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ある日突然見知らぬ女性が訪ねてきました、どうやら婚約者の浮気相手のようなのですが……?  作者: 四季


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3話「事件の後で」

 信じていたにもかかわらず裏切られたラランの怒りは凄まじいものだった。

 彼女は取り出した刃物でカイールを傷つけた。

 憎しみを露わにするためなら命を奪うことすら厭わない、といったような、見ていて震えるほどの勢いで。


 ……そしてカイールは落命した。


 カイールを仕留めた後、息を荒くしながら一時的に動きを止めていたラランを見て、私はすぐに親を呼び同時に通報した。駆けつけた治安維持組織の人たちはラランを拘束し、両親は私を保護的な意味も兼ねて安全な場所へ連れて行ってくれた。


「あんなことに巻き込まれるだなんて災難だったわね、アイリーン」

「母さん……」

「怖かったでしょう」

「まさかあんな大事になるなんて思わなかった……」

「今は休んで」

「そうする」

「わたしも、お父さんも、一緒にいるから。大丈夫よ。何も恐れないで」

「ありがとう」


 その日の晩は一睡もできなかった。

 目を閉じるとどうしてもあの血に塗れた瞬間が蘇ってきてしまう。


「アイリーン、眠れないのか」

「うん」

「父さんが絵本でも読んでやろうか?」

「いや、それはいいわ」

「ガァーッン!!」

「そのうちに眠くなったら寝ようと思って……」

「ああそれがいいな」

「父さん、心配させてしまってごめんなさい」

「気にするな!」

「……声が大きい!」

「すまん」

「でも、寄り添ってくれてありがとう。感謝しているわ。あんなことがあった後で一人でいたら怖くてひたすら震えそうだもの」


 父も母も優しかった。それは日頃は敢えて感じることはないもの。けれどもこういう時には両親が近くにいてくれることがとても心強い。

 一人では乗り越えられないことも仲間となら乗り越えられる――なんて、極めて理想的な夢物語のような話だと思っていたけれど、案外現実的な話なのかもしれないと思う。


「アイリーン、ホットミルク持ってきたわよ」

「ありがとう! 母さん」

「砂糖は入れていないから」

「ホットミルクって砂糖なしで甘いもんね」

「そうなの、こういう時は自然な味の方がいいかもって思ったのよ、夜だし」

「いただきます。……あったかい」

「温かいものを飲んでゆっくりして、心を休めて」

「色々ごめん。そして、ありがとう。本当に。感謝しかない……ありがとう母さん」


 その後カイールとの婚約はほぼ自動的に破棄となった。

 なぜなら彼が亡くなったからだ。

 どちらかが落命したとなれば婚約という関係を続けることはできない、なので自然とそういう流れになった。


 また、後に事情を知ったカイールの親からは謝罪してもらうことができた。


 そして償いのお金も支払ってもらうことができた。


 カイールの罪はカイール自身の罪。それゆえ、心から謝ってくれている彼の両親からお金を取ることは申し訳ないような気もして。一度は「謝っていただけましたし、本人はもういないわけですから、もういいです。お金は求めません」と言ったのだけれど、向こうが「そういうわけにはいきません」と言ってきて。向こうの意思がかなり頑なであったこともあり、それを強く拒否するというのも変な話だったので最終的にはお礼を言いつつ受け取ることにしたのだった。

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