はじめてのサバイバル?
自称冒険者の二人が「夜営をするけど一緒に…」と言ってくれたので、それにありがたく乗らせていただくことにした。
歌を歌いながら闇の中をさまようのは御免だ。
まぁ、その歌のお陰で私を見つけてもらえたようなので、ラッキーだったと言えるかもしれないが、複雑な心境である。
目の前で薪の火がはぜるのを見ながらウトウトしていると、ジンさんが尋ねてきた。
「それであんたはこんなところで何してたんだ?訳のわからん歌を歌ってたみたいだけど…」
「森から出て町へ行こうと思ったんですけど道がわからなくて…あと、あの歌は私の国では知らない人がいないくらいの名曲です!」
「……」
「……」
何故に二人は唖然としているのだろうか?
日本の皆さん、ごめんなさい。私のジャイ○ン並みの歌唱力では名曲だとは信じられなかったようだ。
「おいおい、森ってすぐそこの魔物の森のことか!?よく無事だったなぁ…」
「あの森の魔物は強い。見た目に騙されて寄っていくとすぐ食べられて死ぬ」
「はい?あの子猫もどきのことですか?私の一蹴りで倒せたんですけど…」
「……」
「……」
どうやら私は異世界に来て人外な力を手にいれてしまったらしい。
二人が信じられないものを見るような目で、まじまじと私を見ているのだから、その予想はあながち間違っていないだろう。
怯えられるか?と思ったが、その心配は杞憂に終わった。
そして、名曲は名曲として受け入れられたようで一安心。
本当のところはどう思っているか不明だけど。
「嬢ちゃん‥すげぇんだな!あの魔物はギルド指定でBランクの魔物だぜ!俺達でも今日三匹仕留めただけだ!」
「凄い。何匹仕留めたの?」
ここは正直に言うべきだろうか?
出来れば目立ちたくはないのだけど…キラキラした目を向けてくる二人に嘘をつくことが出来る程、私は純粋な好意や興味の視線に慣れていない。
悪質な視線なら養ったスキルでのらりくらりとかわせたものを…
「‥‥えっと、多分25匹くらい?数えてなかったから大体ですけど…」
「…それは…すげぇな。なあ、あんた俺達のパーティーに入らないか?」
「私も賛成」
「お断りします。冒険者になる気はありませんので…」
きっぱりと断ったことで項垂れてしまった二人には申し訳ないが、命のやり取りが当たり前だと思われる冒険者なんて御免だ。
二度目の人生くらい平凡に送りたい。
人はいずれ死ぬものだけど、出来れば寿命を全うしてがいい。
一度目があんな死に方だったから余計に…。
疲れていたのだろう。そんなことを考えていると、強烈な睡魔が襲ってきて…私は意識を手放した。
翌朝、眩しさで目覚めた私はジンさんが用意してくれたというスープをありがたく頂いてから、二人と共に近くの町へと歩を進めることにした。
案内してくれる人がいるというのはなんと素晴らしいことだろうか!
(エリザ婆さんよりよっぽど常識とか地理とか詳しそうだしね。本当にエリザ婆さんの知識は魔法以外役に立たないというかなんというか…)
溜め息をつきながら私は二人の後を追って歩き出した。
一宿一飯の恩といってはなんだけど、子猫もどきが現れたら私が倒そうと思いながら。
ちなみに用意してくれたスープは相変わらず食欲がなくなるような色の野菜のスープに何かの干し肉も入っていて、二年ぶりに食べる肉に、こっそり感動の涙を流したのは秘密である。
次は町です。
恋愛要素はあと三話程お待ちください。