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ハレを望む  作者: 明深 昊
1章『逃げた先』
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1話 魔法学校

 教室の指定された席について、辺りを見回した。近い年齢の人がこれだけ集まっている状況は初めてで、すでに仲良く談笑している姿などを見ると驚いてしまう。


「おはよ!」


 唐突に声をかけられてそちらを向くと、赤毛をポニーテールにしている女子が隣の席に腰かけてきた。


「おはよう」


「私、アズサ・クリア。お隣さん同士、よかったら仲良くしておくれよ」


 ヒマワリのような笑顔を浮かべる彼女に、自然と笑みがこぼれる。


「アクト・ストードだ。こちらこそよろしく」


 アズサはすぐに目の前の女子にも挨拶をして、そのまま二人で話し始めてしまった。周りの席でも同じように新学期特有のざわつきに包まれていて、それに慣れていないアクトは一つ息を吐く。


「どうしたの?」


 急にアズサに声をかけられ、驚きながらも首を横に振る。


「いや、なんでもない」


「ふぅん? あ、この子ユリっていうんだ。ユリ、こっちはアクトね」


 唐突に紹介されて、軽く挨拶を交わす。魔力が知っている人物によく似ていて、そういえばアクトと同い歳の子どもがいると聞いたことがあるのを思い出した。明るい茶髪に薄い青の瞳。顔立ちは母の方によく似ている。


「ユリ・カレアです。よろしくね、アクト君」


「こちらこそ。得意属性は水?」


 ファミリーネームが偽名であることに疑問を持って少しだけ鎌をかけるようにして聞くと、首を横に振る。返ってきたのは予想通りの答えだった。


「一番得意なのは光だよ」


 アクトが一度も顔を合わせていないということは恐らく、彼女は家の教えを受けていないのだろう。


「私は火が得意」


 アズサも話に乗って話してきて、ユリがくすくすと笑った。


「それは見ればわかるよ……アクト君は?」


「俺は風かな。光も使える」


 魔力はそれぞれの属性を帯びるとそれを象徴する色を概念としてまとう。人によって細かな色彩の差異はあるが、火は赤、水は青、風は緑、雷は黄、土は茶系統。それらの色は往々にして魔力の持ち主の髪や目の色となって現れる。もちろんアクトのように表立ってはわからないことも多いが、見た目は相手の得意属性を知る一つの指標になりやすい。


「二人とも特殊属性持ちってことか」


 アズサが少し羨ましそうに呟いて、ユリと目を合わせて苦笑した。


「特殊属性は遺伝の力が大きいんでしょ? 時々後天的に身につくらしいけど」


 基本の五属性は得意不得意の差はあれ誰もが使用できるが、光を初めとした特殊属性は魔力の特性によって使えるかどうかが変わってくる。


 光属性は比較的使用者が多いが、毒や重力などかなり希少な魔法を使える人もいる。中には血族にしか使用者が確認できていないような"固有属性"と言われるような魔法もあるが、それらを使える者は国家戦力として軍に入隊、そうでなくても王都に居住して王都で有力なギルドに所属していることが多い。


 特殊属性を得意とする魔法使いは、それだけで魔法を磨く価値があると見なされる。国もそういった魔法使いにはかなりの国費を割いて、貧しくても魔法教育を受けられるようにしているようだ。


 そういった背景を抜きにしても、特殊属性を持たないまだ未熟な魔法使いが憧れるのは至極当然のこと。


「下手にたくさんの属性を使うよりは一つの得意属性を伸ばす方が今の時期はいいと思うけどな」


 それでも、アクトにはその憧れを素直に受け取ることは出来なかった。


「それはそうだけどさ……」


 突然勢いよく教室の扉が開いて、大柄の男子生徒が空席だったユリの隣にどかっと荷物を置く。相当急いできたのか大きな息を吐いて、脱力するように席に座った。


 三人が見ているのに気づき、苦笑いを浮かべる。


「寝坊した。セーフ?」


「……入学式出てないの?」


「出席は取ってないからいいんじゃないかい」


「まあ……大丈夫じゃないか」


 多数決だとでも考えたのだろうか、男は一転して明るい笑みを浮かべた。


「よっしゃ。俺、キリト・クーリッド。キリトでいいぜ」


 三人が順番に挨拶すると、何度か名前を復唱して頷いた。


「覚えた! よろしくな」


「よろしく……なあ、もしかして闇属性か?」


 他の何色も混じっていないような漆黒の髪と瞳。アクトの判断材料はそれだけではないのだが、思わず聞いてしまう。


「ん? よくわかったな。堕ちちゃいねえから安心してくれ」


 気づいた理由はともかくとして、聞いた理由はわかったのだろう。学校に進学している時点で大丈夫であることはわかってはいるのだが、闇属性というだけで警戒してしまうのは仕方がないことだ。


「まあ、あんた底なしに明るそうだからそうだろうけど……」


 アズサの呆れた声に、キリトはだろ? と笑った。


「まあ、今んとこは心配しなくて大丈夫だぜ。一応自分の魔力とは上手く付き合ってるから」


 魔力と上手く付き合う。それは本来なら当然のことで、アクトにはできていないこと。


「そうか、ならよかった」


 表向きはそう言いつつも、少しだけうらやましいと思ってしまった。

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