要素の国の重苦しい雰囲気
要素の国に足を踏み入れた瞬間、馴染みのある森の香りは鋭い金属的な臭いに変わった。ポータルの闇から抜け出したとき、私たちを包み込んだ空気は重く、息苦しかった。
空は灰色と鉛色の雲に覆われ、太陽の影さえなかった。風がうなりを上げて吹き、乾いてひび割れた地面には砂塵の渦が巻き起こる。
「うわあ……ここは……ここはヴェリディアン・レルムとは全然違うね」
アリスの呟きは驚きに満ちていた。彼女は無意識に弓をしっかりと握りしめる。
私の視線は周囲を駆け巡った。確かに木はあるが、生気がなく、歪んでいる。葉は落ち、枝は骨のように空へと伸びていた。地面はひび割れ、ところどころ干上がった川床が見える。遠くの地平線には、鋭く暗い山々がそびえ立ち、まるで空を引き裂こうとしているようだった。空気と大地のバランスが崩れているのは明らかだ。この国は、まるで病と闘っているかのようだった。
フィンが私の肩の上でそわそわと動く。彼の放つ鮮やかな紫の輝きは、この陰鬱な空気の中ではっきりと見えた。まるで周囲の闇を払おうとしているようだ。
「空気が鉛みたいに重い。息をするのも辛いよ」
私は「影の守り手」として、この空気の不均衡を肌で感じていた。風の要素が汚れ、大地の生命力が枯渇している場所――ここはそんな土地だった。
私たちは歩き始めた。足元の荒れ果てた地面は、一歩ごとに砂塵を巻き上げる。歩く音は静かで、聞こえるのは風の唸りと足音だけだった。アリスは鋭い弓使いの目で周囲を慎重に見渡している。
しばらく進むと、砂塵の向こうにかすかな建造物が見えてきた。高く、崩れかけた壁と倒れた塔。ここはかつて大きな集落だったに違いないが、今は廃墟と化している。
「ここは街だったの? 廃墟みたいだね」
アリスは興味深そうに見つめた。
廃墟に近づくにつれ、静けさはさらに深まった。まるでこの国の生き物たちがすべてここを去ってしまったかのようだ。崩れた建物の間を、錆びた風の臭いがさらに濃く漂ってくる。
その時、風の音と混ざり合うかすかな声が聞こえた。人間の声ではない――ささやきのような、うめき声のようなもの。その声は廃墟の奥から響いてきた。
「ここに誰かいるかも」
私は足を緩めた。釣り竿をしっかりと握る。武器はないが、仲間を守るためにできる限りのことはするつもりだ。
「備えて、リョウ。この国の住人は……友好的じゃないかもしれない」
アリスはすぐに弓を構えた。目を細め、声は囁くように絞り出される。
廃墟に足を踏み入れる。崩れた建物の間を進むうちに、声はさらにはっきりと聞こえてきた。助けを求める声のようだが、絶望に満ちていた。角を曲がった先で、地面に倒れ伏した疲れ果てた人影を見つけた。全身は埃と錆に覆われ、かつて輝いていた鎧は黒ずんでいる。戦士のように見えるが、ひどく疲弊し、傷ついていた。
「助けて……」
その目が私たちに向けられる。かすれた声で呟いた。




