8話「その果てに」
次に気がついた時、私は病院のベッドの上だった。
「アイリーンさん……!」
まだぼやけている視界に入ったのはエッダス。
「気がついたのね、アイリーン!」
「母さん」
「生きていて良かった! うおおおおおおお! 良かったあああああああ!」
「父さん、ちょっとうるさい、騒ぎすぎ……」
続けて両親の顔がそれぞれ見えた。
「護れなくて……ごめんなさい、アイリーンさん、本当なら僕が……」
「エッダスが無事ならそれでいいの」
「そうじゃなくて! 護るのは僕であるべきだったんだ! それなのに、逆に、僕が護られる形になってしまって……」
横になったままの私を見下ろしているエッダスの表情は悲しげだった。
彼には悲しい顔なんてしてほしくなかった。ずっと穏やかでいてほしかった。さすがにずっとは言い過ぎかもしれないが。でも、それでも、彼には穏やかな幸せの中で生きていてほしかった。
「悲しませてごめんなさい」
「なぜアイリーンさんが謝るんだ、そんなのはおかしいよ」
「でも悲しませてしまったことは事実だわ」
「そんなこと! アイリーンさんは何も悪くない!」
「……ありがとう、そう言ってくれて」
その後親から聞いた話によれば、あれは通り魔事件だったそうだ。
不幸にも数人が被害に遭ってしまったようだが。
犯人は既に確保されているのだそう。
ここからさらに被害者が増えるという最悪の展開だけは避けられそうで安心した。
その数日後。
「アイリーンさん、ゆくゆく僕と結婚してくれないかな」
そんな言葉を発されることとなる。
「え……」
「ご両親には既に話をして許可を貰ったんだ」
「あの、ええと……エッダスさん?」
「急でごめん。でも今言わなくっちゃって。あの時護ってもらって、アイリーンさんが傷ついて、それで気づいたんだ。言いたいことを言わないまま生きていたら駄目なんだ、って」
戸惑いが大きくて、すぐには返事できなくて。
「取り敢えず……少し考えてもいい?」
「もちろん!」
「ありがとう、じゃあ、しばらく時間をちょうだい」
考える時間を与えてもらうことにした。
それが最善だと思ったから。
想定外のことを言われて即座に答えを導き出せるほど私は有能ではなかった。
その後私は彼と生きることを選んだ。
まずは婚約して。
彼と共に未来へ歩むという道を選択した。
行く先のことなんて何も分からない。何が起こるか、どんなことが待っているか、すべて謎の領域。ただ、それでも彼となら歩んでゆけると思えたから、彼と共に歩んでみようと決心できたのだ。
「アイリーンさん、これからよろしく!」
「こちらこそ」
「大好きだよ」
「それは嬉しい言葉。ありがとう、エッダス、こちらこそよろしくね」
エッダスと結婚すると決めた。
◆終わり◆




