二つの世界の狭間の朝
布団を蹴り飛ばしてベッドから起き上がる。冷たいフローリングに足をつけた時、つま先にピリピリとした感覚が走る。
まるでまだ炎の国の溶岩の上を歩いているようだ。
洗面所に向かい、鏡に映った自分を見つめる。目の下には薄いクマ、顔には妙な疲労感。
しかしどこか内側に、新たな決意がきらめいている。
シャワーを浴びる。肌に当たる水は浄化の儀式のようだ。
熱いお湯は炎の国の灼熱を思い起こさせ、冷たい水の衝撃は湖の深淵を連想させる。
体を流れる水と共に、頭の中の疑問も形を成していく。
あれほどリアルだったヴェリディアン・レルムは単なるゲームだったのか?それとも私は完全に没入していたのだろうか?
タオルで体を拭き、カジュアルなTシャツとジーンズを着る。
キッチンで急いでコーヒーを淹れながら、釣り竿や剣、元素の心臓から遠く離れた現実に戻ろうとする。
今の最大の敵はプロジェクト報告書と、部長の尽きない要求だ。
デスクに座り、PCを起動する。画面の光が顔を照らすが、頭の中はまだ光と影の国にいる。
複雑な表やグラフを見ながら、魂喰らいとの戦いや番人の調和を思い出す。どちらの任務が難しいだろう?
PCのフリーズは、炎喰らいの攻撃と同じくらいイライラするものだろうか?
一瞬目を閉じる。あの静寂と安らぎが恋しい。
ヴェリディアン・レルムでの最初の日々――湖岸で釣りをしていた頃を思い出す。
竿を投げて何時間も待ち、魚が食いつく瞬間を感じ、静けさを味わっていた。
あの頃の最大の悩みは、釣れる魚のサイズだった。
ゲーム初期のあの穏やかさは、私をとても幸せにしてくれた。だが今は...
携帯が再び鳴る。顔がこわばる。
部長ではないことを祈りながら画面を見ると――アリスからのメッセージだった。
「リョウ、大丈夫?急にログアウトしたから心配してたわ」
メッセージを読んで胸が軽くなる。
思わず笑みがこぼれる。良かった、ゲーム外でも連絡先を交換していたんだ。
「大丈夫だよ、アリス。急用が入ってしまって。ありがとう」
素早く返信を打つ。




