修道院の扉と静かな守護者たち
巨大な修道院の門にたどり着いた。苔むした灰色の石は、時の重みを感じさせる。鍵や取っ手は見当たらない。
指先を冷たい石に触れる。胸に軽い緊張が走る。どうやって開くのだろう?
しばらく待つ。周囲には誰もいない。完全な静寂が支配している。
合言葉か、特別なアイテムが必要なのかもしれない。月光の粉を思い出す。フィニアンからの贈り物だ。
インベントリから袋を取り出す。粉のきらめきが、暗い扉の前で微かな光を放つ。袋を扉に向かって差し出す。
何も起こらない。扉は微動だにしない。一瞬、がっかりする。
その時、扉の右側、壁の根元に小さなディテールを見つける。苔に埋もれかけた、かすかに見える紋様だ。
紋様に触れる。冷たく粗い感触。エルリックからもらった本の図柄に似ている。
触れた瞬間、扉からかすかな音がして、ゆっくりと内側に滑り始める。
広い隙間ができる。内部は暗く薄明るい。湿った土の香りが鼻を突く。
深く息を吸い込み、一歩踏み入れる。足音が空洞の廊下に響く。
背後で扉がゆっくりと閉じる。金属音が静寂を破る。
完全な闇に包まれる。目が薄暗さに慣れるまで時間がかかる。
しばらくすると、廊下の先に微かな光を見つける。そちらへ歩みを進める。
高い壁は苔と年月に侵されている。空気は冷たく淀んでいる。
光に近づくと、その源がわかる。壁のくぼみに置かれた小さな水晶玉だ。
青白い光を放ち、狭い廊下を照らしている。
水晶玉の傍まで来ると、廊下の突き当たりにたどり着く。そこには二体の像が立っている。
長身でマントをまとった姿。頭巾で顔を覆われ、目だけが光っている。
生き物ではない。だが威圧感がある。私を見つめているようだ。
像の間には小さな台座。円形のくぼみがある。
くぼみを見る。月光の粉の袋とぴったり合いそうな形だ。
月光の粉を取り出す。闇の中で輝きが一層鮮明になる。
袋を台座のくぼみに嵌め込む。完璧に収まる。
粉が触れた瞬間、像の目がより鮮やかな青色に輝き始める。そして修道院の奥底からうなるような音が響いてくる。
まるで古い何かが目覚めるようだ。この音は私を怖がらせると同時に、前へと駆り立てる。