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通学電車でトナラーから助けたクラスメイトのSSS級美少女が毎日のように俺の隣に座ってくるようになった  作者: 剃り残し


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18

 いつもの早朝の始発駅。本庄さんと並んで座った電車が発車する。


 タカタカタカタカとリズミカルな本庄さんの指ドラムを聞いていたのだが、ふとそれが止まった。


「……ね、高崎くん」


「ん?」


「暇だから10回クイズしようよ」


「唐突だけど……まぁ、いいよ」


「高崎くん、すぐ引っかかりそうだよね。じゃ、私から出題するよ?」


 本庄さんは俺の顔をじっと見つめる。お題でも考えているんだろうか。


「『ピザ』って、10回言って」


「……ピザ? 」


 古典的すぎて、逆に罠の匂いがプンプンする。俺は警戒しつつも小さな声で言われた通りにした。


「ピザ、ピザ、ピザ、ピザ――」


 俺が言い終わると本庄さんは自分の肘を指で、とんと叩いた。そしてニヤリと笑って聞いた。


「じゃあ、ここは?」


「友達と恋人の境目」


「ふふっ……それも正解」


「あ、普通に肘だった?」


「や、いいよ。私は分かるから。私だけは、ね」


 その言葉は妙に心を満たす。二人だけで伝わる、究極の身内ネタ。


「まぁ……ヒザとは言わないけどね」


「ふふっ。さすが。じゃあ次ね。『可愛い』って10回言ってみて」


「それは初めてのやつだ……」


 少し警戒しながら「かわいいかわいい」と指を折りながら連呼する。だが、途中で本庄さんが「ストップ」と声をかけてきた。


「どうしたの?」


「や、忘れてたんだけど10回クイズは出題者の目を見て言わないといけないんだった」


「そうなの?」


「ん。その方がより暗示にかかりやすくて、引っかかりやすくなるんだってさ。つまりハードモード」


「それは腕がなるね」


 俺は本庄さんの方に身体を向け、目を見ながら「かわいいかわいい」と連呼する。


 本庄さんは次第に顔を赤くしていき、10回言い終わった後も出題をしてこない。


「……問題は?」


「や、これは複合問題だから。まだ準備がある。次は『好き』」


「はっ、恥ずかしいんだけど……」


「ただの遊びだよ。気持ちを込める必要はないから」


「はいはい……好き好き――」


 本庄さんはまたも顔を赤くしてしまう。言い終わっても出題はされない。


「出題は!?」


「ん、ありがと」


「それは『あり』って10回言ったときの反応だね!?」


「アリが十匹ありがと〜」


 本庄さんはにやりと笑ってそう言い、前を向いた。


 あ、これやり逃げされるやつだ。


 俺は本庄さんの肩を叩き、「まだ終わってないよ」と言う。本庄さんはいつもの気怠そうな、でもどこか楽しそうな目つきで俺を見てきた。


「まだやりたいの? 仕方ないなぁ……次は――」


「次は本庄さんが言う側だよ!?」


「ん。なんでも言ってあげるよ」


「なんでも……」


 さすがに好きは二番煎じだし、そもそもハードルが高すぎる。格好いいは嘘になるし。かと言って変なことを言わせるわけにも行かない……


 あれ? 案外ないな?


「……なんか適当で」


「ふふっ。ないんだ?」


「倫理的にまずい言葉しか浮かばなくてさ」


「それは10回も言えないね。じゃ……好き好き好き好き好き――」


 本庄さんが俺と同じように十回クイズのために好きと連呼してくる。俺の目を見て。


「あ……」


「ふふっ。ただの10回クイズだよ? 出題は?」


「え、えぇと……ここは?」


 あろうことか、混乱した俺は自分の肘を指差した。


「ふふっ。それピザでやるやつ」


「そ……そうだね……」


「ん。もう一個やりたいな。お題ある?」


「お、おまかせします……」


「じゃあ……うーん……高崎くん高崎くん高崎くん高崎くん好き好き好き好き――」


 本庄さんは壊れた人形のように俺の名前を連呼する。虚ろな目の演技も相まって、極まったヤンデレだ。


「こっ、怖い怖い……」


「ふふっ。だって何にも出してくれないんだもん。あ、私ももう一個あった。出題したら何も考えずにすぐに10回言ってね?」


「うん、わかった」


 本庄さんと向かい合う。まるで西部劇で早打ち対決をする直前のようだ。


 出題されたら、即座に10回繰り返す。その開始を遅らせないために、全神経を集中させる。


 本庄さんの唇が動いた。白い前歯が見える。


「しこ」


「シコシコシコシコシコシコ……ってこれはダメでしょ!?」


「ふはっ……引っかかった……」


 本庄さんは腹を抱えて笑う。この人はほんとう……


「あ、問題忘れてた。力士が四つに組んだ体勢になって自分の体を対戦相手に密着させて前か横に進みながら相手を土俵外に出す技は?」


「……四股?」


「や、寄り切り」


「普通に俺の相撲知識不足が露呈しただけだね!?」


 本庄さんは目を細めて楽しそうに笑う。


「本当、高崎くんは飽きないや。毎日楽しいよ」


「毎日楽しいって10回言ってみなよ」


「や、それは洗脳みたいだからやめとく。ね、高崎くん、ここは?」


 本庄さんはまた肘を指さして、上目遣いで尋ねてきた。


「友達と恋人の境界線」


「ん。次は『パコ』ね」


「絶対に言わないからね!?」


「ふふっ。もうバレちゃったか」


 今日も朝から本庄さんは絶好調だ。



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