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ハレを望む  作者: 明深 昊
2章『双風』
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1話 魔法使い

「魔法を使って仕事をしている者たちのことは通称的に魔法使いと呼ばれている。これはみんなも感覚で呼んでいるからわかると思う。魔法使いと考えたときに真っ先に出てくるのはギルドや軍に所属している者たちのことだろうが、それだけではない」


 魔力測定にも使われた修練室で初めての実技実習。とはいえ座学から始めるようで、広い室内の端で全員で座ってイルガの話を聞いていた。


「例えば今俺が一番後ろまで声を届けるために拡声魔法を使っているように日常生活にも魔法は使われる。中にはそれを仕事に役立てる者もいて、最近は魔法使いの定義も広範囲にわたってきている。特に医療の点では治癒魔法だけでなく病気などの治療にも魔法が使われることは常識だし、薬師も製薬に魔法を使うことも今では普通だな」


 料理人が最適な火力を求めて魔法を使う。電気屋が修理のために魔法を使う。大工が、花屋が。魔法の使い方が多様化するにつれて、魔法職と非魔法職の境があいまいになってきた。


「戦闘職を目指して魔法を学ぶためにここへ来たかもしれない。だが、魔法というのは戦いのためだけにあるものではないことを知っていたほうが今後の魔法習得にも役立ってくるはずだ」


 そう言ってさて、とイルガが手をたたく。


「そこでだ。一人ずつなにか日常生活で使えるような魔法の例を挙げてできそうなことなら実演してみてほしい。ほかの人と被ったり、別に真似したりしても構わないからな」


 視野を広げる、ということだろうか。みんながそれぞれ自身の得意属性や特性を活かしてさまざまな例を挙げていく。イルガは一つ一つ丁寧にフィードバックしていき、中には改善案を出すこともあり、イルガ自身が相当魔法に慣れ親しんでいることが伝わってきた。


「キリト」


 うぃっすと立ち上がったキリトがアクトにも立つよう促してくる。疑問に思いながらそばによるとキリト自身はかがんで片手を広げ、その意図が分かってその腕に座った。

ひょいと軽々と持ち上げられて、周囲から拍手が起きる。


「うん、身体強化は普段から無意識に使っていると思うけど、物を運んだり動かしたいときにはもってこいだ。じゃ、次アクト」


 立っているのが都合よかったのかアクトが指名されて、それならと座ろうとしたキリトを制止する。


「ちょうどいいや、俺もキリトのこと借りる」


「え、つぶれそうだからやめてくれ」


 その言葉に思わず吹き出して、首を横に振った。


「つぶれないしそもそもやること違うから」


 身構えているキリトを宙に浮かせて、頭上をぐるりと一周させて元の場所に降ろす。物を運ぶという点ではキリトのやったことと似ているが、違うアプローチだ。


「風、いや結界の応用かな。近くにある物を運ぶならキリトの方法が速いだろうけど、アクトの方法は遠くにある物を引き寄せることもできる」


「動かすのに風を使ってるんで風も間違ってないですけど」


 結界を使わずとも風だけで物を動かすことはできるが、安定感がなくなってしまう。さすがに人に不安定な飛行をさせるわけにはいかないのでいつもと違って結界で土台を作ったのだが、キリトの様子を見る限りうまくいったようだった。


 ほかの人が指名されたので座ると、キリトが肩をたたいてくる。


「ん?」


「俺飛べないから興奮した! ありがとうな!」


「え、そうなのか」


 飛ぶと言っても手段は豊富にあり、アクトのように風属性が得意だとやはり風を使うことが多く、風が苦手だと魔力で足場を作って移動させたり魔力をうち出す反動で飛んだりするのが主流になる。中には翼を魔力で作るといったロマンのある飛び方をする人もいるが、速さが出ないため遊びの域は出ない。


 いずれにしろ方法が多岐にわたる飛行魔法が使えないというのは珍しいことだ。


「不器用だからな、俺」


「……結構器用だと思うけど」


 魔法を使うとき以外はきれいに体の中に魔力を全部しまっているし、さっきの実演のときも余分な魔力がなかった。こういった無駄遣いのない魔力の持ち方は訓練でもしないと身につかないから、おそらくは闇属性という魔法特性にキリトがきちんと向き合っている結果なのだろう。戦闘中は魔力を周囲に大量に散らせてそこから使っていくアクトとは真逆の使い方だ。


「おーい、ちゃんとほかのやつらの見てやれよ」


「あ、はい」


 イルガから小言を言われて、二人で思わず笑いあってから授業へと意識を戻した。

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