僕の彼女は永遠にそばにいる
彼女は、ずっと僕のそばにいる。僕は、ずっと彼女を見つめている。
たまに、彼女に話しかけることもある。けれども、彼女は決して答えを返すことはない。それは当たり前のことではあるが、僕はつい言葉をかけてしまう。
彼女は一切食事をしない。だから、恋人同士がよくやるような「あーんして、ほら、あーん」みたいなイチャイチャはできない。僕はいつも、彼女のそばで孤食だ。
彼女はいつも同じ服を着ている。不憫だからって、人目を忍んで女性ものの服を買ってきたこともあった。でも、彼女に着せることはできない。
彼女は常に眠っている。その寝顔は天使のようだ。でも、本当なら苦痛で歪んでいてもおかしくないはずだ。
彼女はとても冷たい。性格が冷たいというわけではない。いや、そんな一面もあった。でも、それは、おふざけでデートの時間に遅れてくるとか、そういう他愛のないものだった。
今の彼女はとにかく冷たい。彼女のぬくもりを感じたのは、はるか昔のことであった。
今日も、僕の家にとある業者さんがやってくる。毎日、彼女のためにあるものを仕入れているのだ。もちろん、その費用はとてつもない。でも、彼女のためだ。彼女が永遠の存在でありうるのなら、それは厭わない。
彼女とは、もうずいぶん前にお別れをするはずだった。不治の病を患った彼女は余命幾ばくもなかった。僕は、必死で彼女の回復を望んだが、結局それは叶うことがなかった。
そんな折、彼女を永遠の存在にする方法を持ち掛けられた。僕は迷わず、首を縦に振った。
思えば、これが本当に正しい選択だったのかと思う。でも、僕の心にぽっかりと空いてしまった穴を塞ぐには、これしかなかった。
もしかしたら、彼女は恨んでいるかもしれない。でも、こうでもしないと、今度は僕が壊れてしまう。
どうか、許してくれ。乞うように、冷たい彼女の素肌を撫でる。
いわゆる冬眠と同じ状態だろうか。仮死状態のまま、急速冷凍保存。そんな状態なのが、今の彼女だ。
ジャンルは迷いましたが、その昔、「特命リサーチ200×」で人間の冬眠計画みたいなのをやっていた覚えがあるので、SFにしました。