火山の心臓と炎の番人
火山の斜面を登るにつれ、空気はさらに熱を帯びていく。だが今回は焼けつくような暑さではなく、力強い生命力に満ちたエネルギーを感じた。溶岩が作った自然のトンネルを抜けながら、火山の鼓動のような低く唸る音が聞こえてくるようだ。
ついに溶岩洞窟を抜けると、巨大な空洞にたどり着いた。ここが火山の心臓部だ。
空洞の中央には溶岩湖が沸き立ち、蒸気を噴き上げている。放たれる熱は骨の髄まで染み渡るが、要素の国のあの不気味な冷たさとは違い、純粋で制御されていない力の奔流だった。
洞窟の壁面には溶けた岩が奇妙な文様を描いている。所々で固まった溶岩の波が彫刻のように見える。炎のダンスで満たされた空間は、生気あるエネルギーに震えていた。
その時、溶岩湖の中心から、炎の精髄でできた巨体が立ち上がる。炎と灼熱の炭で構成されたその体は、溶けた鉄のように真紅に輝く目をしていた。
炎の番人の登場だ。その出現で洞窟内の温度はさらに上昇し、溶岩湖は激しく泡立つ。
「何者だ? この聖なる炎を消しに来たのか、mortal(死すべき者)よ!」
番人の咆哮が溶岩の爆発音と共鳴する。
「炎の番人だ!」
アリスが即座に弓を構える。
番人が腕を振ると、溶岩湖から巨大な火球が放たれる。熱波が周囲の空気さえも焼き焦がしながら迫ってくる。
「下がれ!」
叫ぶと同時にフィンが肩から飛び出し、紫の防壁を展開する。だが火球はあまりに強大で、完全には防ぎきれない。
影の守り手として、体内の水の元素が炎に対して抵抗するのを感じる。この番人は単なる炎の化身ではなく、世界の均衡を乱す存在だ。
浄化しなければならない。
目を閉じ、精神を炎の番人のエネルギーに集中させる。その中にある純粋な炎と、制御不能な破壊衝動を感じ取る。
『遺訓』の「元素の流れを導け」「調和をもたらせ」の教えが脳裏をよぎる。炎の力を滅ぼすのでなく、調和させねばならない。
手を伸ばし、指先で炎に向き合う。フィンが掌に飛び移り、紫の光で力を増幅させる。
湖から集めた水の精気と、番人の炎のエネルギーを融合させ始める。これは衝突ではなく、調和の儀式だ。
火球が目前に迫るが、最後の瞬間に放った水のエネルギーがそれを包み込む。火球は空中で溶解し、蒸気の爆発と共に消滅した。
「水の力で炎を制御するなんて!」
アリスが驚愕の声を上げる。
炎の番人が新たな炎の波を放ってくる。だがもう対処法がわかっている。
力をさらに研ぎ澄ませ、湖の水の力で炎を形作る。水で炎を消すのでなく、導くのだ。
番人の炎の体が震える。制御不能な炎が、秩序ある穏やかなエネルギーへと変容していく。
真紅の瞳の輝きが弱まり、怒りに歪んだ表情が和らぐ。風と大地の番人同様、彼もまた穢れに蝕まれていたのだ。
今こそ浄化の時だ。




