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ハレを望む  作者: 明深 昊
6章『とくべつ』
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4話 才能の芽

 一時間ほど子どもたちの相手をしてお開きになり、少し張っていた気を弛める。


「どうだった?」


 ハルマに聞かれて、思わずため息をつく。


「大変だった……」


 魔力を体中に循環させ、さらには外へ出すというのが案外難しいものなのだと痛感させられた。どうにかみんな魔力を手のひらに集めて前に放つことはできたが、放ってすぐに霧散してしまうばかり。


「お前はそういう最初のステップ全部すっ飛ばしたからな」


「てか、魔法を仕事にするような人はだいたいそうなんじゃないの」


 アクトの言葉に、リランはそうだねとうなずく。今日ここに来た子たちで魔法を習熟させるのは初めから魔法が使えていた子と雷属性に適性があった子くらいだろう。


「でも、最初の一歩は今回みたいに人からこうするんだと教わるものだ。みんながみんな勝手にちぎった紙を風で飛ばして遊ぶような子じゃないよ」


「なにそれおもしろい」


「アズサもそんなタイプな気がするけど」


「私は寒いなって家を火事にしかけたことがある」


「えぇ……」


 恥ずかしくなって思わず反論したのだが、想像以上の返答に絶句してしまった。


 リランも笑って、未遂ですよとアズサが慌てて補足する。


「お母さんが一緒にいたから消してくれました」


「いなければ火事になってたんだな……」


 キリトがしみじみとつぶやき、ユリはなにもなくてよかったねと苦笑い。


「そのくらいアズサちゃんは魔法に優れてるってことだよ」


 リランがそう言うと、アズサはそうですかね……と照れくさそうに身をすくめた。


「多分、クラスの中じゃせいぜい中の下ってところだと思ってるんですけど」


「比べているのは今後軍やギルドの主戦力になる子たちだ。まだ実戦授業が少ないから実感はないだろうけど、あの学校は合格するだけでギルドランクB相当、卒業時にはA相当だと言われている。アズサちゃんはどうしてそんな学校に通おうと思ったの?」


 ハルマの言葉に、アズサはうぅんとうなる。


「あんまり、具体的な目標があるわけじゃ……私の町は魔物一匹に大人複数人でどうにか対処するような小さな町で。そんな中で魔法が得意だったから力試しみたいな……正直魔法の使い方なんてだれも教えてくれなくて、合格したのは奇跡なんです。ユリやアクトみたいな特別な家に生まれたわけでも、キリトみたいに特別な魔法が使えるわけでもない」


 このままこの町にいたらせっかく魔法が得意なのに満足にその力を伸ばせないと、父はあろうことか国最大の魔法学校の出願用紙を持って帰ってきた。ダメでもどこかのギルドへ入ってみなさいと、家業を手伝う以外に選択肢を持っていなかったアズサの世界をさらに広げたのは母。


 合格証明書を持って王都から帰ってきたアズサを両親と弟は泣いて喜び、町から魔法学校の合格者が出たとお祭り騒ぎになった。


「できる限り、町のみんなの期待には応えたいけど……リランさんや、ラルクさんみたいな人たちに期待されるほどの力はないと思うんです」


 親しくしていた友人が強い家の出、さらには貴族だと知って、萎縮しているのだろう。アクトはそれを聞いて、境遇は違えど共感を覚えていた。本人の自己評価以上の周囲の目は辛いものがある。


「別に、父さんやリランさんの期待なんて踏み倒していいと思うよ。町の人の期待だって、無理することじゃない」


 リランがそれを聞いて小さく吹き出す。アクトがその張本人なのだから笑われても当然だ。


「なんだよそれ、自分本位だね」


 アズサもおかしかったのかころころと笑い、アクトは大真面目に首を振る。


「無理なものは無理だろ」


「言ってることは極端かもしれないけど、自分のペースでできることをやっていけばいい。自然とその身にできる最善を尽くせるはずだ」


「……はい」


 静かに聞いていたハルマがでも、とアズサに微笑んだ。


「今まで魔法の指導をちゃんと受けていなかったなら、きっとこれからすごく伸びるだろうね。次に会える日が楽しみだ。キリト君も」


「俺ですか?」


 不意に話を振られてキリトが首を傾げる。


「もし困ったことがあったら軍へおいで。僕に話を通すように言ってもらえればいつでも対応するよ。今軍には頼りになる闇属性使いがいるから……手探りよりはよっぽどいいだろう」


 その言葉に、キリトが言葉にならない声で慌て始めた。


「闇帝は……そういう人がいるってだけで、俺にとっては支えになってます。だからそんな、特別待遇は」


 キリトの言葉はここ数年の統計による闇属性を持つまだ処置や封印を受けていない魔法使いの増加理由を示しているように思える。


 やはり精神状態は魔力に強く影響するのだろう。


「大丈夫、君のことは一度闇帝も見てるからね」


 その言葉に、三人もピンと来ていないようで。意識を張っていなかっただろうとはいえよくバレないものだ。


「学校のオリエンテーションで森へ行ったことあるだろう? そのときに同行したの、闇帝と雷帝だよ」


「えっ!?」


 それに一番反応したのはやはりアクトで、リランはその理由がわかったのかおもしろそうに笑った。


「さすがだなぁ、あいつ」


 どういうこと? とユリが聞くと、ハルマはえっとね、と言葉を選びながら説明する。


「アクト、闇帝に会ったことがあるんだよ。別に顔を隠してもいなかっただろうし、アクトは魔力探知が得意だから知ってる魔力に気づかないなんてありえないからね。普通に参加したらなんもしてなくても帝たちは魔力が強いからびっくりされちゃうし、闇帝が魔力も姿も隠してたんだよ」


「……割と本当に悔しい」


「もし会う機会があれば喜ぶだろうから伝えてあげてね。気づかれそうとか言ってたから。キリト君のことも褒めてたよ。よく自分の力として扱えてるって」


 その言葉にキリトはしばらく呆然としていたが、少ししてじわじわと喜びが込み上げてきたらしく拳を突き上げた。


「よっしゃあ!」

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