西の小屋③
「奥様!どうされました!」
屋敷からヨーレン、カカリ、料理人のルードまで走って出てきた。
「なっ!これはっ……」
三人は中のものがすべて出て水浸しになっている小屋を見て唖然としていた。その頃には水は止まり、ドアからチョロチョロと流れているだけだった。小屋の周りは池のように水たまりができていた。
「奥様、お怪我はありませんか?」
カカリはびしょ濡れのハレアに駆け寄って体を支えた。
「私は大丈夫です……。すいません、小屋、水浸しにしてしまいました……」
「それは大丈夫よ、怪我がなくて良かったわ」
カカリはハレアの体をギュッと抱き寄せた。
「いや~、それにしても派手にやったな~!屋根までびしょびしょじゃん!何あれ?煙突から水出したの?すっげ~!」
ルードは屋根を見上げて感心した様子だ。
「ルードッ!」
ヨーレンがそう言うとルードは『やべっ!』といった表情でピシャリと口を摘むんだ。
「奥様、ここは私たちに任せてお着替えしてくださいませ」
ヨーレンはハレアとカカリを促した。
「すみません、私……最近魔術使ってなかったから、その……。私は大丈夫なので手伝います」
「いいのよ!パパたちに任せてお着替えしましょ!」
カカリは強引にハレアの背中を押した。
「え~!俺も片付けんの?まだ、夕食の仕込み途中だったんだけど!」
「ルードッ!」
「はいは~い」
ルードは嫌そうな腑抜けた声を出した。
ハレアは促されるまま着替えに向かう途中、ふと屋敷の三階の窓に人影が見えた。
―――
「それにしても、すごい水量だよね」
小屋の中を風魔術で乾かしながらルードがヨーレンに話しかける。
「魔力量が多いとは聞いてましたけど、ここまでとは……」
「皇帝がある程度の身分で魔力量が多い女性って選ばれたんだよね?皇帝は何か?キルシュとお嬢との子どもを化け物にでもしたいのか?……まあ確かに、魔力量はバカでかいけど、全然制御できてねーじゃん」
「そうですね。これではいずれ屋敷が破壊されてしまいますね」
ヨーレンは壁のヒビが入ったバリア手でなぞった。