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ハレを望む  作者: 明深 昊
幕間
39/48

3話 将来のために

 試験の結果が帰ってきて、みんなで成績を見せ合うために食堂に集まった。


 一斉に結果表をテーブルに広げると、アズサが飛び抜けて点数が高く、どの教科も九割近い。


「アズサちゃんすごい」


 勉強は得意だからね、とアズサが得意げに笑った。


「多分入試に筆記がなかったらこの学校入学できてなかっただろうし。でもユリも平均点以上は全部取れてるじゃん」


 なんとかね、とユリは苦笑い。政治経済の教科が強いのは軍によく出入りしている影響もあるのだろうなと関心する。


 アクトが高得点を取れているのは魔法学と地理だけで他はほとんど平均点以下。課題を片付ける以外の勉強はしておらず、この二教科も元から詳しいところだったと思えば当然の結果だった。


 初等学校には通わずに週三の家庭教師がついていたが最低限だったし、こんなものだろう。


「キリトとアクト、勉強した?」


「するわけないじゃん」


 全教科で平均点を取れていないキリトの開き直った言葉に、アズサが思わず吹き出す。


「別に点数低くても成績が悪くなるだけだろ」


 アクトの言葉にそうかもしれないけど、とアズサは呆れたようにため息をついた。


「アクトはそのうちギルドの経営とかお手伝いするんじゃないの? 数学とか法律とか、知っておいた方がいいこと多いよ」


 そう言われて、うーんと首をかしげる。


「多分俺がマスターを継ぐことはないよ」


 アクトの言葉に、ユリはああ、とうなずく。


「そっか、ユウトさんいるもんね」


「軍の副隊長になったよね? 公示見てアクトのお兄さんだってびっくりした」


 ユリとアズサの会話に、うん、と控えめに肯定した。


 兄のユウトが軍にいるのは元々社会勉強の意味合いが強く、出世するつもりもなかったはずだ。ノエルの死去から極端にギルドに帰らないようになって、一度断っていた帝位に就いている。


 着々と軍での地位を上げているユウトだが、アクトは跡継ぎの話をされたことは無いから、ユウトはまだそれを拒んでいないはず。自分が経営者に向いているとはとても思えないし、いきなり継いでくれと言われても断ってしまうだろう。


「ユリのお兄ちゃんは隊長で、アクトのお兄ちゃんが副隊長か……すごいね」


 アズサの言葉は純粋で、ありがとうとだけ返しておく。実際に軍の副隊長という立場は誇らしいものであるのはまちがいない。


「でもやっぱり勉強は必要だと思うけどねぇ。そのお兄ちゃんを助けられるようにないと」


 そう言われて、気まずくなって目をそらした。兄ともう八年近く話していないなんて言えるわけがなく、正直早く話題を変えたいとさえ考えてしまう。


「多分、あの人は俺の手伝いとかいらないだろうから」


 アクトの消極的な発言でその気持ちを汲み取ったのか、アズサはそっか、とだけ返して切り上げてくれた。






『アクト、今いいか?』


 夜。珍しいラルクからの念話に、大丈夫と返してベッドから起き上がった。


『お願いしたい任務がある。明後日の学校が休みの日でいいからギルドに来てほしい』


 いよいよ珍しい話。アクトが双風として動かなくなってから、ラルクから任務を振ったのはイルガからの依頼だけだ。それもイルガが頼んだことを考えれば、ラルクはあれから一度もアクトを頼っていなかったことになる。


 アクトの気持ちに沿っていてくれたことを今さらながらに自覚して、だからこそこの念話が不自然に感じた。


『任務? いいけど……』


『本当にすまない』


 予想通りこの依頼が不本意なものだとわかる。どうしてもアクトの力が必要な状況ということだ。


『明日の授業終わりに行こうか』


 早い方がいいだろうかと聞くと、ラルクはいや、と否定した。


『二日後なら問題ない。詳細は来たら伝えるから』


 ありがとう、とアクトの返事を待たずに念話が途切れる。どこかよそよそしいその態度に嫌な予感がして、ため息をついた。

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