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ハレを望む  作者: 明深 昊
6章『とくべつ』
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1話 提案

「あのね、今度お父さんが友だちを家に遊びに連れてきたらどうだって。今週末って空いてるかな……? よければお泊まりでって言われてるんだけど」


 夏休みになっても昼食や夕食の時間を合わせてほぼ毎日四人で顔を合わせている。この休みのうちにどこかへ出かけようと計画していた中で出たユリの言葉に、思わず体が固まった。アズサとキリトが二つ返事で了承したのを後目に、思わずユリに問いかけてしまう。


「リランさんが?」


「うん。アクト君に会えるのは久しぶりだから楽しみだって言ってたよ」


「一応空いてるけど……」


 基本的にこの四人で遊んでいるか宿題をしているかなので暇であることは間違いない。それでも避けていた人物に呼ばれているのは少し恐怖を感じた。


 純粋に愛娘の学校での様子を知りたいというのもあるだろうし、未だにキリトたちに打ち明けていない家のことを話すためというのも考えられる。父と会ったときのように双風であることを知っている人がいても、三人にはいつも通り振る舞えばいい。


「ありがとう! そうしたら四人で行くねって伝えておく」


 ふふ、と笑って楽しみだなぁとつぶやくユリは本当にうれしそうで、こちらまで笑顔になった。


「初学の学習合宿の前日楽しみで寝れなかったタイプでしょ」


 アズサがそう茶化すと、そんなことないよと首を横に振る。


「それだったらアズサちゃんとキリト君のほうが眠れなさそうに思うよ」


「まあそうだけどさ……」


「俺は夜中まで起きてるのが普通だから関係ないぜ」


 前期の授業が終わるころにはとっくに遅刻の常習犯だったキリトがなんの悪びれもなく言ってのけて、ユリとアズサが呆れたようにため息をつく。


「アクトは? なんかちゃんと寝てそうなイメージだけど」


 少し考えてから、どうだろうと首をかしげた。次の日が楽しみなんて、あんまり考えたことがない。しかし、この今の楽しさが待っていると思うと気分が高揚するのは確かで。


「案外、三人よりも眠れないかもね」


 そんなことを言えるくらい、この三人とこういった他愛のない会話をするのが楽しい。たとえこの"楽しみ"の対象が多少の不安があったとしても、大丈夫だろうなんて思いながら。





 呼び鈴の音で目が覚めて、時間を見て飛び起きた。外で待っているであろうアズサにあと三分と声をかける。


「はーい」


 着替えや歯磨きをしながら、起きたあとに荷物の中へ入れる予定だった物を魔力で放り込んでいった。


 最後に剣を二振り引き寄せて、少し迷ってから緑だけを色付ける。おまたせと玄関を開けると、アズサが眠気を吹き飛ばすような笑顔で出迎えた。


「おはよ! キリト寝坊だって」


 キリトの部屋はアクトよりも上の階にあるから階段で待つことにする。集合場所の校門に二人が来ないからユリとそれぞれ迎えに来てくれたそうだが、どうやらアクトも寝坊したとは気づかれていないらしい。そっかと言葉を返しながら思わずあくびが出てしまった。


「ふふ、ほんとに眠れなかったんだ」


「思ったより……」


 楽しみと緊張とが合わさってなんともいえない気持ちで寝たのだが、たしかに眠りは浅く、みんなが言っていたのはこのことなんだと痛感する。


 私も楽しみでおかしなどを沢山持ってきたと話すアズサに、自分もなにか用意しておけば良かっただろうかと思っていると、キリトが大急ぎで階段を降りてきた。


「すまん、寝てた!」


「おはよ」


 遅れてユリも降りてきて、おはようと一通り挨拶を交わす。アズサがどのくらいかかるのと聞くと、ユリは首を横に振った。


「ちょっと遠いからお父さんが校門まで迎えに来てくれるよ」


 そう言われて校門の方へと気を向けるが、それらしき気配はない。ユリも同じようにいないことに気づいたのか、苦笑いした。


「……まだ来てないみたいだから、待たせちゃうかもしれないけど」


「迎えに来てくれるだけでありがたいから大丈夫!」


 アズサの言葉に、アクトとキリトもうなずく。校門でリランを待っていると、転移で現れたのはアクトが予想もしていなかった人物だった。


「お兄ちゃん!?」


「ユリ、おまたせ……」


 現れた本人もアクトを見て固まる。ユリと同じ柔らかい髪質の茶髪に、青色の瞳。しかし鍛え上げられた体はキリトの一回りも大きい。


「え、アクト!?」


「ハル」


 ユリの兄であるハルマに会うのは半年以上ぶり。驚きを隠せない様子のハルマだったが、片方だけを色付けた剣に気づき、アクトの頭をくしゃっと撫でて柔らかい笑みを浮かべた。


「元気か?」


「……うん」


「ならいいんだ」


 呆気にとられている三人に、改めてといった感じで向き直る。


「ごめんね、アクトとは昔からの友人なんだけど……まさかこんなところで会うとは思ってなかったんだ。俺はユリの兄で……いや、先に家に行った方がいいかな」


 そう言って、ちょいちょいと少し離れていたキリトを寄せる。疑問に思いつつも素直に一歩近づいてくれたキリトにうなずいて、全員を転移魔法で包み込んだ。


「へ……」


 アズサの間抜けな声も仕方がない。魔法陣がない状態、さらにお互いが触れ合っていない状態での複数人転移は並大抵の人間ができる芸当ではないのだ。


 さらに目の前にそびえる大豪邸に、キリトとアズサの二人は言葉を無くしてしまった。その様子を見て、ハルマがおもしろそうに微笑む。


「改めてはじめまして。ユリの兄、ハルマ・サガルトです。アクトみたいにハルって呼んでくれて構わないよ」


「……えっ、サガルトって」


 キリトがぽつりとつぶやき、アズサが信じられないといった表情でハルマとユリを交互に見る。


「ごめんねアズサちゃん、キリトくん。色々あって隠してたの。お父さんが会いたいって言ったのは本当だけど、私がみんなに打ち明けたいっていう理由もあった」


 その言葉に二人はしばらく沈黙して、アズサが首をかしげた。


「なんで隠してたの?」


「えっと……」


 一言で表すには難しく、ハルマが見かねて手をたたく。


「話はお茶でも飲みながらでどうかな」

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