光と影の国
「カイル、君の国はもう大丈夫だ。大地は緑に覆われ、川は流れ、空気は清らかになり、炎は再び命を灯す」
最後の別れを告げる。
「この恩は決して忘れません。我が国は貴方たちを永遠に記憶するでしょう」
カイルは潤んだ目で深く頷いた。
新しい扉をくぐり抜ける。これまでの扉とは違い、暗くも息苦しくもない。空気には花と古い羊皮紙が混ざったような甘い香りが漂っている。
扉の中では白と黒の光が複雑な文様を描き、調和のシンボルのように踊っている。
扉を抜けた瞬間、周囲の雰囲気が一変する。要素の国の陰鬱さも炎の国の灼熱もない。
ここは何よりもまず、光と影が踊る場所だった。空は明るい昼と深い夜に二分され、太陽と月が同時に相反する方角に浮かび、唯一無二の景観を作り出している。
地面は柔らかな草に覆われ、一歩ごとにささやかな音がする。植物は豊かだが、奇妙な様相だ。
ある木々や花は月明かりに洗われたように真っ白に輝き、他のものは漆黒の闇に溶け込んでいる。この国全体が対比に満ちていた。
「わあ……ここは……美しいけど、すごく不気味」
アリスが目を丸くする。
フィンは私の肩で周囲をきょろきょろと見回し、魅入られたようだ。彼の紫の輝きが、この白黒の風景の中で一層際立つ。
影の守り手として、この国の不均衡を即座に感じ取った。光と影の間にあったべき調和が乱れている。
片方が他方を押し潰そうとしているが、完全には成功していないようだ。空気には張り詰めたエネルギーが充満している。
歩き出すにつれ、この二つの相反する力の戦いがより明確に見えてくる。
一方は輝きと生命力に満ち、もう一方は暗闇と静寂に包まれている。光が支配する領域では植物が過剰に繁茂し、影の領域では全てが色を失い静止している。
しばらく進むと、遠くにこの国の性質を体現するような巨大な建造物が見えてきた。片側が真っ白な光に洗われ、もう片側が深い影に覆われた神殿――光と影の神殿に違いない。
神殿周辺は静寂に包まれている。しかし内部からは、低いうなりと甲高い音が混ざった不気味な響きが聞こえる。
光と影のエネルギーがぶつかり合って生じる悲鳴のようだ。
「この国の不均衡の源もここだな」
釣り竿をしっかりと握る。
「何があっても、この国にも調和を取り戻すわ、リョウ」
アリスの顔に決意が浮かぶ。弓を引き絞る。
神殿の入口に近づくにつれ、空中を漂う半透明の存在が見えてきた。光と影の粒子で構成されたこれらは、これまでに出会った魂喰らいより複雑な光喰らいと影喰らいだろう。
それらは私たちに気付くと、急速に襲いかかってくる。多くは光と影のバランスを反映した二色の輝きを放っている。
これまでで最も困難な戦いが始まろうとしていた。




