生まれ変わりじゃない
「見てもらったほうが分かりやすいでしょう……」
カイルはそう言いながら腰に下げている短剣を手に取った。柄の部分を強く握ると二十センチほどしかなかった短剣が三倍ほどに伸びた。本体の刃の部分は変わらず、その周りに覆うように橙色の光が鋭く放たれている。
「魔石に魔力を入れるとこのように伸びるようになっております。魔石の部分が非常に小さいのでそこに集中的に魔力を入れるのがとても難しく、使いこなすのはとても難儀な魔具になっています」
リールはその光景を見ても特に驚きはしなかった。驚きはしなかったが、その古代魔具自体には興味があるようで前髪で見えていないが目はキラキラと輝いている。
「こ、これは……、僕でも使えますか?」
「正直、不可能だと思います。古代魔具は現代の魔具とは違い、相性があるようで私がたまたまこの魔具と相性がよかっただけで、同じような剣の魔具でも私では発動しないものばかりなので……」
「そうなんですね……」
分かりやすく肩を落とすリール。
「私や私の家族では発動しなかったガラクタ同然の魔具が多いので、探せばあるいは……」
「僕にでも動かせる魔具があるかも!?」
また目を輝かせ、カイルを見た。
「そ、そうかもしれないといだけで……」
カイルは目の前に迫りくる黒くでかい男に圧倒された。リールは普段、猫背であまり大きそうに見えないが、背筋を伸ばすと迫力が出る。
「私の持っているこの剣と同じような形ならチルの部屋に一本あるので、それをお見せしましょうか?」
「ぜっ……!是非……」
リールは自分が思った以上に大きな声が出てしまい、恥ずかしくなって尻すぼみに声が小さくなった。
ーーー
「もういいや。一回私の部屋戻ろうか。アニキどこほっつき歩いてるんだよ〜」
チルは落胆した様子で、長い廊下を戻り始めた。カミュレスはそれを苦笑いしながら見送った。ハレアは、明日でもいいのにと思いながらもチルの気が済むようにさせてあげようとチルの後ろをついていった。
チルの部屋が見えてくると扉の前には黒ずくめで猫背が白い壁に栄えて見えた。その隣にはカイルもいた。
「アニキたちどこにいたの~?ずっと探してたのに~」
チルはへろへろとした声を出した。そうは言いながらも、先ほどよりは少し足早に彼らに近づいて行った。
「あっ、チル。実は部屋にある魔具を見せ――」
カイルはそう言いかけてチルが片手に持っていた短剣に目がいき、会話が止まった。
「それ!それを少々貸してはくれないか?」
チルの手から半ば強引に奪い取ろうとした。
「ちょっ!アニキ!これ、ハレアが……あっ!ちょっと部屋の中に入って!」
チルは彼らを自分の部屋へと急かすように誘導した。カイルもリールも突然のことに驚いた様子で言われるがまま、チルの部屋へと入った。
「あのね、この剣なんだけど、ハレアにあげたの」
チルは手に持っている革の袋を見せながら語り出した。最初の言葉の時点でカイルは眉間にしわを寄せ、「は?」と思わず呟いていた。それもそうだ、これに限らず古代魔具は使えなくてもルルドネアに代々伝わるものだからだ。
「ハレアがこれを握った瞬間に剣が大きくなったの。しかも、水が出てて……。アニキの使ってるやつとはまた違ってて……それで……んあぁ!もう説明できない!見て!!!」
チルはそう言いながらハレアに剣を渡した。ハレアはその気迫に押され、渡されるままに短剣を握った。
すると、剣の刃の部分が水色に光り、細かい霧のような水が出た。リールは目を丸くして固まったいた。さっき地下で見たカイルのものとはまた別のもので、彼のものより長さがあったからだ。
「そ、それは……。あっ、これは……」
カイルもカイルで動揺しているようで混乱しているようだった。自分の呼吸を落ち着かせるように「ッスー」と息を吐いた。
「多分握っている中指のあたりに魔石があるのですが、そこに集中的に細く魔力を入れてみてください」
カイルはいつもと同じ口調に戻り、ハレアにそう指示した。
「えっ、そんなこと……」
ハレアは中指のみに魔力を集中させるなど器用なことはもちろんできるはずもないので、握っている右手に魔力を集中させた。すると、剣は刃の水色の光は三メートルほどに伸び、チルは普段寝ているベッドの天蓋の布を切り裂いてしまった。
「えっ!ご、ごめん!!!」
ハレアは自分の持っている古代魔具が怖くなり、とっさに目の前にあったテーブルの上へと転がすように置いた。
「やっぱり……」
カイルは小さくそう呟いた。
「違います……。ハレアは生まれ変わりじゃないです……」
カイルのその呟きは隣にいたリールに届いたようで、それを否定するように言い放った。長い前髪の隙間からは唇を震わせハレアを見つめるカイルを睨んでいた。
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