は潰して作り直す素材にする。鉄を削って形を整え、部品ごとに制作する。少し削り過ぎると失敗となってやり直しとなる。二週間くらいでようやくできた。色々と詰め込みすぎただけだ。さて、できた物をなぎさちゃんに届けにいく。
「ちょっといいか?」
「どうぞ」
中から里奈の声が聞こえてきた。中に入ると怜奈もいて一緒に勉強しているようだ。
「(こんにちは)」
「どうしたの?」
「ちゃんとしたのができたから持ってきた。勉強中なら後にしようか?」
といってもすでに学校は休講になっているのでする必要がない。それにあの事件のせいで差別にあうこともありえるので別の学校にはいかないことにして通信教育にしてある。
「大丈夫だよね?」
「(平気)」
なずなちゃんはまだ声が出せない。だから義手で慣れないながらもスケッチブックに書いてみせてくれる。
「じゃあ、足を繋げるな。神経を繋げる時は痛いが我慢してくれ」
「(わかった)」
さて、足を繋げて試してもらう。苦痛に呻くが、しっかりと耐えてくれた。しばらく投薬を続けているが、だいぶましになっているようだ。しかし、俺が触れるとそれだけでやばいようだ。しかし、しっかりと接続しないと駄目なので我慢してもらう。
「どうだ? バランスとか悪ければ修正するからな」
「(大丈夫)」
「この両手、かっこいいけどバランス変じゃない?」
「武器を持つことを想定したバランスだからな」
「そっか」
「腕も試すか」
「(はい)」
腕も接続して実際に動かしてもらう。一応、大丈夫なようで嬉しいかぎりだ。だが、やはり細かい修正は必要なので要望と実際に動いてもらって調べないといけない。ダンジョンに行って戦闘のデータも取りたいが、今は運動してもらって耐久力なんかも調べて次の試作改良品を作る。かなり大変なことだが、俺にも使える技術なので頑張って鍛える。
「先輩の方はどうにかなりそうですね。嬉しそうに怜奈たちが話していました」
「静久の方は違うのか?」
工房で作業をしていると静久がコーヒーを持ってやってきた。受け取って飲みながら聞いてみる。
「こちらは先輩のを使って一定の成果はでましたが、他の人に与えるわけにはいきいませんし、問題ありすぎです。そろそろ先に進めないといけないですね。作ったポーションは里奈にはききませんでしたし……やはりダンジョン産のとは違います」
「確かに攻略を進めるための準備は着実にできている」
まず俺の武装の強化も順調だ。自衛隊の人と繋がりができたお蔭で銃器も使えるようになった。こちらも自衛隊から頼まれた武器の強化などもやっているのでお相子だ。
それに怜奈も里奈もなずなちゃんもダンジョンに行くつもりだしな。本当は行かせたくはないが、納得はしないだろうしな。オークの時もそうだが、勝手にダンジョンに行かれるよりはましだ。それに一つ狙いがある。
「三人はどうだ?」
「毎日ダンジョンで沢山狩ってくれています」
あれから毎日、車椅子になずなちゃんを乗せ、里奈と怜奈がダンジョンに入っている。もちろん、高台の部分までだ。そこから焼き払ってもらって経験値をためている。安全のためにヴォルフとセラもつけているので大丈夫だ。自衛官の人もいるしな。
「そうか。ならそろそろいいかもしれないな」
「はい」
里奈が失明したが、助ける方法が万能薬を使うこととドナーを待つこと。これ以外にも手段があるのだ。見えないなら見えなくても問題ないようにすればいい。三人にひたすら勾玉の回収をお願いしてある。メニューがでればそれを里奈に与える。他は視力が強化されるのを手に入れて与える。狙いは千里眼だ。それさえ手に入れれば視力がなくても問題ないだろう。
「里奈となずなのことがなんとかなりそうですし、ダンジョンを攻略して万能薬を手に入れましょう。お母さんのために万能薬が必要ですからね。できれば二つ、贅沢言えば三つ欲しいです」
里奈、なずなちゃん、アンナさんだ。三個あれば全員が治せるだろう。
「メニューがきたらもっとありがたいな」
「千里眼だけじゃ戦えないかもしれませんしね」
「そうだよなあ……」
「後、結衣も勾玉は欲しがっていますね」
「そうだろうな。結衣はあんまりこないしな」
仕事が忙しいんだろうが。日本のネットワークセキュリティーのアップデートに他の国の監視、出現したダンジョンマップの作製など仕事が多い。ちなみに国がガチで保護しているぐらいで常に護衛として近藤さん達の一人がついている。日本でもトップクラスの戦力を張り付かせているのだ。監視は一切していない。そんなことしても結衣にはばれるからだ。
他国の監視は海上が封鎖されているので問題ないかもしれないが、一応ということだ。自国がやばい時にミサイルでも飛ばされたら叶わない。
時たま、仕事に飽きてこちらにやってくる時は大いに構ってやる。もっとも、結衣ももうすぐこっちに引っ越してくるようだ。懸念だった彼女の祖父母も我が家とあちらの家が繋がることで事なきを得たのだ。そう、この辺り一帯は訓練所としても大きな建物が作られているからだ。ここは稼ぎやすいということで女性自衛官と結婚している男性自衛官しか受け入れない特別な訓練施設となっている。結婚していない男性は拒否させてもらった。静久達に手をだされた叶わないからな。
「しかし、結衣がこちらに来たら……面倒なことになりそうです」
「そうか?」
「私の席が奪われそうですから」
静久が机の下に入ってから俺の太ももの上に登ってきて、そのまま座る。つまり、ここが奪われるのが嫌なようだ。思わず喉を撫でてやると可愛らしく鳴いてくれる。
「結衣にも協力してもらうんだから我慢してくれ。それに……」
「わかっていますよ。彼女を妻の一人にするように先輩にいったのは私ですから。でも、これ以上は一切許しませんからね」
「わかってるよ。むしろ多いぐらいだな。三人でも十分なんだが……」
「なずなちゃんは責任を取らないといけませんから……本人もそれを望んでいます」
「自暴自棄なだけじゃないのか?」
「まあ、二人が説得しただけかもしれませんが……彼女なら私も構いませんから……」
確かに俺達が見捨てたら悲惨な目にあうかもしれない。しかし、社会復帰できるようになったら好きにさせてあげよう。そのころには一人で生きていけるぐらいの実力はあるだろうしな。
「俺が愛してるのは静久なんだがな」
「他の娘もちゃんと愛してあげてくださいね」
「わかってるよ」
しかし、なずなちゃんを受け入れたのは不思議だったな。いくら怜奈と里奈の友達とはいえ……あれ、うまいこといけば姉離れもできたんじゃないのか?
「どうしましたか?」
「なんでもないよ」
そもそも、静久はなんだかんだいっても二人に激アマだし、嫌われたくないから許可したのかもしれない。後はこれだと嬉しいが、俺に手足を無くしたという境遇が似ていたからか? まあ、どちらにしろ俺にとってはこの可愛い妻が全てだな。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん大変だよ!」
大慌てでこちらにやって来た怜奈が俺と静久の腕を掴んで引っ張っていく。
「どうしたんだ?」
「ダンジョンでなずなが大変なの!」
「義手とかが壊れたか?」
「とりあえず急ぎましょう」
慌ててダンジョンに入る。祭壇の前には呆然とする自衛官と里奈。そして眩い光を放つ繭みたいなもの。
「何があった?」
「その、いいのが出たのか女の子が勾玉を飲んだら……」
「つまりこれはスキルの影響ってことですね」
「どうなるんだ、これ……」
しばらく観察していると、光の柱が立ち昇って中から人型の何かがでてくる。まずは頭だけでてきた。黒髪をツインテールにしたなずなちゃんだった。
「確か、怜奈はなずなに里奈とわかりずらいからとツインテールにしてもらったって言ってましたが……」
続いて身体だ。身体は生身の身体に変化していた。義足ではない完全な手足だ。本当に綺麗だがおかしなこともないただの少女だった。しかし、無表情なままだ。
「なずな、大丈夫なの」
「肯定。システムチェックに問題無し……」
「喋った!?」
「治ったの?」
「肯定。スキルの習得と同時に肉体を再構築した」
肉体の再構築ってかなりとんでもないことだよな。これはとんでもないスキルだろう。
「なんのスキルを取ったんだ?」
「解答。自立型人型機械兵器」
「なにやってんの!?」
「うわー人間やめちゃったんだ……」
これは驚いた。こんなスキルもあるのか。
「大丈夫なのですか?」
「肯定。最高の気分。憧れだった」
そういって展開されるのは様々な武装。それに腕も足も義足と同じ物になっている。どうやら武装の展開時はこれのようだ。他にも色々と危険な武装があるようだ。明らかに未来的な装備もある。なんだかレーザーじゃなくビームな感じの兵器まで。
「エフェクトに不満。改定」
「変身シーンは大事だしね!」
「肯定。すごく大事」
何度も亜空間だろう場所からの武装の展開と収納を繰り返して変身シーンを作り出していく怜奈となずな。
「里奈、怜奈となずなちゃんって……」
「ゲームとか大好きですよ。なずなちゃんは機械系のアンドロイドとかエクスマキナとかが大好きです。よく二人でゲームの貸し借りとかもしていましたし」
どうやら中二っ娘だったようだが、ある意味ではあたりか。とりあえず万能薬の数が減った。
「しかし、なるほどこれは報告すると興味深いですね。獣人とかもなれるかもしれません」
「あ~これは本部に伝えさせてもらいますね」
「お願いします」
しかし、エクスマキナか……あれ、結衣だったらコントロール奪えたりするのか? もし敵にいたらやばいことになりそうだな。
「なずなちゃん、悪いが詳しく性能などを教えてくれ。下手したらかなりやばいことになる」
「肯定。当機のスペックを知りたいのなら、マスター登録をする」
「マスター登録?」
「肯定。開始」
いきなり唇を奪われた。そのまま舌を入れられて唾液を吸われた。
「DNAによるマスター登録を完了。これより当機の所有権はマスターに移る。契約は履行した」
「えっと……」
「ひょっとして、身体で払ってもらうっていってましたからこれになったんじゃないですか?」
「肯定。生きながらえさせた責任はとってもらう。辛い事は全部上書きして忘れさせてもらわないといけない」
リアルで機械娘か。俺としてはいいが、静久は……あ、問題ないみたいだ。興味深々のようでなずなの身体を触っている。
「先輩、先輩」
「なんだ?」
「この子、宝の山です! 錬金術師にとっては秘宝ですよ!」
「ほほう」
俺も一緒になって調べる。それはもうくまなくと……と思ったら里奈に叩かれて正気にもどった。まあ、解析はさせてもらうが……嬉しい誤算だ。しかし、これからなずなをどうするか本当に考えないといけないな。




