町へ
町へ案内…というか、連れてって貰う道中、私は自称冒険者改め冒険者の二人に様々な事を尋ねた。
ちなみに、なぜ自称が抜けたかというと、冒険者カードというものを見せてもらったからだ。
なんでも偽造とかが出来ないように特殊な方法で本人登録をしているらしく、身分証明にもなるらしい。
どうやらこの世界はゲームのようにレベル制らしく、二人のレベルや職種の欄も見せてくれた。
どこの馬の骨かもわからない私に対してそこまで大っぴらに明かしてもいいのか?とも思わないでもないが…。
二人が悪人にころりと騙されたりしないか心配である。
それはともかく、二人はそれは親切にこの世界の常識を教えてくれた。
まず、この世界は大陸だけしかないということ。
どこから来たんだ?と誰かに尋ねられて、大陸を越えた島から来ましたなんて言う前で助かった。
その場で怪しい人物として捕らえられかねない。
次に国の名前。
エリザ婆さんの言うように三国で成り立っているようだ。
一番大きな国が人族の王が束ねるアトラス。
その隣に教皇と呼ばれる教会の最高権力者が束ねるエルストア。
もうひとつはエルフと呼ばれる妖精族だけが住むラルナミリアらしい。
ラルナミリアは巨大な森に覆われているし、エルフ自体が外との交流をあまりよしとしないらしく、二人も行ったことがないらしい。
私も多分行くことは無さそうだし、舌を噛みそうな国名なので、頭の片隅に記憶するだけに留めておいた。
次に通貨。
銅貨、銀貨、金貨、大金貨、水晶貨が存在するらしく、銅貨一枚でパンが買えるくらい、銀貨五枚で宿に泊まれるくらいと言っていた。
銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚、といったように、十枚単位で貨幣が変わることから、銅貨は100円位で銀貨は1000円くらいだと推測できる。
あと大事なことだけど、この世界では戦争は起きていないらしい。
前に起きたのが数百年前とのことなので、今は平和な世の中なのだろう。戦死する心配は無さそうで安心した。
「とりあえずこれくらいか。アヤメ、お前こんなことも知らないなんて一体どこの田舎から出てきたんだ?っと、わりぃ。人それぞれ事情ってもんがあるよな」
「ジン、失礼」
「いや、大丈夫ですから…」
なんだか二人とも可哀想な子を見るような目を向けてきてるんだけど…いちいち否定するのも面倒なのでそのままにしておいた。
どういう想像をしているのか、非常に気になるところではあるが。
「お!見えてきたぜ!あの町がアトラス国のカランだ!」
暗くなりかけていた空気を払拭するかのようにジンさんが明るい声で指をさした方向には、遠目でも大きいとわかる町があった。
やっと町…恋愛要素はどこに?
もう二話程お待ちください。