依頼の始まり
フィニアンとの出会いは、私の釣りルーティンに新たな意味を与えた。今はただ休むだけでなく、小さな目的のために釣りをしている。
湖畔の定位置に戻り、再び竿を水面に投げ入れる。
静けさは変わらない。だが今、私の心にはフィニアンの顔と彼の言葉が浮かんでいる。
珍しい魚──光を放ち、奇妙な形をしたあの魚たち。それを釣るためにもっと努力しなければ。
釣りスキルの上昇がこの依頼を達成する鍵だ。浮きの先のわずかな動きさえ、今は特別な意味を持つ。
浮きを見つめながら、胸に小さな期待が膨らんでいく。
しばらくして、浮きが揺れた。素早く竿を上げると、緑色の鱗を持つ見慣れない小魚がかかっていた。
インベントリを確認すると、「謎の魚:希少種」と表示される。やはり収納できない。スキルが足りないのだ。
だがこれは私を挫かず、むしろやる気にさせる。
どうやら様々な希少種が存在し、それぞれに必要なスキルレベルが異なるようだ。
再び竿を投げ入れながら、この依頼の詳細について考え始める。
フィニアンは「扱い方はわかっている」と言った。これらの魚には何か価値があるに違いない。
普段なら気にも留めないようなゲーム内経済やアイテムクラフトの話が、今は私の釣り冒険の一部となっている。
周囲を見渡す。湖の静寂が他のプレイヤーの喧騒を包み込む。
彼らは相変わらずモンスターと戦い、ダンジョンに潜っている。私の冒険はここで、湖面の上で続いている。
釣りスキルを上げるため、もっと練習しなければ。毎回の釣りが経験値をもたらすはずだ。
時間が過ぎ、多くの普通の魚を釣り上げる。時折、また別の希少種がかかる。ピンクの鱗にオレンジのひれを持つ魚だ。
「スキル不足」の表示は変わらない。
メニューからスキルタブを開き、「釣り」スキルの小さな情報アイコンをタップする。
「釣りスキルは釣獲数と魚の種類で成長します。難しい魚ほど多くの経験値を得られます」
シンプルな説明だ。つまり正しい道を進んでいるということ。ただひたすら釣り続ければいい。
ふと、始まりの街に釣り関連の情報があるかもしれないと思いつく。あるいは専門の釣具店が?
この考えが浮かんだ時、疲れが少し軽くなったのを感じる。小さな目標がゲームをより楽しくしてくれる。
この依頼は私に目的を与えてくれた。だがそれは私を急がせるものではなく、むしろさらにゆったりとしたペースへと導いてくれる。
夕日が沈む頃、最後にもう一度竿を投げる。この依頼は、ヴェリディアン・リアルムズでの穏やかな冒険の、新たな一章となっていく。