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通学電車でトナラーから助けたクラスメイトのSSS級美少女が毎日のように俺の隣に座ってくるようになった  作者: 剃り残し


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3

 始発駅で発車を待っている電車の1両目。俺が乗車してから少し遅れて本庄さんが乗り込んできた。


 目が合うと、本庄さんは当たり前のように俺の右隣にストンと座った。


「おはよ、高崎くん」


 まだ少し眠そうな目をした本庄さんが挨拶をしてきた。


「本庄さん、おはよう」


 会話はそれだけ。また、静かな時間が訪れる。


 俺の意識は右隣の本庄さんに向いているものの、必死に外を眺めるフリをする。


 本庄さんを横目にちらっと見ると、気怠そうな目で窓の外を眺めていた。長い睫毛が瞬きで上下する度に目から星が飛び出してくるような気持ちで見つめる。


「ね、高崎くん」


「何?」


「隣、座ってもいい?」


「今更!?」


「ふふっ。今更聞いてみた。ま、けど、まだ席はたくさん空いてるから、嫌なら移動も……できなくはない」


「全然……大丈夫だよ」


「ん。良かった」


 安心したように頷いた本庄さんはリュックを抱きしめて目を瞑る。どうやら今日は眠い日らしい。


 そのまま無言でいると電車が動き始めた。


 いくつかの駅を経て橋を渡り始めると車窓の景色が、住宅街から広い川と空き地に変わる。朝の日差しが、川面に反射して、車内に差し込んできた。


「……もうすぐ、夏だね」


 いつの間にか目を開けていた本庄さんがポツリと呟いた。


「うん。最近、暑くなってきたよね」


 5月もゴールデンウィークを超えるといよいよ暑さが増してきている。


「夏……」


 本庄さんは、なんだかあまり嬉しくなさそうに言った。


「好きじゃない?」


「ん」と彼女は小さく頷いた。


「夏は苦手。暑いし、なんかうるさいし」


「蝉とか?」


「それも、そうだけど……なんというか、全部がうるさい感じが苦手で。しない? 夏の曲とか。元気の押し売り感がすごくて」


「全部がうるさい……まぁ確かにね」


「ん。あ、けど夏で好きなこともあるんだ」


「何?」


「スマホのゲームの着せ替え衣装でエッチな水着が実装されること」


「そこ!?」


「や、大事だよね。うん。すごく大事だよ」


 本庄さんは何度もしつこいくらいに頷きながら言った。


「じゃ、エアコンの効いた涼しくて静かな部屋でスマホゲームをしてるのが最高の夏?」


「ん。欲を言うならあれもつけて欲しい。凍らせるアイス」


「アイスは全部凍ってるよね……?」


 本庄さんは自分のミスに気づいたらしく、柔らかく微笑んだ。


「あ……ふふっ。確かに。あれだよ。あの……凍らせて、真ん中で二つに割って食べるあれ」


「棒アイス?」


「ふふっ……匿名?」


「某アイスじゃなくて棒アイスだよ!?」


 本庄さんは「よし、通じた」とボケが通ったことに手応えを感じたようだ。


「高崎家は棒アイスって呼ぶんだ? うちはポッキンアイス」


「あれも中々呼び方が定まらないよねぇ……」


「だよね。私、一人っ子だから、半分こする相手がいなくて。あれを誰かと半分こして食べるのが死ぬまでにやりたいことの一つなんだよね」


「そんなにやりたいの!?」


「ん。そんなにやりたい」


「本庄さん、実は夏好きでしょ?」


「や、好きじゃないよ」


 多分、この人は夏にツンデレしてるだけだと気づく。


「じゃ、どの季節が好きなの?」


「そうだねぇ……」


 本庄さんは、そこで少し言いよどんで、なぜか俺の顔をじっと見た。


「高崎くん、ちょっと耳貸して」


「え?」


 本庄さんが俺の方にぐっと顔を寄せてくる。棒アイスよりも甘い香りが俺の鼻をくすぐった。


(ち、近い……!)


 心臓が跳ねる。本庄さんは、俺の耳元に口を寄せると、吐息が耳にかかるくらいの距離で、ささやいた。


「私は……冬。冬が好き」


「――っ!?」


 耳に直接、息がかかった。全身が、ブワッと熱くなるのがわかった。特に、耳が。


「な、なんで耳打ち……?」


 俺が聞くと、本庄さんは顔を離して小声のまま続けた。


「アカウントのパスワードに使ってるから、大きな声じゃ言えないんだ」


「じゃあ小さい声でも言っちゃだめだよ!? 推測できちゃうじゃん!?」


「あ、そっか」


 本庄さんは、きょとんとしながらそう言った。この人……たまにすごくポンコツだな……


「忘れて」


「うん。忘れた」


「じゃ、質問。私の好きな季節は?」


「夏。理由は賑やかな雰囲気に気分がアガるから」


「ふふっ、大正解」


 皮肉めいた言い方に本庄さんはにやりと笑って音が鳴らないように小さく拍手をした。


 というか、耳が熱い。さっきの吐息の感触がまだ残ってる。


 本庄さんは、そんな俺を不思議そうに、じっと見つめてきた。


「……高崎くん」


「な、なに?」


「耳、真っ赤だよ」


 気づかれた!


「……もしかして、熱ある? 大丈夫?」


 そう言うと、本庄さんは、当たり前のような仕草で、すっと、手のひらを俺の首筋に当ててきた。


 声にならない悲鳴が、喉の奥で詰まった。本庄さんの、少し冷たい手のひらが、熱くなった俺の首筋に、直接触れている。


「だ、大丈夫! 熱ない! これは、その……」


「そう? でもちょっと熱い」


 本庄さんは理由にまったく心当たりがないらしく、不思議そうに自分の体温と比べている。


「へっ……平熱が高いんだ!」


 俺は激しく鳴る心臓を抑えながら、必死に平静を装った。


「そうなんだ。どのくらいあるの?」


「さっ……37度くらい……?」


「わ、真夏日って感じだね」


「本当は夏好きだよね?」


「や、別に。ズッキーニもサマーウォーズも入道雲も好きじゃない」


「ラインナップがコアな夏ファンだよ……」


「ふはっ……何それ……ふふっ……」


 ひとしきり笑った本庄さんはまた窓から外を眺める。窓からは海が見えた。


「けど……今年は好きになれるといいな。棒アイスを半分こしたりとか……そう言うのでさ」


「友達とやればいいじゃん。すぐに達成できるよ」


「じゃ、約束ね、友達」


 本庄さんは俺の方を指さしながらそう言った。クラスの女子を想定して言ってみたのだけど、思わないカウンターを食らってしまった。


「わ……わかったよ、友達」


 俺も本庄さんを指さしながら答える。


 すると、本庄さんは指先をくっつけながら「私の好きな季節みたいに忘れちゃダメだよ、友達」と言ってきた。


「あれは忘れたふりだよ、友達」


「や、そういうことか。ガチで忘れたんだと思ってた」


 本庄さんは舌をちろっと出し微笑む。


 この人、たまにちょっと天然だな!?


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