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通学電車でトナラーから助けたクラスメイトのSSS級美少女が毎日のように俺の隣に座ってくるようになった  作者: 剃り残し


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 土曜日の昼前の電車。普段よりは人が多いけれど、それでもいつものようにロングシート席に並んで座ることもできそうだ。


 駅で合流した俺たちは並んでロングシート席に向かう。だが、途中で本庄さんが「ね、高崎くん」と呼び止める。


「どうしたの?」


「たまには、こっちどう?」


 本庄さんは隣の車両を指差した。そこにはボックス席がある。


 確かに、たまには場所を変えてみるのも良さそうだ。


 二人でボックス席へ向かうと、本庄さんが窓側にすっと座る。俺は当然その隣に座ろうとした。


「高崎くん」


「え?」


「今日は、こっち」


 本庄さんは、自分の向かいの席を指差した。


「了解」


 俺は、言われるがまま彼女の正面の席に座った。にらめっこでもしているんじゃないかと思うくらいにじっと二人で見つめ合う。


 ガタン、ゴトン……


 電車が、ゆっくりと動き出す。ちなみに目的地はない。通学の途中で気になっていた駅の何処かで気が向いたら降りるだけだ。


(やばい、やばい、やばい)


 いつもは隣。横顔を盗み見るのが俺の日常だった。


 でも今は、真正面に本庄さんがいる。しかも、私服。ガーリーな半袖シャツにミニスカートと、学校の男子には絶対に見せたくない格好だ。


「……」


「……」


 気まずい沈黙。


「……なんか、変な感じだね」


 先に沈黙を破ったのは、本庄さんだった。


「え?」


「こうしてるの。変な感じ」


 本庄さんは、まっすぐ俺の目を見ていた。アンニュイな瞳に、心臓が撃ち抜かれる。


「いつも、隣だから。私から言ったのにね。言っといて落ち着かないってさ」


「あ……」


「高崎くんの顔、横からしか見てないし……高崎くんもでしょ?」


「う……うん。そうだね」


 そこでまた会話が途切れる。


 不意に外を見る。


「いい天気だね」


「ふはっ……一番無難なやつきた。ま、そうだね。良かったよね。雨じゃなくてさ」


「雨なら準備に時間かかってた?」


「や、朝イチで聞いたかな。どっちがいい? って」


 ストレートアイロンで伸ばした髪の毛と湿気でうねった髪の毛。どちらも可愛いので選べないのが本音なのでそんな連絡が来なくて助かった。


「それ、なんて答えるのが正解なの?」


 本庄さんは「メモしておいてね」と言って前のめりになる。


「『どっちも可愛い』だよ」


「選んでないけど……」


「選ばなくて良いんだよ。単に自信をつけたいだけだから。好きな人――あ、こっ……こここ、これはあくまで私と高崎くんが付き合いっている時にそういうやり取りをしたらって前提ね! 好きな人に褒められて自信をつけたいだけだから」


 本庄さんは途中で顔を赤くして慌てて補足した。さすがに流れで「俺のこと好きなの!?」なんて勘違いはしないのだけれど。


「なるほどね。じゃあ本庄さんの彼氏になる人にマニュアルにまとめて渡しておかないとだね」


「ふふっ。大丈夫だよ。もう伝えたから」


「えっ……そうなの?」


「ん。そうだよ」


 そんな人がもういるのに俺と遊びに行って良いのか……? 


 俺が悶々としながらクラスメイトの顔を次々と思い浮かべている間、本庄さんはずっと一人で俺を見てニヤニヤしていた。


 ◆


「……すごいね、ここ」


「うん……」


 適当な駅で降りた駅前の商店街は、想像以上にレトロだった。昭和の匂いがプンプン漂っている。


 初デートで来るところとして、無難と対極の存在だろう。


「……なんか、ごめん。変なとこ、選んだかも……」


「や、すごくいい。いいところで降りよって言ってくれてありがと」


 本庄さんは、首を横に振った。


「こういうの、好き。静かだから」


 俺たちは目的もなく、二人で商店街をぶらぶらと歩き始めた。


 八百屋さんの店先。魚屋さんの呼び込み。


 二人でいるから少し照れくさい。


「……あ」


 その時、本庄さんが、ぴたりと足を止めた。

 視線の先には、台風が来たら今にも壊れそうな、小さな店構えの一軒の店。


「……駄菓子屋?」


「みたいだね。高崎くん」


 本庄さんが、くるりと、俺を振り返った。その目は、今まで見たことがないくらい輝いている。


「高崎くん高崎くん高崎くん」


 本庄さんが駄菓子屋を見つめながら早口で俺の名前を何度も呼ぶ。


「テンション上がってるのはわかったよ……」


「物価高騰の救世主だよ。予算は二百円。百円で自分のもの。もう百円で相手へのプレゼントを買うってのはどう?」


「いいじゃん。面白そう」


「ん。決まり。じゃ、行こ?」


 本庄さんはテンションが上がっているからなのか、俺の手を無意識に掴んでいることにまるで気づいていないらしい。


 ◆


 店の中は、カオスだった。お面、水鉄砲、謎の光る棒、そして、壁一面の駄菓子。


「うわ……!」


 俺より先に本庄さんが歓声を上げていた。


「高崎くん、見て! 懐かしい! ケツの青いガキの頃によく食べてたなぁ」


「いや、言い方!?」


「あ、これもこれも」


 本庄さんは興奮した様子で次々と駄菓子を手に取っていく。この人、完全に予算上限を設けた事を忘れてるな!?


「本庄さん……200円までだよ?」


「ふふっ……遠足みたいだ。そんな枷をつけた私が憎い……」


 本庄さんは笑ったり拗ねたり。駄菓子を前に子供のように表情豊かに反応する。


「別に上限上げてもいいんだけど……」


「や、そのままにしよ。私、自分の分はもう選んだから」


 本庄さんはそう言ってしゃがみ込み、真剣な表情で駄菓子のパッケージと金額を見ている。それはつまり……俺のためのものを選んでいるということか。


 俺も気合を入れなければ。やたらと駄菓子でテンションの上がっている本庄さんのために、ウケそうなお菓子をチョイスして、アナログ感全開のレジへと向かった。


 ◆


「さてさて……開封の儀式だね」


 二人で近くの公園に移動し、ベンチで駄菓子の交換会となった。


 俺が選んだのは指輪型の飴。特に深い意味はない。


 だが、袋から取り出した瞬間、本庄さんは「ひょえええ!?」と言って顔を赤くした。


「ゆっ……指輪!?」


「飴だよ……」


「あれでしょ? 指につけてペロペロするやつ。ケツの青いガキの頃に食べてたなぁ」


「そのフレーズハマってるの!?」


「ふふっ……不適切だったかな」


「まぁ……いいと思うよ。はい」


 俺が飴を渡すも本庄さんはそれを拒否するように手をグーのまま開かない。


「……え?」


「折角だから……指につけてよ」


 本庄さんはそう言うと左手の薬指を差し出してきた。


「ちょ……その指は重い重い……」


「あ、そっか。じゃ、ここで」


 本庄さんは今度は左手の小指を立てた。


「まぁ……そこなら」


「ん。ついでに跪いてよ」


「えぇ……」


「はーやーくー」


「はいはい……」


 子供に退行した本庄さんに言われて、渋々ベンチの前に跪き、手を取って飴型の指輪を指につけてあげる。


 本庄さんはその飴を舐めるでもなく、ニヤニヤしながらじっと眺めている。


「本庄さん、その飴、食べたくないくらい好きなの……?」


「ふふっ。それもあるけどそれだけじゃないよ」


 たたが駄菓子。一体何がそんなに嬉しいんだろうか。



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