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その四 待ち人。

ついにあの青年の登場!

といってもまだわからんが。

 ……オーシツクツク、オーシツクツク……



 今日はいつもとは違う蝉が鳴いている。

 そして、違うのは蝉だけではない感じがした。

 簡単にいえば違和感だが、それとはまた少し違う。確かに違和感なのだが違う。なんというか……そう!懐かしくて優しい感じだ。

 人間でいえばおじいちゃんおばあちゃんに会うとか、親戚に会うだとかそんな感じだ。

 といっても私に家族はいない。友達もいるかどうかすら危うい私にそんなことを感じるはずは無いのだが……。

 そんなことを考えながらお賽銭箱の上に腰を掛け足をぶらぶらさせている私。

 端から見れば罰当たりだが、この神社はもともと私たちお稲荷様を崇めている神社なので元から罰も何も無い。

 そうして座ってボーっとしていると一人の青年が階段を走りながら上がってきた。

「!!??」

 私はその青年の顔を見た瞬間驚きのあまりお賽銭箱ごと後ろに転ぶ。

 そんな私を見て青年は笑いながら走って来た。

「おーい!大丈夫か?」

 私は彼を見ると彼は笑っていた。

「遅くなってごめん」

「バカッ!!遅すぎ!!危うく待ちくたびれるところだった」

 すると彼は少し困った顔をして微笑んだ。

「そこ笑うとこじゃないんだけど……」

「まぁそんな怒るなよ。悪かったって」

「じゃなんでこんな遅れたの?」

 すると彼は本当に困った顔をする。

「うーん、どう説明をすればいいのか」

 彼はブツブツ呟きながら転んだままの私の手を引っ張って起こしてくれる。

「最初から説明して?」

 すると彼は予想以上に早く答えた。

「最初がどこか検討もつかん!」

「自信満々に言うな!」

 彼は何故かニッコリ笑った。

「なんで笑うの?」

 心の底から疑問に思って聞いてみる。

「そりゃ、カナちゃんが元気でいてくれたからだろ?」

「またその名前で呼ぶ!」

「ごめんごめん、白神 叶ちゃん」

 嫌がらせのような笑顔なのに何故だか心の中では楽しく思う。これはMではなく、ただ単にこのやりとりが懐かしくて嬉しいのだ。



 ―パンパン―

 二人して笑っていると彼の後ろから見覚えのない女性が歩いて来た。

「まぁ、感動的な再会は良いんどすがそろそろ本題に入らな間に合わんどすえ」

 その人は京都弁?を喋る女の私から見ても美人といえるくらいの人……いや、妖怪だった。

「あら、早速招待を見破ったようどすなー」

 この女性はたぶんだが、人間と妖怪のハーフだろう。まず雰囲気がまったく人間のものではない。かといえばニオイは人間のものであるからたぶんハーフなのだろう。

「そうだな、そろそろ準備を始めないと間に合わないな」

 今回彼は私との約束を果たすためにこんな超ド田舎まで来てくれたのだ。

「あっ、言い忘れてたけどさ~。あいつらも来るぞ?」

「げっ。あの変態馬鹿とチビ関西弁が来るの?」

 あいつらは本当に苦手だ。変態馬鹿は、ずーーーーっと自慢話をしてからナンパをしてくるし、関西弁はとにかくうっさい。

「すまないな、でもあいつらがいないと今回は成功できないから我慢してくれ」

 苦笑いをしながら神社の鳥居まで後ろ向きで歩いて行く。



 ―ツクツクホーシツクツクホーシ―



 ―こうして待っていた彼らは来てくれた。―



 ―たった一つの小さな約束のために。―





 まだまだ蝉は鳴き続ける。空には星がチラホラ見えている。

青年「やっと登場できた」

叶「遅過ぎだよ」

青年「まぁいいじゃん名前やっと決まったし」

叶「えっ!?私の名前最初から決まってたんじゃないの?」

青年「いや、この話考えてかららしいよ?」

叶「えぇ!?」

青年「そろそろ次回予告しろよ?」

叶「うん、そうだね。次回、真相。」

青年「事件の犯人は誰だ?」

叶「いや、犯人とかいないから」


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