囁きの森の変貌
ナンシーとアラリックとの話し合いの後、私たちは囁きの森へと向かった。アリスの表情は興奮からより深刻なものへと変わっている。
フィンは私の肩に座り、いつも以上に警戒している。風はもはや安らぎの調べではなく、不吉な囁きを運んでくる。
森の入り口に着くと、雰囲気は一変していた。木々の葉は色褪せ、枝は生命力を失っている。
前回訪れた時の活気は、重苦しい圧迫感に取って代わられていた。苔は干からび、花はしおれている。まるで森の精霊が重い病と闘っているようだ。
「状況はさらに悪化しているわ。何かが森の生命力を吸い取っているみたい」
アリスは囁くように言い、弓に手を伸ばす。
湖の守護者として、私は森のエネルギーの変化を鋭く感じ取る。湖の精霊との絆が、自然の痛みを感じる能力を与えてくれたのだ。
これは忘れられた神殿で遭遇した闇の存在の影響に似ているが、より広範囲に及んでいる。
森の奥へ進むにつれ、音は増していく。風の囁きに混じって、奇妙な甲高い叫び声やうなり声が聞こえる。
木々の幹には、これまで見たことのない紫色に輝く水晶のような形成物が現れ始めていた。これらは闇の存在が神殿で使っていた水晶の小型版のようだ。
「あの水晶を見て!前はなかったわ。何かを放出しているみたい」
アリスが指差す。
水晶に近づく。触れると、冷たく生きたようなエネルギーを感じる。
このエネルギーは、闇の存在が残した暗黒エネルギーと同じ種類だ。どうやら私たちが封印したにも関わらず、その影響は完全には消え去っていなかったようだ。これらの水晶は森の生命エネルギーを吸い取り、暗黒エネルギーを放出している。
道中、枯れた木々やしおれた植物の間を進む。ところどころで森の動物たちの亡骸にも出くわす。
「この状況を止めなければ」
この光景はアリスを深く動揺させ、声が震える。
その瞬間、木々の間を素早く動き回る影が現れる。闇の存在の小さな分身のような、きらめく生き物だ。
村人たちが話していたのはきっとこれだろう。その数はかなり多い。
「リョウ、準備を!」
アリスは即座に弓を構える。
生き物たちが襲いかかる。アリスは素早く矢を放ち始めるが、矢はきらめく体を貫通するだけで、止めることはできない。彼らはただ分散し、再び集合するだけだ。
「効かない!これらは普通の生き物じゃない!」
アリスが叫ぶ。
フィンは私の肩から飛び降り、前に出る。放たれる紫の光が生き物たちを分散させ始める。
フィンのエネルギーは、神殿でのようにこれらの闇の存在に影響を与える。しかし生き物たちは速すぎて数も多い。フィンの力だけでは全てを撃退するには不十分だ。
湖の精霊との絆が私に囁きかける。これらの水晶が闇の存在の"種"であり、これらを破壊しなければこれらの生き物を完全には止められないと感じる。
「アリス、水晶だ!あの紫の水晶がこれらの生き物を養っている!」
「わかった!」
アリスは素早く頷き、目は今や水晶に集中している。
再び弓を引き絞るが、今度は生き物ではなく直接水晶を狙う。これは危険な賭けだ。




