表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
思想転移  作者: 友祈
2/3

【エピソード2】

学校へ着き教室の扉を開くと、案の定自己紹介中だったようで全員の姿勢が鋼へと向いた。それを追うような形で一つの声が俺に向かって飛んできた。


「入学日から遅刻とはどういうことだ?」

「すいません。入学式の前に自己紹介があることを忘れてしまっていて……」


その声の主はどうやら少し年のいった先生のようだった。

投げかけられて当然のその言葉に鋼は素直に謝罪した。


「事前に確認はしなかったのか……まぁいい。座りなさい。」


やれやれと言った表情でそう告げられ、鋼は席へとつく。

そして、鋼が席へとつくのを確認すると先刻の先生が話し始める。


「それじゃあ、全員が揃ったところで改めて……私は田沼沖久。君たちのクラスを受け持つことになったものだ。教科は数学を担当している。これからよろしく。」


田沼沖久と名乗った教師は軽く自己紹介をしたあと、順に自己紹介をしていくように生徒へ告げた。

田沼に言われたとおり次々に自己紹介が始まった。

特技や、趣味など積極的に言っていく者。名前だけを告げ、さっさと席へと着いてしまう者。それぞれだった。


「池浦葵那、趣味はメールすることです。人付き合いは得意ではありませんが、なるべく皆さんと仲良くしていきたいと思っています。よろしくおねがいします」


――あの子。今時、メールが趣味なんて珍しいなぁ。


葵那と名乗った少女は、スマートフォンが普及し様々なコミュニケーションツールが発信されてメール機能を使うものが減ってきている中、現代の子には珍しく未だにメール機能を使用しているようだった。

そんなことを考えてるうちに鋼の番がやってきた。


――うわぁ、何言おう……?適当に名前だけでいい……よな?目立ちたくないし。


鋼が席から立ち、喋りだそうとした瞬間一つの声に遮られる。


「桐生、お前は自己紹介の前に今日遅れた件についてこの場で反省を言ってもらう」


聞き覚えのあるその声の主はやはり、このクラスの担任になったという田沼と言う教師のものだった。

周囲からざわめきが聞こえる。


――この場で反省とか……小学生じゃねぇんだから…田沼先生、恨むぞ……!


「入学式の日から遅刻してしまい、申し訳ありませんでした。これからはこのような事がないようにします。」


少々の苛立ちを見せながらも鋼は渋々反省を言った。


「当たり前だ。高校生にもなって遅刻など本来ならしてはならないことだ。これからもあってもらっては困る」


鋼の言った反省に対し、田沼は淡々と返す。

鋼は内心、怒鳴りたい衝動に駆られたがなんとかそれを抑え、自己紹介へとうつる。


「えっと……桐生鋼、趣味は特にありません。話しかけられればそれなりに返しますが、基本的にはあまり話す気はありません。」


鋼はそう言うとさっさと席へとついた。

周りからは「何あれ、冷めてんなぁ」「感じ悪~い」などと言った声が聞こえるが、気にするつもりはなかった。


――俺はただ、静かに過ごしたいんだよ。誰に何と言われようとね。


その後、何人かの自己紹介を聞き終えたところで入学式へと急いだ―――――


入学式が終わり、クラスメイト達が各々「一緒に帰ろう?」など誘い合っている中、朝の自己紹介のおかげか鋼は誰にも誘われることなく、一人教室を後にした。


――初日から色々あったけど、明日から普通に授業受けるんだよなぁ。中学範囲の復習テストとかありそうだし、復習しとくかな?でもやっぱり、受験生じゃあるまいし、入学式の夜くらいゲームして遊ぼうかな……


「あの……」


明日の授業に備えて、勉強するべきか、疲れた体をゲームなどして癒すべきか迷っていると、後ろから声を掛けられた。

振り返るとそこには、今朝の自己紹介の時に葵那と名乗った少女が立っていた。

自己紹介の時はあまり見ていなかったが、よく見るとかなりの美少女だった。

長く伸びた黒色の髪、パッチリとした青色の目、くびれのできた腰から伸びる足はとてもすらっとしていて思わず見とれてしまいそうになる。

なにより、かけている赤色の眼鏡が青色の目に似合い、とても明るい印象を感じさせた。


「えっ?えっと……俺?」

「あ、はい。そうです。確か、桐生鋼君ですよね?」

「そうだけど……何か用?」


葵那は少し考える仕草をしたあと、再び鋼へと視線を戻し一言言い放った。


「メール……たまには見た方がいいですよ」


「えっ?メール?メールがなに……」


突如言われた一言の意味が理解できず、聞き返そうとするが、彼女はそれだけ告げると去ってしまったようだった。


――たまにはメール見ろって……メールがなんなんだよ。


鋼は疑問に思いつつ、カバンに入れていたケータイへと視線を落とす。

そして、メールの受信履歴画面へとうつると、1件の新着メールが届いていた。

どうやら、サイレントマナーモードにしていて気がつかなかったようだ。


――メールってこのことか……でも、なんでメールが届いてるって分かったんだろう…?着信音とかはなかったはずなのに……


疑問に思いつつ、再びケータイへと視線を戻してみると、どうやらアドレスに登録していないものが送ってきたようで名前ではなくアドレスが表示されていた。


――こんなメアド見たことないぞ……


鋼は少し開けるの躊躇したが、放置してもしょうがないと思い開けることにする。


――件名:無し――

――本文:無し――


「なんだこれ、空メール?いたずらか?」


メールの本文はなく、どうやらいたずらメールのようだった。


――誰だよ。こんなメール送ってきたの。あの、池浦って子か?


鋼は疑問に思いつつ、帰路へと急いだ。


このメールがこの後に起きることに深く関わっていることなど知らずに――――

今回の話でようやく話が少し進んだ感じです。

進行が遅く申し訳ありません。次回からはなるべく早く進めていくつもりですのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ