表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

即興小説トレーニング集

僕の彼女は永遠にそばにいる

作者: 橋比呂コー

 彼女は、ずっと僕のそばにいる。僕は、ずっと彼女を見つめている。


 たまに、彼女に話しかけることもある。けれども、彼女は決して答えを返すことはない。それは当たり前のことではあるが、僕はつい言葉をかけてしまう。


 彼女は一切食事をしない。だから、恋人同士がよくやるような「あーんして、ほら、あーん」みたいなイチャイチャはできない。僕はいつも、彼女のそばで孤食だ。


 彼女はいつも同じ服を着ている。不憫だからって、人目を忍んで女性ものの服を買ってきたこともあった。でも、彼女に着せることはできない。


 彼女は常に眠っている。その寝顔は天使のようだ。でも、本当なら苦痛で歪んでいてもおかしくないはずだ。


 彼女はとても冷たい。性格が冷たいというわけではない。いや、そんな一面もあった。でも、それは、おふざけでデートの時間に遅れてくるとか、そういう他愛のないものだった。

 今の彼女はとにかく冷たい。彼女のぬくもりを感じたのは、はるか昔のことであった。


 今日も、僕の家にとある業者さんがやってくる。毎日、彼女のためにあるものを仕入れているのだ。もちろん、その費用はとてつもない。でも、彼女のためだ。彼女が永遠の存在でありうるのなら、それは厭わない。


 彼女とは、もうずいぶん前にお別れをするはずだった。不治の病を患った彼女は余命幾ばくもなかった。僕は、必死で彼女の回復を望んだが、結局それは叶うことがなかった。


 そんな折、彼女を永遠の存在にする方法を持ち掛けられた。僕は迷わず、首を縦に振った。


 思えば、これが本当に正しい選択だったのかと思う。でも、僕の心にぽっかりと空いてしまった穴を塞ぐには、これしかなかった。


 もしかしたら、彼女は恨んでいるかもしれない。でも、こうでもしないと、今度は僕が壊れてしまう。


 どうか、許してくれ。乞うように、冷たい彼女の素肌を撫でる。


 いわゆる冬眠と同じ状態だろうか。仮死状態のまま、急速冷凍保存。そんな状態なのが、今の彼女だ。

ジャンルは迷いましたが、その昔、「特命リサーチ200×」で人間の冬眠計画みたいなのをやっていた覚えがあるので、SFにしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。「僕」が切なくて…。もう目覚めることのない人と永遠に一緒というのは、寂しくて悲しいですね。
2014/11/15 20:06 退会済み
管理
[一言] 冷たいと言うところでピンと来ましたがやはり冷凍保存でしたか。不気味でもあり切なくもあります。
2014/11/15 17:58 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ