大地の心臓と石の囁き
風の番人を倒し風の心臓を手に入れた後、私たちは神殿の上層へと続く階段を登っていく。空気は落ち着きを取り戻していたが、感じるエネルギーは変わっていた。
風のそよぎは、土の深く重い香りに取って代わられる。足元の石畳はより堅固に、より古びた感触だ。
アリスの顔には疲労と新たな戦いへの緊張が混ざっている。カイルは剣の柄を握りしめ、周囲を警戒する。フィンは私の肩で嬉しそうにはね回り、紫の輝きを強めている。
階段の終点に、巨大な円形の広間が現れた。ここが土の神殿の心臓部だ。
壁面は巨大な岩塊で覆われ、まるで大地そのものが形作ったかのよう。中央には床から突き出た滑らかな黒曜石の柱がそびえている。
柱の表面には複雑な紋様が刻まれ、所々に苔や小さな水晶がきらめく。空気は重く湿り、太古の土の香りが広間を満たしていた。
「ここが土の神殿……そしてあの柱は、我が国の大地の心臓だ」
カイルが畏敬の念を込めて説明する。
柱に近づくにつれ、放たれるエネルギーが濃密になっていく。
湖の精霊と結ばれた私の魂が感じ取るそれ――この国の生命力の根源だ。しかし、これもまた歪められていた。
その時、石柱から人影が浮かび上がった。岩と鉱物で構成された鈍重な巨体。
無数の岩石が蠢くその体から、苔緑の瞳が光る。土の番人の登場だ。
一歩ごとに地面が震える。
「何者だ? この聖域を汚す者よ!」
番人の声が岩壁を揺らし、小石を跳ねさせる。
「国を穢したのはお前だ、番人! 我々は屈しない!」
カイルが猛然と斬りかかる。
番人は腕を振り、地中から巨岩を召喚し投げつけてきた。
アリスが悲鳴を上げて回避。カイルは剣で受け止めようとするが、岩はあまりに巨大だ。
「危ない!」
私は影の守り手の力を解放し、岩塊にエネルギーをぶつける。
岩は空中で静止し、無数の小石に分解して無害に散らばった。
「貴様……元素の流れを操れるだと!?」
番人の緑の瞳が鋭く光る。
「戦うためじゃない。この国の痛みを癒すために来た。大地の心臓が穢れている。浄化しなければ」
「大地は盲目だ! 幾星霜、この闇に囚われておる。もはや癒やせぬ!」
番人の咆哮が広間を揺るがす。
番人が足を踏み鳴らすと、床から無数の石柱が突き出し、私たちを追い詰める。
大地との絆を利用した攻撃だ。
「アリス、岩に注意! カイル、番人の気を引きつけろ!」
指示を飛ばす。
アリスは俊敏に岩の間をくぐり抜け、カイルは勇敢にも番人に肉薄し斬撃を浴びせる。直接のダメージはないが、動作を鈍らせるには十分だ。
私は力を集中させる。風の番人と同じく、相手の力を利用しなければならない。
目を閉じ、大地のエネルギーに意識を向ける。穢れと痛み、そして太古の力を感じ取る。
湖の精霊が、土の囁きを私に伝えてくる――




