表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/94

扉の向こう側

朝の光が窓から差し込み、寝不足の目がしみる。昨夜はヴェリディアン・レルムの記憶と現実の陰鬱な細部の間を行き来する思考に、一瞬の安らぎも与えられなかった。心の中ではまだ戦いが続いている。「湖の守り手」としての責務と、かつての平凡な自分が求めた安息が衝突しているのだ。


コーヒーを飲みながらPCを起動する。画面の光が薄暗い部屋を照らす。机の上のプロジェクト報告書と部長の尽きないメールが、待ち受ける現実の冷酷な顔を思い出させる。だが今日は、これらの優先順位が違って感じられる。私の心はまだ昨夜のシステムの謎めいたメッセージに囚われたままだ。


「起きてる?ログインしてる?待ってるよ!」

スマホが振動する。アリスからのメッセージだ。


「今行く、待ってて」

キーボードに手を伸ばし、指が勝手に返信を打ち始める。


送信ボタンを押すと同時に、PC画面のヴェリディアン・レルムのアイコンをクリックする。ローディング画面がいつもより速く過ぎていく。まるでゲーム自体が私を待っていたかのように。


短いロード後、懐かしい場所に立っている――湖の国だ。空気は清浄で爽やか。湖面は朝日を浴びてきらめいている。釣り竿が手にあり、その慣れ親しんだ重みが安心感を与える。そして傍らには、アリスとフィンが待っていた。アリスは微笑みながらこちらを見て、フィンは肩の上で嬉しそうに輝いている。


「リョウ!やっと来たの!もう戻ってこないかと思って心配したわ」

アリスの声には安堵が滲む。


「ただ...ちょっと用事があって」

私は笑みを浮かべる。


「よかった!実は、元素の心臓を浄化した後、何かが起こったの!新しいクエストが出現したけど、内容がわからなくて...」

アリスが首を傾げる。


その瞬間、湖の中央から巨大な光の柱が立ち上る。この光は全ての元素の色を含んでいた――青、緑、赤、黄、紫、白と黒。調和しながら回転している。これはポータルというより、全ての次元の融合のようだ。


「湖の守り手リョウよ!」

声が湖面に反響する。古めかしく力強い声は、宇宙そのものが語りかけているようだ。


「次元の調和は取り戻された。汝の使命は完了した」


アリスとフィンは驚きと畏敬の念で光の柱を見つめる。フィンの紫の輝きがさらに強くなる。


「今、汝に選択の時が訪れた。望むなら、この全てを捨て、平穏な生活に戻ることができる。記憶は消え、力は失われる。あるいは...次元の守護者として新たな使命を受け入れよ」


声が響き渡る。


「キャラクター削除:安寧に戻る」という文字と、「クエスト受諾:次元の守護者となる」という選択肢が湖面に浮かび上がる。後者は眩いばかりの紫に輝いている。


「リョウ...これは何?あの声は?」

アリスは不安そうな目で私を見る。


深く息を吸う。これは思っていた以上に重大なことだ。システムは選択を私に委ねている。だが、私は本当は何を望んでいる?


「私は...」

声が震える。


心の中の疲労、オフィス街の生活の息苦しさ、このファンタジー冒険の消耗感が混ざり合う。


「私はただ...解放されたい!ただ心の平穏が欲しかったんだ!それだけなのに!」


光の柱を見つめ、声を強くしようと努める。アリスの表情の驚きが深まる。フィンでさえ肩の上で小さく震えている。戻ることはできないと悟る。これはもはや単なるゲームなどではないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ